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斎藤、斉藤…同じサイトウで字が異なる理由
読み方は同じでも漢字は異なる苗字というのはよくある話、「ナカムラさーん」と声をかけたら2人同時に振り向いてしまい、「えーっと人偏がつく方の仲村さんです」なんて言い直すのもお約束です。
そんな同音異字の苗字でもトップクラスに多いのが《サイトウ姓》……パッと思いつくだけでも《斉藤》《斎藤》《齋藤》など複数の漢字が日常的に使われていて、お歳暮の宛名を書くとき、また、メールを送ろうとして、あの人はどのサイトウだっけ?と迷った経験がある方も少なくないでしょう。そんな日本全国に広がるサイトウ姓の種類とルーツを紹介します。
何故そんなに種類があるのでしょう?
一説によれば、その原因は明治維新の頃にあるようです。江戸時代が終わり多くのシステムが変わった御一新、今まで武士や貴族など限られた身分の者しかつけられなかった苗字を日本全国民つけることが義務化されました。今までどこぞの村のなんとかさんと呼ばれていた人々も今後名乗る苗字を役所に届け出に行ったわけですが、全ての人々が字が書けたわけではありませんでした。よって、口頭で「我が家の苗字はサイトウにします」と申請します。
しかしそこが日本語の難しいところ、受理するお役人は自分の知っている漢字で《サイトウ》と記入していくことになります。さて、どんな字だったか……たしかこんなだったような……と、曖昧な記憶を頼りに旧字体の《齋》の字を書こうとして似て非なる漢字を生み出したり、簡単な方で良かろうと《斉》と書いたりした結果、誤字がそのまま登録されてしまった……という説もあるようです。実際、《斎》の字の異体字は85種類も存在するそうなので、あながち嘘とも言い難いですね。同音異字の姓の多い《ワタナベ》さんも同様だとか。
また、《斉》は当時《サイ》ではなく《セイ》と読んでいたはずであり、単純に《斉藤》は書き間違えという説もあります。およそ7万件以上ある《斉藤さん》が役所の人の書き間違いって考えると恐ろしいものがありますね。
さらに『全国名字大辞典』を紐解きましたところ、《サイトウ》という項には《藤原北家利仁流。利仁の子の叙用が伊勢神宮の斎宮頭となり、斎藤を称したのが祖。》と記載されているのが出てきました。藤原氏といえば歴史の教科書に出てくる摂関政治で名を馳せたあの藤原氏です。
「斎宮」とは音読みでは(さいくう/さいぐう)、訓読みでは(いつきのみや)、簡単にいえば《伊勢神宮に仕える皇族女性の住む宮殿》になります。その斎宮に仕える藤原氏、ということで《斎藤》になったんですね!
このように役職や土地から派生した藤原姓の苗字は多く、伊藤、加藤、近藤、佐藤、工藤、武藤など、斎藤同様、《藤》の一文字にプラスして作られています。伊勢守に就いた藤原氏だから《伊藤》、加賀にいるから《加藤》、武者所に仕えたから《武藤》だそうです。
また、同資料によれば《斉藤》は旧字体を省略した形であり、《齊藤》はいったん略されたものを再び旧字体に戻したものではないかと述べられていました。同じ苗字の字にもいろんな説があるようです。
かくいうスタッフも公共施設で登録のアルバイトをしていたところ、申請書は《斉藤》で書いてあるのに身分証を出してもらうとその他のサイトウ姓で書かれていたことも多々ありました。どちらが正しいのですかと尋ねたところ、どっちでも良いです、なんて言われることも……全国の複雑な字のサイトウさん、由緒正しい苗字ですのでどうか頑張って本来の字で申請してください。
そんな同音異字の苗字でもトップクラスに多いのが《サイトウ姓》……パッと思いつくだけでも《斉藤》《斎藤》《齋藤》など複数の漢字が日常的に使われていて、お歳暮の宛名を書くとき、また、メールを送ろうとして、あの人はどのサイトウだっけ?と迷った経験がある方も少なくないでしょう。そんな日本全国に広がるサイトウ姓の種類とルーツを紹介します。
サイトウという苗字は何種類?
サイトウと読む姓をピックアップしていくと、実にその数31種類にもなると言われています。ここまで多様性のある苗字も珍しいと言えるでしょう。最も多いのは《斎藤》でおよそ15万件、次点は簡単な《斉藤》で約7万件、さらに《齋藤》が1万7000件、大きく離されて《齊藤》が約1千件になるそうです。西日本では《斉藤》が、東日本では《斎藤》が多くなっています。何故そんなに種類があるのでしょう?
