テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義 ログイン 会員登録
DATE/ 2020.03.30

なぜトイレットペーパーが買い占められたのか?

 新型コロナウイルスとは一見するとあまり縁のなさそうなトイレットペーパーが買い占められ、世界中のスーパーで品薄状態となり、大きな話題となりました。

 なぜトイレットペーパーは買い占められたのか。買い占め騒動にいたるプロセスを追跡します。

原料が同じだからトレペも不足?

 世界中で大流行する新型コロナウイルスの脅威に対して、マスクの買い占めが起こりました。買い占め自体はまったくもって褒められた行動ではありませんが、マスクを買い占めようとする人心は理解できます。防疫という点で、理にかなっていると言えます。しかしなぜ、トイレットペーパーの買い占めは起こったのか。

 きっかけはデマでした。SNS等で「トイレットペーパーが足りなくなる」というデマが流れたのです。これを見てすぐさま買い占めに走った人もいることでしょう。また、こんなデマも流れました。「不足しているマスクと原料が同じだからトイレットペーパーも不足する」。

 もちろんデマですが、ここには因果関係も記されていてより説得力があります。日本では「新型コロナウイルスが猛威をふるう中国からの輸入が途絶えるから」というものもありました。

海外では強盗事件も

 デマで買い占めに走る行動をアメリカでは「パニック・バイイング」と言います。アメリカやイギリス、オーストラリアでは買い占め対策として店頭で購入制限する動きもあらわれました。購入制限しなければならないほどの状況になっているということです。

 香港ではトイレットペーパー600個を強盗する事件も起きています。この強盗は量からして転売目的の可能性が指摘されています。日本国内でもトイレットペーパーの悪質な高額転売が続出し、ニュースで取り上げられました。

 また、ユーチューバーのHIKAKINさんがトイレットペーパーを買い占めたというデマも発生。2016年8月に投稿された「トイレットペーパー20年分1000ロールをトイレに入れてみた」という動画のキャプチャー画像が「買い占めた」という誤った情報とともに広まったのが事の次第です。HIKAKINさんはデマ情報を逆手にとって注意喚起を促す動画を公開しました。

トイレットペーパー騒動史

 トイレットペーパー騒動、略してトレペ騒動は今に始まったことではありません。記憶に新しいところでは、2011年3月11日の東日本大震災直後にも買い占めが起こりました。

 それから、しばしば引き合いに出されるのがオイルショック。石油価格の高騰による生活用品の物価上昇が噂されて、多くの人がトイレットペーパーを買い占めました。

 さらにオイルショックでは、女子高生の雑談が発信源となって信用金庫の取り付け騒ぎも発生しました。取り付け騒ぎとは、デマなどによって預金者が一斉に預金を引き出そうとすることです。阪神・淡路大震災、さらに地下鉄サリン事件が発生し、社会不安が高まったことから1995年にも取り付け騒ぎが起きています。

トレペ以外の数々のデマ

 今回の新型コロナウイルスの流行により、マスクとトイレットペーパーだけでなく、おむつや生理用品、カップ麺やレトルト食品、消毒剤、お米の買い占めも発生しました。また、「お湯で予防できる」「納豆が効く」等のデマも拡散しました。

 デマではありませんが、「コロナ」という名称を使っていたがゆえに、影響を受けた企業や活動もあることでしょう。そもそもコロナとは皆既日食の時に太陽のまわりに見える光のことで、光冠や王冠を意味します。それに顕微鏡で見た形状が似ていることからコロナウイルスという名がつけられました。

 コロナウイルスが流行する前、コロナといえばメキシコ生まれのコロナビールがよく知られていました。コロナウイルスとは完全に無関係であるにもかかわらず、まさしく風評によって、コロナビールに対するネガティブイメージが広がっているようです。

SNSで広がるデマ

 オイルショック時のトレペ騒動に触れましたが、当時と現在ではデマの広がり方が大きく異なります。現在はSNSの普及によって、デマや誤情報が急速かつ広範囲に拡散します。

 現代はポスト・トゥルース時代とも言われています。ポスト・トゥルースとは直訳すると「真実の終焉」という意味です。客観的な事実が重視されず、感情的な訴えなどが政治的に影響力をもつ状況を指します。これを背景としてアメリカではトランプ政権が誕生し、ヨーロッパではイギリスがEUを離脱しました。

 しかしながら、経済的影響が計り知れない新型コロナウイルスにはトランプ大統領も困惑していることでしょう。ちょっとしたデマが原因でオイルショック時の取り付け騒ぎのようなことが起こる可能性だってあります。デマを阻止すべく、フェイスブックやツイッターなどのSNS各社は世界保健機関(WHO)などと協力することを表明しました。さらにフェイスブックのザッカーバーグ氏はWHOに無料広告枠を提供することも発表しています。

デマに引っかからないために

 デマに引っかからないためには、SNSで流れてくる情報に対して無防備に接するのではなく「もしかしたらデマかもしれない」という構えをとることです。そしてすぐに反応せずに冷静になって少し様子をみることです。買い占めによって、本当に困ってしまう人もいます。病気で本当にマスクが必要な人に届かないという事態も起こっています。

 まわりに流されずに適切に判断することは簡単なことではありませんが、物も情報も自分にとって何が必要なのか、問い続ける努力を怠らないようにしましょう。

<参考サイト>
・トイレットペーパー騒動│Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/トイレットペーパー騒動
・コロナビール「今は買わない」38%、ウイルス流行で 米調査│AFPBB News
https://www.afpbb.com/articles/-/3270863
・新型コロナのデマを阻止 SNS各社がWHOと連携表明│朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASN3D5JLKN39UBQU008.html
(10MTV編集部)

あわせて読みたい