社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
日本の国土面積はどれぐらい大きい?
地図には正確な点と不正確な点がある
世界地図というと、多くの方が思い浮かべるのは「四角の中におさまった地図」ではないでしょうか。このタイプの地図はメルカトル図法といわれ、緯度と経度の角度を正確に記した「正角図法」に分類されます。角度が正しいことで航海のときに正しい航路を取りやすくなるメリットがありますが、本来は丸い地球を平面の四角のなかに再現していることから、赤道を中心に南北にいくほど距離と面積が拡大されてひずみが大きくなります。このため、面積を把握するには不向きな地図です。面積が正しい地図は「正積図法」に分類され、ひし形をしたサンソン図法や楕円形をしたモルワイデ図法などがあります。このタイプの地図は本に印刷したりテレビやスマホの画面に出したりしたときに余白ができてしまうため、少し使いづらい地図といえます。また、角度にも面積にも正確さを求めるなら地球儀が一番いいのですが、立体となると手軽に見るのは難しくなってしまいますよね。
そこでメルカトル図法が最も目にする機会が多い地図なのですが、面積にひずみがあるので、なんとなく広いと思っている国が意外と狭かったり、逆に狭いと思っている国が広かったりします。日本は小さな国というイメージが強いですが、実際にはどうなのでしょうか。
日本をいろいろな国と比較してみると?
面積が大きい国のトップ3は、1位が約1710万平方キロメートルのロシア、2位が約1000万平方キロメートルのカナダ、3位が約960万平方キロメートルのアメリカです。日本は約38万平方キロメートルなので、ロシアは日本の45倍程度、カナダとアメリカは日本の26倍程度も大きく、日本が世界の面積に占める割合は0.28%程度です。しかし世界中を見渡してみると、日本と近かったり、日本より小さかったりする国や地域もあります。日本に近い国には、中東のイラクが約44万平方キロメートルで日本の1.15倍程度、東南アジアのベトナムが約33万1千平方キロメートルで0.88倍程度、マレーシアが約33万平方キロメートルで0.87倍程度などがあげられます。
そして日本より小さい国には、北欧のフィンランドが約34万平方キロメートルで0.89倍程度、ヨーロッパのイタリアが約30万平方キロメートルで0.78倍程度などがあげられます。どちらの国も、メルカトル図法では日本より大きく見えますよね。赤道から離れるほど面積のひずみが強く出ることが、よくわかる例といえるでしょう。
さらに、ヨーロッパのルーマニアは約24万平方キロメートルで0.63倍程度なので日本の本州と同じくらい、スイスは約4万1千平方キロメートルで0.11倍程度なので日本の九州よりやや大きいくらいとなっています。日本より小さい国は意外とたくさんあるのです。
日本の面積の広さは世界で何位?
世界には約200の国や地域があります。日本は意外と広い国だとすると、そのなかでどれくらいの順位になるのでしょうか。その答えは、62位くらい。戦国大名の織田信長は、海外からやって来た宣教師に地球儀を見せてもらったとき、「日本はこんなに小さいのか」とがっかりしたといわれますが、それでも半数以上の国より大きいのです。それにしても気になるのは、62位“くらい”と順位が少し曖昧なところですよね。このような表現になる原因は、国土の計算方法によって面積が変わるからです。
たとえばヨーロッパのデンマークは、本国のみだと約4万3千平方キロメートルで、九州より少し広いくらいの面積です。しかしデンマークは海を隔てたグリーンランドも領地としており、ここを含めると面積は約222万平方キロメートルになるため、日本の5.8倍程度になります。グリーンランドの住民はデンマーク国籍を持っていますが、政府や議会は独自のものがあるため、ここをデンマークに含めるか含めないかの判断はケースバイケース。そこで、面積の順位も変わるというわけです。
また、新たな国の誕生は珍しいことではありません。2011年にはアフリカに約60万平方キロメートル(日本の1.6倍程度)の南スーダン共和国が誕生して、日本より上位の国が増えました。このように面積の広さの順位は刻々と変化しているのです。
調べてみると奥深い、日本と世界との面積の関係。いろいろ比較してみたいと思った方は、「The True Size Of…」というサイトを利用すると楽しいですよ。世界地図の上に日本をドラッグして、いろいろな国と大きさを比較できます。もちろん日本以外の国もドラッグできるので、知的好奇心を存分に満たしてくださいね。
<参考サイト>
意外に大きい日本の国土│一般財団法人国土技術研究センター
https://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary02
第1回 さまざまな地図と地理的技能 【地理情報と地図】編 地図で地球を見てみよう│NHK高校講座
https://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/chiri/archive/resume001.html
意外に大きい日本の国土│一般財団法人国土技術研究センター
https://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary02
第1回 さまざまな地図と地理的技能 【地理情報と地図】編 地図で地球を見てみよう│NHK高校講座
https://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/chiri/archive/resume001.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた主な要因として、二つのオウンゴールを挙げる島田氏。その一つとして台湾のモリス・チャン氏によるTSMC立ち上げの話を取り上げるが、日本はその動きに興味を示さず、かつて世界を席巻して...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/25
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
全ては光だと説く空海が、なぜその著書『秘蔵宝鑰』で、「死に死に死に死んで死の終りに冥(くら)し」と書いたのか。『秘蔵宝鑰』については、以前のテンミニッツ・アカデミー講義でも解説したが、そこから半年かけてこの書を...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/26
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
国際社会における中国の動きに注目が集まっている。新冷戦ともいわれる米中摩擦が激化する中、2021年7月に中国共産党は創立100周年を迎えた。毛沢東以来、初めて「思想」という言葉を党規約に盛り込んだ習近平。彼が唱える「中...
収録日:2021/07/07
追加日:2021/09/07
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02


