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DATE/ 2021.05.26

パチンコ人口はなぜ減ったのか?

 「レジャー白書2020」によると、パチンコ業界の市場規模は約20兆円、日本の余暇市場における27.7%を占めています。飲食などがほぼ同じ規模で27.9%、観光・行楽は16.0%であることからすれば、パチンコ業界がどれだけ大きな業界かわかります。しかし、状況は変わってきたようです。都内の駅前では、かつては何店舗も競合していたパチンコ店が軒並み潰れています。一体何が起きているのでしょうか。

遊技人口はピーク時3000万人から800万人まで減少

 パチンコ・パチスロの遊技参加人口は、1980年から1995年までは2,800万人から2,900万人の間で推移していたようですが、2009年には1,720万人、2013年には970万人と減少します。こののち、多少上下しながら、2021年の時点では813万人となりました。2020年の調査から約2割減少しています。

 また、店舗数で見ると、全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)によると、2020年に廃業したパチンコの店舗数は、約600店に上るとのこと。これは前年比約1.5倍です。1995年には約1万8000店だった店舗数は2020年1月には8000店台に減少しています。

 減少の理由はいくつかありそうです。一つは禁煙の流れ。パチンコは気兼ねなくタバコを吸いながらゆっくり過ごせる場所でしたが、禁煙になってしまえば、喫煙者が長時間いることは難しくなります。加えてパチンコ店はコロナリスクが高いイメージがついたことにより、主に高齢者の客足が戻らないようです。実際には業界団体がガイドラインを作り、対策を徹底しているようです。

ギャンブル依存症対策による規制強化

 パチンコ業界はさまざまな規制が加えられてきました。大当たりの回数や出玉の数、時間の制限などが細かく制限されています。パチンコが賑わっていた頃には、一度大当たりすると大量に玉が出たそうですが、今はかなり規制されています。また、2011年からは新聞や出版、放送向けの宣伝活動も制限されています。この辺りの背景には、ギャンブル依存症の問題に対する対策があるようです。

 大きく負けても大きく勝つ可能性があれば、人はまたパチンコに行きたくなります。これが依存症になるきっかけの一つとも考えられています。今ではこうした大きな当たりは規制され、大きく勝つこともなければ、大きく負けることもなくなりました。こうなると刺激が小さくなり、これまでの利用者は物足りなさを感じてしまいます。

 さらに2020年の「ギャンブル等依存症対策基本法」の一環として行われた規則改正がかなり大きな影響を与えたようです。パチンコ店は2021年1月末までに、このルールに沿った新しい台に入れ替える必要が生じました。全日遊連によると、パチンコ・パチスロ合わせてその数は275万台、1店舗平均300台以上とのことです。パチンコ台は一台50万円ほどするそうです。これを300台入れ替えると単純計算で1億5000万円に上ります。

 タバコを吸えないことで利用者が減った上に、コロナ禍で客足が途絶えている状況です。また、この先を見通すことも難しい状況といえます。その上で今、1億円以上を設備にかけることが可能かといえば、たいへん難しいでしょう。パチンコ店は今、前例のない大嵐に見舞われているようです。

<参考サイト>
「レジャー白書2020」 ヘビーユーザー化進行し参加人口は過去最低値を更新|遊技通信Web
https://www.yugitsushin.jp/news/kanren/20200824-1651/
パチンコの歴史|株式会社ジャパンニューアルファ
http://www.jn-alpha.co.jp/business/p/255.html
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授