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DATE/ 2020.03.17

手口別にみる東京23区犯罪発生件数ランキング

 警視庁の発表した[東京23区犯罪認知件数ランキング(2019年)]の犯罪種別ごとの割合は、「凶悪犯」1%、「粗暴犯」8%、「侵入窃盗」4%、「非侵入窃盗」67%、「その他」20%――という結果となっています。

 今回は、東京23区別の犯罪認知件数や手口などを、防犯への具体的な取り組み例などとともに、見ていきたいと思います。

東京23区犯罪認知件数ランキング・2019年

 ではさっそく、東京23区のランキングを見ていきましょう。認知件数が多い順、つまりワースト1位から23位までが、以下のようになっています。

[東京23区犯罪認知件数ランキング(2019年)]
1位 新宿区 5,898件
2位 世田谷区 5,221件
3位 大田区 5,031件
4位 渋谷区 4,851件
5位 足立区 4,764件
6位 江戸川区 4,717件
7位 練馬区 4,558件
8位 豊島区 4,087件
9位 板橋区 3,973件
10位 港区 3,474件
11位 江東区 3,375件
12位 葛飾区 3,365件
13位 杉並区 3,097件
14位 千代田区 2,896件
15位 台東区 2,862件
16位 品川区 2,403件
17位 墨田区 2,368件
18位 北区 2,365件
19位 中野区 2,337件
20位 中央区 2,036件
21位 目黒区 1,814件
22位 荒川区 1,537件
23位 文京区 1,263件

東京23区の犯罪の内訳・それぞれの手口

 警視庁の発表している犯罪統計では、犯罪種別を大きく「凶悪犯」「粗暴犯」「侵入窃盗」「非侵入窃盗」「その他」5分類し、さらに、項目別に31種類に分けて集計しています。それぞれどんな手口が含まれるのかを見てみましょう(注:Ⅰ~Ⅴの大分類および、1)~31)の小分類は、便宜上のナンバリング。〔 〕内は補足です)。

Ⅰ「凶悪犯」
 「凶悪犯」には、1)強盗、2)〔凶悪犯の〕その他――の2項目があります。なお、「凶悪犯」は『警察白書』では、「殺人・強盗・放火・強姦(強制性交等)の罪を犯した者」をさすとされています。

Ⅱ「粗暴犯」
 「粗暴犯」には、3)凶器準備集合〔注:二人以上の者が、他人に害を加える目的で凶器を準備したり、凶器の準備があることを知って集合したりすること〕、4)暴行、5)傷害、6)脅迫、7)恐喝――の5項目があります。なお、「粗暴犯」は『警察白書』では、「暴行・傷害・脅迫・恐喝・凶器準備集合の罪を犯した者」をさすとされています。

Ⅲ「侵入窃盗」
 「侵入窃盗」には、8)金庫破り、9)学校荒し、10)事務所荒し、11)出店荒し、12)空き巣、13)忍込み、14)居空き〔注:「空き」は「空き巣」の略。家の人がいるのに、忍び込んで金品などを盗むこと〕、15)〔侵入窃盗の〕その他――の8項目があります。

 なお、「侵入」に相当する「住居等侵入罪」は、「正当な理由なしに他人の住居・建造物・船舶に立ち入る罪。また、退去するよう求められても応じない罪」をさします。また、「窃盗」に相当する「窃盗犯」は『警察白書』では、「窃盗の罪を犯した者」をさすとされています。さらに「窃盗罪」は、『法律用語辞典(第4版)』を引くと「他人の財物を窃取する罪」かつ「“窃”は、“ひそかに”の意であるが、窃盗罪の場合、ひそかである必要はない」と記されています。

Ⅳ「非侵入窃盗」
 「非侵入窃盗」は、16)自動車盗難、17)オートバイ盗難、18)自転車盗難、19)車上ねらい、20)自販機ねらい、21)工事場ねらい、22)すり、23)ひったくり、24)置引き、25)万引き、26)〔非侵入窃盗の〕その他――の11項目があります。上記で紹介した、Ⅲ「侵入窃盗」と違い、住居等に侵入せずに行われる窃盗罪をさします。

Ⅴ「その他」
 「その他」は上記のⅠ~Ⅴに該当しない犯罪で、27)詐欺、28)占有離脱物横領〔注:遺失物、漂流物など占有者の意思に反して占有を離れた物品を横領すること〕、29)その他知能犯、30)賭博、31)その他刑法犯――の5項目があります。

