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DATE/ 2021.06.25

「痛風」の原因とその予防法は?

 風があたるだけでも痛いという「痛風」。最もよく知られた生活習慣病で、苦しんでいるおじさまも少なからず、です。これまで美食とアルコールが原因の「ぜいたく病」と揶揄されてきましたが、近年の研究では食生活以上に遺伝子変異の影響が大きいことがわかってきました。ひどい目にあう前に、どんな症状なのか、原因や予防法について知っておきましょう。

痛風とはどんな病気?

 痛風は最も古くから知られた病気の一つです。よく知られている症状としては、足の親指のつけ根が赤く腫れ、激しく耐えがたい痛みを発するというもの。体内の尿酸がトゲトゲと結晶化し、関節の間にたまり、チクチクと炎症を引き起こすという病状で知られています。

 一般的には、20代以上の男性に多く発症するといわれています。東京女子医大で行った1992年の調査では、男性が98.5%、女性は1.5%と報告されています。女性の発症例が男性より少ないのは、女性ホルモンの働きによるところで、腎臓の尿酸の排泄を促す効果があるためです。

 公益財団法人である「痛風・尿酸財団」のサイトに掲載された歴史を見ていくと、エジプトから発掘されたミイラの関節にも尿酸結晶が確認されただけではなく、紀元前の医学者ヒポクラテスによる症例報告も確認されているとのこと。西洋史上、マケドニアのアレクサンダー大王、プロシア国王フリードリヒ大王、フランスルイ十四世、宗教改革のルター、芸術家レオナルド・ダ・ビンチ、詩人ダンテ、文豪ゲーテ、スタンダールやモーパッサン、物理学者ニュートンなどが痛風に苦しんだことが報告されています。

痛風の原因は?

 痛風の原因は、体内でつくられる尿酸にあるとされています。尿酸は一般的な血液検査の項目にもあるので見たことがあるのではないでしょうか。尿酸値が7mg/dl以上を「高尿酸血症」、高尿酸血症の結果、尿酸が結晶化して関節にたまり、激痛などの発作が加わった場合を「痛風」と呼んでいます。

 多くの国民を悩ませる痛風ですが、驚愕の事実として、日本において痛風は明治以前には確認されていなかったとのこと。安土桃山時代のポルトガル人宣教師のルイス・フロイス、明治時代のドイツ人医師ベルツの記録から検証されているようです。日本で痛風が劇的に増えたのは、食生活が欧米化していく、1960年代以降のこと。こうした歴史から、痛風の原因は、食習慣の影響が大きいと考えることができそうです。

 尿酸はプリン体という成分が肝臓で分解されて生じる老廃物です。食事から摂取されるプリン体は体内で最終的に尿酸に代謝されて尿酸プールを増大させます。そのため、肉や魚介類をたくさん食べると痛風になりやすいことが知られています。また、アルコール飲料では、含まれるプリン体量はあまり多くはありませんが、アルコールの作用が加わって尿酸値が上昇します。お酒を毎日飲む人は痛風の危険度が2倍で、特にビールを飲む人の危険度が高いと報告されています。

痛風の予防法は?

 痛風に至る高尿酸血症ですが、その予兆はあるのでしょうか、また予防策はあるのでしょうか。

 第一に、肥満傾向が予兆になります。総カロリーを制限しつつ、偏食を避け、多品目を少量ずつ、ゆっくり噛んで、食べることを心がけましょう

 第二に、アルコールを控えることが重要なポイントです。アルコールが体内で分解される時に尿酸が作られ、その際にできる乳酸が体内に尿酸を蓄積すること、一部のアルコール飲料には尿酸の元になるプリン体が多く含まれていることなどがその主な原因です。アルコール飲料にマッチングするプリン体を多く含む食材もありますが、特にプリン体が多く含むビールを飲み過ぎないように注意しましょう。

 第三に、季節を問わず尿が一日2リットル以上になるようにすることが理想です。少なくとも毎日2リットル以上の水分をとることが肝要です。

 第四に、軽い運動を行うこと。ウォ-キングなどの有酸素運動は尿酸値を上げず、痛風の人に多い高血圧などの合併症にも有効です。

 最後に、精神的ストレスをうまく緩和することを心がけましょう。高ストレス状態は暴飲暴食につながります。のんびりゆっくり過ごすといったストレス対策が必要です。

<参考サイト>
公益財団法人 痛風・尿酸財団
https://www.tufu.or.jp
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