一説によれば、その原因は明治維新の頃にあるようです。江戸時代が終わり多くのシステムが変わった御一新、今まで武士や貴族など限られた身分の者しかつけられなかった苗字を日本全国民つけることが義務化されました。今までどこぞの村のなんとかさんと呼ばれていた人々も今後名乗る苗字を役所に届け出に行ったわけですが、全ての人々が字が書けたわけではありませんでした。よって、口頭で「我が家の苗字はサイトウにします」と申請します。
しかしそこが日本語の難しいところ、受理するお役人は自分の知っている漢字で《サイトウ》と記入していくことになります。さて、どんな字だったか……たしかこんなだったような……と、曖昧な記憶を頼りに旧字体の《齋》の字を書こうとして似て非なる漢字を生み出したり、簡単な方で良かろうと《斉》と書いたりした結果、誤字がそのまま登録されてしまった……という説もあるようです。実際、《斎》の字の異体字は85種類も存在するそうなので、あながち嘘とも言い難いですね。同音異字の姓の多い《ワタナベ》さんも同様だとか。
また、《斉》は当時《サイ》ではなく《セイ》と読んでいたはずであり、単純に《斉藤》は書き間違えという説もあります。およそ7万件以上ある《斉藤さん》が役所の人の書き間違いって考えると恐ろしいものがありますね。
ルーツは教科書にも出てくる「藤原氏」?
あらためて「斎」という字を漢字辞典で引いてみますと、「神仏を祭るとき、飲食や行いをつつしんでけがれを去り、心身を清めること」「心身を清めて神に仕えること」という意味が出てきます。どうやら神職にまつわる字義があるようです。さらに『全国名字大辞典』を紐解きましたところ、《サイトウ》という項には《藤原北家利仁流。利仁の子の叙用が伊勢神宮の斎宮頭となり、斎藤を称したのが祖。》と記載されているのが出てきました。藤原氏といえば歴史の教科書に出てくる摂関政治で名を馳せたあの藤原氏です。
「斎宮」とは音読みでは(さいくう/さいぐう)、訓読みでは(いつきのみや)、簡単にいえば《伊勢神宮に仕える皇族女性の住む宮殿》になります。その斎宮に仕える藤原氏、ということで《斎藤》になったんですね!
このように役職や土地から派生した藤原姓の苗字は多く、伊藤、加藤、近藤、佐藤、工藤、武藤など、斎藤同様、《藤》の一文字にプラスして作られています。伊勢守に就いた藤原氏だから《伊藤》、加賀にいるから《加藤》、武者所に仕えたから《武藤》だそうです。
また、同資料によれば《斉藤》は旧字体を省略した形であり、《齊藤》はいったん略されたものを再び旧字体に戻したものではないかと述べられていました。同じ苗字の字にもいろんな説があるようです。
サイトウさんも大変な《サイ》の字
このようになかなか趣深い苗字のサイトウさんですが、当の御本人たちはしばしば漢字を間違えられて大変なようです。電話口で《齋》の字を伝えるのがいかに大変か、年賀状を書くとき自分の苗字にうんざりした、なんて声も聞かれます。かくいうスタッフも公共施設で登録のアルバイトをしていたところ、申請書は《斉藤》で書いてあるのに身分証を出してもらうとその他のサイトウ姓で書かれていたことも多々ありました。どちらが正しいのですかと尋ねたところ、どっちでも良いです、なんて言われることも……全国の複雑な字のサイトウさん、由緒正しい苗字ですのでどうか頑張って本来の字で申請してください。
<参考サイト・参考文献>
「名字の由来と歴史。「さいとう」さんの漢字表記は85種類だけどルーツは1つ?」warakyweb
https://intojapanwaraku.com/culture/72832/
『漢字の「わたなべ」が58通りも生まれた、今では考えられない理由とは?』TBS
https://topics.tbs.co.jp/article/detail/?id=2134
『斎宮 伊勢斎王たちの生きた古代史』榎村寛之
『全国名字大辞典』森岡浩
「名字の由来と歴史。「さいとう」さんの漢字表記は85種類だけどルーツは1つ?」warakyweb
https://intojapanwaraku.com/culture/72832/
『漢字の「わたなべ」が58通りも生まれた、今では考えられない理由とは?』TBS
https://topics.tbs.co.jp/article/detail/?id=2134
『斎宮 伊勢斎王たちの生きた古代史』榎村寛之
『全国名字大辞典』森岡浩
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