テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.05.13

世界で最も高価な「絵画」ランキング

 絵画は作品そのもののクオリティはもちろん、その希少性や画家の知名度などから値段が上がっていくので、昨今では投資目的として購入する人も多くなっています。ではこれまでの絵画の中で、最も高い値段がつけられた絵画とは、どんな作品なのでしょうか。

1位:レオナルド・ダ・ヴィンチ『サルバトール・ムンディ』

オークション
落札年:2017年
価格:約4億5000万ドル(約486億円)

 ルネサンス最大の巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。肖像の青いローブの男性はイエス・キリストで、タイトルは「世界の救世主」の意味です。正面を見すえた神々しいたたずまいから「男性版モナ・リザ」と呼ばれています。オークションで落札されたのち作品はしばらく行方不明となっていましたが、2021年にサウジアラビアの皇太子が所有していたことが判明し、話題となりました。

2位:デ・クーニング『インターチェンジ』

個人間取引
購入年:2015年
価格:約3億ドル(約324億円)

 オランダ人画家のデ・クーニングは抽象表現主義の先駆者として知られ、第二次世界大戦の爪痕が色濃く残る20世紀半ばに活躍しました。描く行為そのものをキャンバスに表現する「アクション・ペインティング」を得意とし、筆を叩きつけたような荒々しいタッチが特徴です。本作品は2015年当時、最も高額な油彩画として記録を更新しました。

3位:ゴーガン『いつ結婚するの?』

個人間取引
購入年:2014年
価格:約3億ドル(約324億円)

 株の仲買人から画家に転向したゴーガン(ゴーギャン)は、母国フランスからタヒチに移住して現地の人々の日常を描きました。二人の女性が描かれたこの作品は、ゴーガンが初めてタヒチに赴いた時に描いたものといわれています。手前の女性の髪に挿されている白い花は「お相手募集中」のシンボルで、作品タイトルは後ろの女性が手前の女性に向けて発しているものと考えられています。

4位:セザンヌ『カード遊びをする人々』

個人間取引
購入年:2011年
価格:約2億5000万~3億ドル(約270~324億円)

 フランスの印象派画家で「近代絵画の父」と呼ばれたセザンヌが、晩年に描いた同テーマの5連作のうちのひとつです。2011年にカタール王室が購入しました。5つの作品はそれぞれサイズや構図などが異なっていますが、いずれもカードゲームに興じ、勝負に没頭しているプロヴァンスの男性の姿が描かれています。

5位:ポロック『Number 17A』

個人間取引
購入年:2015年
価格:約2億ドル(約216億円)

 ポロックはデ・クーニングと並ぶ抽象表現主義のアメリカ人画家です。床にキャンバスを置いて絵具をしたたらせて描く「ドリッピング」という技法で唯一無二の世界観を生み出しました。この作品はドリッピングシリーズの中でも初期のもので、2位のデ・クーニング『インターチェンジ』とともにケネス・グリフィン氏が購入しました。

6位:ロスコ『No.6(すみれ、緑、赤)』

個人間取引
購入年:2014年
価格:約1億8600万ドル(約200億円)

 ポロックと同じくアメリカの抽象表現主義画家として知られるロスコの作品は、大きなキャンバスに単色または少数の色のみで塗り分けた色彩で深い情感を表現する「カラー・フィールド・ペインティング」が特徴です。極貧の中描かれたという当作品は、その時のロスコの心情を示すかのように薄暗く陰鬱な表情を見せています。

7位:クリムト『水蛇Ⅱ』

個人間取引
購入年:2013年
価格:約1億8400万ドル(約198億円)

『接吻』をはじめ、きらびやかで官能的な作品が印象的なオーストリア画家クリムトの最盛期に制作された絵画です。タイトル通り水蛇を女性に見立て、水流をただよう妖艶な姿を描いています。ロシアの実業家がスイスの画商から手に入れたもので、個人蔵となっています。

8位:レンブラント『マールテン・ソールマンスとオーペン・コーピットの肖像』

個人間取引
購入年:2015年
価格:約1億8000万ドル(約194億円)

『夜警』でおなじみのオランダの巨匠レンブラントの手による2枚で1対の巨大な肖像画で、レンブラントの作品の中で最高額となっています。マールテン・ソールマンスとオーペン・コーピットの婚礼のために描かれました。ルーヴル美術館・アムステルダム国立美術館が共同購入し、各美術館に収蔵されています。

9位:ピカソ『アルジェの女たち(バージョンO)』

オークション
落札年:2015年
価格:約1億7900万ドル(約193億円)