東京23区の犯罪手口・ワースト3&ベスト3

 冒頭でも紹介しましたが、圧倒的に多い犯罪は「非侵入窃盗」です。そして、「非侵入窃盗」の中でもダントツに多い犯罪手口、つまりワースト1位の犯罪は16)「自動車盗難」の23,726件で、なんと全体の30%を占めます。

 ちなみに一番多い区は、大田区の2,073件です。続くワースト2位と3位も同じく「非侵入窃盗」項目で、ワースト2位は26)「〔非侵入窃盗の〕その他」の13,235件で全体の17%、さらにワースト3位の25)「万引き」の9,615件で全体の12%となっています。

 他方、極端に少ない犯罪手口、つまりベスト1位の犯罪は「粗暴犯」の3)「凶器準備集合」で1件。 次いでベスト2位は「その他」の30)「賭博」の8件、そしてベスト3位は「侵入窃盗」の9)「学校荒し」の66件となっています。

足立区の「ビューティフル・ウィンドウズ運動」

 「割れ窓理論(ブロークンウインドウズ理論)」とは、「割れた窓を放置しておくと、街全体が荒廃し、犯罪が増加する」という犯罪理論で、最大の利点は、軽犯罪を徹底して取り締まることにより、地域全体の犯罪全般を抑止できることです。

 2006年から2009年まで4年連続で東京23区の刑法犯罪認知件数がワースト1であった足立区では、「割れ窓理論」に基づいて、警視庁と連携した「ビューティフル・ウインドウズ運動」の取り組みを続け、着実に犯罪減少の成果を上げています。

 取り組みの具体例は、1)「青色防犯パトロール」地域の方々が青色回転灯をつけたパトロール車で巡回し、防犯を呼び掛けて犯罪抑止につなげる、2)「地域防犯ボランティア」町会・自治会やPTAの方などが、子どもの登下校時の通学路の見守りや夜間の公園などの見回りを実施、3)「区内全域で歩きタバコ禁止」区の指導員による迷惑喫煙防止パトロールを行う、4)「ワンチャリ・がっちり・ワンロック」自転車盗難件数の減少をめざして自転車盗難の被害に遭いにくいシリンダー錠を普及する、5)「花で彩るまちづくり」学校や地域の通学路や公園などに花を植えたり手入れをしたりしながら、子どもたちを見守りつつ美しいまちをつくる――などです。

 ポイントは、発生件数の多い「非侵入窃盗」の抑止に直接はたらくことで、特に「ワンチャリ・がっちり・ワンロック」のような、身近で誰もが参加しやすい自動車盗難をなくすことに焦点をあてたことです。さらに「区内犯罪発生マップ」を毎月更新し、正しく新しい情報の提供を試みています。

 犯罪にもさまざまな手口があるように、犯罪に対するいろいろな対策や、地域や区ごとの特色を生かした取り組みがあります。さらに広範となっている犯罪手口を知るとともに、「犯罪発生マップ」などを活用して自身の住む丁や関係する町の犯罪の現状をデータで認識しつつ、手口ごとの効果的な防犯対策についても、ぜひ一考してみてください。

<参考文献・参考サイト>
・区市町村の町丁別、罪種別及び手口別認知件数│警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/jokyo_tokei/jokyo/ninchikensu.html
・令和元年版 警察白書
https://www.npa.go.jp/hakusyo/r01/index.html
・「凶悪犯」『デジタル大辞泉』
・「粗暴犯」『デジタル大辞泉』
・「凶器準備集合罪」『デジタル大辞泉』
・「住居等侵入罪」『デジタル大辞泉』
・「窃盗罪」『法律用語辞典(第4版)』
・「居空き」『デジタル大辞泉』
・「占有離脱物横領罪」『日本国語大辞典』
・『23区格差』(池田利道著、中公新書ラクレ)
・『23区大逆転』(池田利道著、NHK出版新書)
・「割れ窓理論/ブロークンウインドウズ理論」『イミダス2018』
・ビューティフル・ウィンドウズ運動|足立区
https://www.city.adachi.tokyo.jp/kikikanri/ku/koho/b-windows.html
・犯罪発生マップ
https://www.bouhan-nippon.jp/knowledge/hanzai_map.html
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