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DATE/ 2020.04.16

国土交通省が発表した「燃費」の良い車ランキング

 車を選ぶ大きなポイントとして外せないのが燃費。ここ数年の燃費性能はかなり向上しています。裏にはメーカーの燃費向上技術に関わる熾烈な競争があるようです。ではなぜここまで燃費は向上したのでしょうか、ここでは国土交通省の発表した燃費ランキングをもとに、裏側を少し見てみましょう。

ランキングトップはプリウス

 ここで取り上げた調査は国土交通省が省エネルギーへの関心を高め、燃費性能の優れた自動車の開発と普及を促進するために毎年発表しているものです。今回参考にするのは2020年(令和2)3月31日発表のランキング。この普通・小型車部門でのランキングは以下のとおりとなっています。右の数値は日本独自の試験方法(JC08モード)での燃費値(km/L)です。

【普通・小型自動車部門】
1位:トヨタ・プリウス:39.0
2位:トヨタ・アクア:38.0
3位:ニッサン・ノート:37.2
3位:ホンダ・フィット:37.2
5位:トヨタ・カローラ:35.0
5位:トヨタ・カローラ ツーリング:35.0
7位:ホンダ・GRACE:34.8
8位:トヨタ・ヴィッツ:34.4
8位:トヨタ・カローラ アクシオ:34.4
8位:トヨタ・カローラ フィールダー:34.4

 トップはハイブリッドカーの草分け、プリウスです。次はその兄弟車といっていいアクアとなりました。トヨタ以外では3位に日産ノート。ホンダからはフィットとグレイスが入りました。しかし、この3車種以外は全てトヨタ車。燃費性能についてはトヨタの強さが際立っているようです。

軽自動車でのトップはスズキアルトとマツダキャロル

 日本車といえば軽自動車は外せません。次は軽自動車での燃費ランキングです。右の数値は日本独自の試験方法(JC08モード)での燃費値(km/L)です。

【軽自動車部門】
1位:スズキ・アルト:37.0
1位:マツダ・キャロル:37.0
3位:スズキ・アルト ラパン:35.6
4位:ダイハツ・ミラ イース:35.2
4位:スバル・プレオ プラス:35.2
4位:トヨタ・ピクシス エポック:35.2
7位:マツダ・フレア:33.4
8位:マツダ・フレア クロスオーバー:32.0
9位:スズキ・ワゴンR:31.0
9位:スバル・ステラ:31.0
9位:ダイハツ・ムーヴ:31.0

 1位はスズキアルトとマツダキャロルとなっています。やはり軽自動車の2大巨頭、スズキとダイハツは強いです。普通車・小型車部門では入ってこなかったマツダが大健闘しています。

燃費はおよそ過去25年で2倍に向上

 同サイトには添付資料として平成5年度(1993年度)から平成30年度(2018年度)までの燃費の推移が示されています。これを見ると、平成9年度(1997年度)まではおよそ11km/L程度だった燃費値が、その後急速に向上し、平成25年度(2013年度)にはおよそ22km/L程度まで達しています。その後5年間はほぼ横ばいです。起点となった1997年に何があったのでしょうか。調べて見ると、この年、初代プリウスが発売されています。プリウスは1993年から開発検討が始まり、当初はガソリン直噴エンジンが想定されていました。しかし1994年にハイブリッド車とすることになり、ゼロから計画を再スタート。その後、前倒しで開発され「21世紀に間に合いました」のキャッチコピーで1997年に発売されています。

 ここ数年も摩擦によるエネルギーロスの軽減など、技術的な細かい改善は進められているようです。しかし、もっともドラスチックな変革はやはりハイブリッド化にあった様子。その象徴的役割を果たしたプリウスは世代交代を経た今でも、燃費トップとして技術の最先端を進んでいます。また、この先トヨタは「基本的にすべてのトヨタ車にハイブリッドを設定する方針」としているようです。こうなると、ハイブリッド搭載車としてのプリウスやアクアの存在意義はやや薄れていくかもしれません。プリウスやアクアが今後どういった方向性に進むのかはまだわかりませんが、絶えず最新の燃費技術を搭載する車種としてのブランドを維持していくという道はありうるでしょう。

<参考サイト>
・自動車の燃費ランキングを公表します!|国土交通省
http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha10_hh_000230.html
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