 スペイン出身のピカソが描いた「A」から「O」までの連作のうちのひとつで、ドラクロワの同名作品をオマージュしたものといわれています。1954年に死去したピカソの友人であるフランスの印象派画家マティスへの追悼作品として描かれました。

10位;モディリアーニ『横たわる裸婦(赤いヌード)』

オークション
落札年:2015年
価格:約1億7000万ドル(約183億円)

 パリで活動したイタリア人画家モディリアーニが描いた裸婦像です。画題はルネサンス期に活躍したティツィアーノの『ウルビーノのヴィーナス』に影響されたものと考えられています。落札したのは中国の実業家です。

いかがでしたか。神出鬼没のアーティスト・バンクシーや、水玉模様の作品で知られる草間彌生など、新進気鋭の現代画家が世間を賑わせている昨今。コロナ禍においてもなお活況を見せるアート業界に、今後も目が離せません。

※本文中の補足:
・カッコ内の日本円は2021年4月現在のレート(1ドル=108円)での計算となります。
・個人間取引では金額は公表されていないことが多いため、個人間取引のものは推定金額として表記しています。

<参考サイト・参考文献>
世界で一番高い絵のランキング【2021年版】│翠波画廊
https://www.suiha.co.jp/column/sekaideitibantakaienoranking2021/
絵画オークション落札額 TOP10【2020年最新ランキング】│骨董品買取の福助
https://antique-kaitori.com/painting/column-painting/auction/
『この絵、誰の絵?』(佐藤晃子、美術出版社)
『西洋・日本 美術史の基本』(美術検定実行委員会 編、美術出版社)

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

イヌ、ネコ、ニワトリ…弥生時代の役割と縄文時代との違い

イヌ、ネコ、ニワトリ…弥生時代の役割と縄文時代との違い

弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(10)弥生人と動物

われわれにとって馴染み深いイヌやネコなどの動物。縄文時代や弥生時代は、その役割、位置づけはどうなっていたのか。また、現代との違いはどこにあるのか。出土品から見えてくる動物との関係について、当時の食生活にも触れな...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/05/21
藤尾慎一郎
国立歴史民俗博物館 名誉教授
2

メタボリックシンドロームを単なる肥満と侮ってはいけない

メタボリックシンドロームを単なる肥満と侮ってはいけない

健診結果から考える健康管理・新5カ条(6)メタボを侮ってはいけない

「メタボリックシンドローム」を単なる肥満と侮ってはいけない。内臓脂肪が蓄積すると、血糖値や血圧の上昇を招き、さまざまな健康リスクを高めることになってしまう。自覚症状のないまま血管障害が進行するリスクの上昇を防ぐ...
収録日:2025/01/10
追加日:2025/05/20
野口緑
大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 特任准教授
3

フェンタニルの麻薬中毒も意図的な戦略?非対称兵器の脅威

フェンタニルの麻薬中毒も意図的な戦略?非対称兵器の脅威

医療から考える国家安全保障上の脅威(1)「非対称兵器」という新たな脅威

国家安全保障上の脅威といえばミサイルや爆弾投下などの「武力攻撃」を想定しがちだが、現在、特に先進諸国では異なる見方をしているという。2024年米国下院の特別委員会で、国内に大量の中毒者・死亡者を出して社会問題視され...
収録日:2024/09/20
追加日:2025/05/01
山口芳裕
杏林大学医学部教授
4

グローバル主義が全ての元凶…トランプ政権がめざすのは?

グローバル主義が全ての元凶…トランプ政権がめざすのは?

米国システムの逆襲~解放の日と新世界秩序(1)米国システム「解放の日」

第二次トランプ政権は、その関税政策を発動させた日、4月2日を「解放の日」と称した。そこには、アメリカが各国の面倒を見るという第二次世界大戦以降の構図が、アメリカに損害をもたらしているという問題意識がある。「解放の...
収録日:2025/04/25
追加日:2025/05/20
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
5

千手千眼観音のサポートとは?菩薩たちのビッグバンとは?

千手千眼観音のサポートとは?菩薩たちのビッグバンとは?

おもしろき『法華経』の世界(3)止観と菩薩による救済

最澄の瞑想図は非常に美しいが、彼は何を瞑想していたのだろうか。答えは無、心の動きを止めるのが「止観」だからだ。また、『法華経』全巻の構成を見ると、弥勒、観音、普賢の三菩薩が衆生を導き救済する中心的存在であること...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/05/18
鎌田東二
京都大学名誉教授