テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.07.12

「ペッパー」安すぎる時給が人間の仕事を奪う!?

※画像はイメージです。
 ソフトバンクが発売したロボット「Pepper」。各種センサーを搭載し、人間の感情を読み取り、さらに自分で考えてリアクションができる性能まで備えている。

 発売と同時に大ヒット商品となったペッパー君だが、先月、レンタルが発表された。受付業務やティッシュ配りなどをすることが想定されているそうだ。さて、そんな「彼」の「時給」をご存じだろうか?


時給は人間より高め

 彼の時給はなんと1,500円。発表と同時にSNS上では「自分より高い!」「ロボットに負けた…」といった多くの悲鳴が上がった。

 たしかにロボットよりも安い時給で働いている人は日本にごまんといるだろう。今年5月時点での全国のアルバイト平均時給は982円。ペッパー君は平均よりも500円も高いのだ。


しかしサラリーマンと比べると割安

 ではサラリーマンと比べるとどうだろう? 日本のサラリーマンの平均年収は2013年時点で約414万円。さて、時給に換算するといくらだろうか?年間の出勤日数は240日、残業時間は月30時間だと仮定する。

 240×8+12×30=2,280時間という年間労働時間が出てくる。平均年収でこれを割ると、約1,815円だ。アルバイトの約8割増しの時給をもらっている計算になる。実際には、ここに有給休暇なども入ってくるので、実際の時給はもっとアップするだろう。

 ペッパー君よりも高い給料をもらっていると言えるわけだ。


しかし、そもそもペッパー君は「安い」

 しかし、そもそもペッパー君の購入価格は198,000円。時給1,500円だと、労働時間にしてたった132時間だ。時給1,000円だとしても198時間。時給1,000円の受付を1か月半分くらいの給料で「買えて」しまう。1か月半を超えた分は、ずっとただで働いてくれるアルバイトがいるようなものだ。

 しかも、アルバイトやサラリーマンなど、人間を雇うコストは何も給料だけでない。交通費や保険料、教育コストや制服代、トイレや休憩室などの共益費などもすべてかかってくる。企業が払っているのは何もあなたの給料だけではないのだ。

 そう考えると、サービス業まで出来るロボットの登場は脅威だと言える。今までは、工場など、製造の現場がロボットの活躍する主な舞台だった。接客や、企画や分析などの第三次産業の分野は人間が必要とされ、ロボットの登場の余地はなかった。

 だからこそ、それなりの賃金も保障されたわけだが、今後人工知能やセンサーの開発が進めば、そうも言ってられないだろう。競争相手は、資格やスキル、経歴を積み重ねた人間ではない。

 「疲れず」「時給もあなたよりも安く」「新しい知識も一瞬で習得してしまう」ロボット。そんなハイスペックの「彼ら」と限られたポストを争う時代がついそこまで迫っているのだ。

 近い将来、面接の場で、進化したロボットと隣に並んだ時、あなたは「彼ら」よりも上手に自分をアピールする準備を整えていた方がいかもしれない。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと

戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
2

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gとローカル5G(1)5G推進の背景

第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
中尾彰宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
3

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える

政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
4

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着

2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~

近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21
阿久津聡
一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授