テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.10.24

世界の最低賃金、平均年収はどれぐらい?

 先進国と発展途上国の経済格差は、いわゆる「南北問題」としてSDGsの目標にも取り入れられています。実際にどのぐらいの違いがあるのでしょうか。OECD諸国とアジアの国々の最低時給や平均年収を調べてみました。

世界の「最低時給」「平均年収」ベスト10は?

 まず、先進国の集まるOECD加盟国の最低時給ベスト10の国々とその平均年収です。いずれも2020年に発表された2019年の値で、元の表のドルは2020年平均TTB105.82円で換算しています。

順位:国名/最低時給(円)/平均年収(円)
1:オーストラリア/1,365/5,841,898
2:ルクセンブルク/1,333/6,968,670
3:フランス/1,291/4,823,381
4:ドイツ/1,270/5,687,296
5:ニュージーランド/1,249/4,790,366
6:オランダ/1,196/6,225,179
7:ベルギー/1,185/5,748,883
8:イギリス/1,175/4,989,096
9:カナダ/1,111/5,856,290
10:アイルランド/1,090/5,235,339

 世界で最低賃金が最も高いのはオーストラリアですが、この制度を最初に設けたのは1894年のニュージーランドで、96年にオーストラリアのビクトリア州でも設けられたという歴史的な経緯があります。2021年のオーストラリアでは7月に始まった新年度の全国統一法定最低賃金を時給20.33豪ドル(1,682円)まで引き上げているとのニュースも。

 最低時給が高くても、必ずしも平均年収は高くないのが世界の現状のようですが、平均年収ベスト10の国々と最低時給は以下のようになります。

順位:国名/平均年収(円)/最低時給(円)
1:アメリカ/7,343,061/773
2:アイスランド/7,141,580/ー
3:ルクセンブルク/6,968,670/1,333
4:スイス/6,859,675/ー
5:オランダ/6,225,179/1,196
6:デンマーク/6,183,067/ー
7:ノルウェー/5,902,639/ー
8:カナダ/5,856,290/1,111
9:オーストラリア/5,841,898/1,365
10:ベルギー/5,748,883/1,185

 最低時給が定められていないのは、労働者の組織率が著しく高く、多くの産業で労働協約が締結されている先進工業国です。

近隣アジアの国はどうなっているか

 OECDに加盟している韓国の最低時給は942円(12位)、平均年収は4,440,207円(19位)と現在のアジアでは最高レベル。それに次ぐのが日本の最低時給868円(14位)、平均年収4,075,657円(22位)です。

 それ以外のアジア諸国はOECDに加盟していないため、同じ基準では比較できませんが、ジェトロが行っている海外進出日経企業対象の「賃金・給与水準」レポートがあります。こちらは2020年8月時点の月額基本給ですが、元の表のドルは2020年平均TTB105.82円で換算しています。

順位:国名/中央値(円)/平均値(円)
1:中国/51,217/56,190
2:タイ/41,799/47,302
3:マレーシア/37,989/38,095
4:インドネシア/35,979/38,095
5:インド/26,984/28,307
6:フィリピン/26,032/28,783
7:