テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.10.19

何が違うの?〇〇ムーン

 秋は月が一年のうちでも美しく見える季節です。これは、涼しくなったことで空気中の水蒸気量が少なくなるためで、よりくっきりした月を見ることができるのです。春の月が「おぼろ月夜」と言われるのは、逆に水蒸気や塵が多い季節だからなんですね。月に関する季語は秋が最も多く、「仲秋の名月」は毎年9月~10月のいずれかにあります。

 日本独特の月にまつわる言葉がある一方、最近「○○ムーン」という言い方を耳にすることはありませんか。2010年代に入ってから、少しずつニュースなどにも取り上げられるようになった「○○ムーン」。

 この「○○ムーン」はどういった天体現象なのでしょうか?

じつは明確な定義のない「スーパームーン」

「○○ムーン」の代表格、「スーパームーン」。もともと天文学用語ではなく、「満月」を意味しているものではありません。

 月の大きさは、地球と月の距離で変化します。月まではおよそ38万キロありますが、月は地球の周りを楕円を描きながら公転しているため、地球に近づくタイミングがあります。「スーパームーン」は、この〝月が地球に近づく日〟に、いつもより少し月が大きく見えるというものを指しています。そのため、満月とは限らないのです。じつは、この呼び名は占星術に由来しているという説もあり、そのため「スーパームーン」の定義は曖昧なのです。

 実際に、一年のなかの最大満月と最小満月は、面積で約30%ほどの違いがあります。しかし、月を観測する時間帯によっては肉眼で見える大きさは変わりますし、実際に違いを実感することは難しいでしょう。

 しかし、月とは古くから「ウサギが餅をついている場所」であり「かぐや姫が帰る場所」でもあり、神話では美しい女神の象徴であったり、人々はつねに月に魅了されてきました。「スーパームーン」もそうした月への憧れの一種かもしれません。

まだまだある「○○ムーン」

 「スーパームーン」意外にも、「○○ムーン」と名がつく天体現象はたくさんあります。

「ストロベリームーン」
もともとはアメリカの先住民族が呼んでいた満月の名前で、色とは無関係です。昇る角度によってほんのり赤みがかって見えるため、SNSなどでは「恋を叶える月」とも言われています。

「ブルームーン」
名前から〝青い月〟をイメージしますが、実は1か月のうちに2度満月が昇ることを意味しています。月の満ち欠けは約29.5日で繰り返されます。そのため、1か月で2度、満月が見られることは珍しいのです。

「ブラッドムーン」
名前の通り、赤黒く見える月のことを指します。これは皆既月食によって月が地球の陰に隠れるとき、わずかな太陽光のうち、赤の波長だけが月に届くためです。

地球から最も近い天体〝月〟

 こうした「○○ムーン」という事象に、さまざまな要因が重なると「エクストラ」「ウルトラ」といった言葉が付随して、ニュースで取り上げられることもあります。メディアやSNSで話題になると、つい夜空を見上げるという人も多いかもしれませんね。

 月は、地球と最も近い天体で、人が唯一自分の足で歩くことに成功した唯一の宇宙空間です。科学的に到達可能だと証明されてなお、人は月を見上げて恋の成就を願い、降り注ぐやわらかな光に神秘性を感じる生き物なのですね。

 秋の夜長に、美しい月を見上げながら思いに耽るのもいいかもしれません。

<参考サイト>
・スーパームーンやブルームーンなどの珍しい月は、いつ観測できるの?│UP LIFE
https://panasonic.jp/life/entertainment/260008.html
・「スーパームーン」ってなに?│国立天文台
https://www.nao.ac.jp/faq/a0207.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

叩き潰せ、正しいのは自分だけ…ロイ・コーンの教えとは

叩き潰せ、正しいのは自分だけ…ロイ・コーンの教えとは

[深掘り]世界を壊すトランプ関税(1)トランプ大統領の動機と思考

トランプ政権が発表した関税政策は、世界を大きな混乱に落とし込んでいる。はたして、トランプ大統領の「動機」や「思考」の淵源とはいかなるものなのか。そして世界はどうなってしまうのか。

島田晴雄先生には、...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/04/25
2

共生への道…ジョン・ロールズが説く「合理性と道理性」

共生への道…ジョン・ロールズが説く「合理性と道理性」

危機のデモクラシー…公共哲学から考える(5)共存・共生のための理性

フェイクが含まれた情報や陰謀論が跋扈する一方、多様性が尊重されるようになり多元化する人々の価値観。そうした現代社会で、いかにして私たちはともに公共性を保って生きていけるのか。多様でありながらいかに共存・共生でき...
収録日:2024/09/11
追加日:2025/04/25
齋藤純一
早稲田大学政治経済学術院政治経済学部教授
3

水にビジネスチャンス!?水道事業に官民連携の可能性

水にビジネスチャンス!?水道事業に官民連携の可能性

水から考える「持続可能」な未来(8)人材育成と水道事業の課題

日本企業の水資源に関するリスク開示の現状はどうなっているか。革新的な「超越人材」を生み育てるために必要な心構えとは何か。老朽化する水道インフラの更新について、海外のように日本も水道事業に民間資本が入る可能性はあ...
収録日:2024/09/14
追加日:2025/04/24
沖大幹
東京大学大学院工学系研究科 教授
4

太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない

太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない

ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系

銀河の中心にある巨大なブラックホールは一体何なのか。それを考えるためには、宇宙にある数多の銀河の構造について正しく理解する必要がある。私たちが住むこの太陽系は、天の川銀河という巨大な銀河のごくごく小さな一部分で...
収録日:2018/10/31
追加日:2019/03/26
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
5

実は考古学者と人類学者で違う!? 渡来系弥生人の定義

実は考古学者と人類学者で違う!? 渡来系弥生人の定義

弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(6)弥生人のDNA

後の二重構造説の見直しにつながっていく「ヤポネシアゲノムプロジェクト」は、これまで手薄だった弥生人のDNA分析によって、古代人の分布について新たな見方を示した。そして、鳥取県にある青谷上寺地遺跡の調査では、現代日本...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/04/23
藤尾慎一郎
国立歴史民俗博物館 名誉教授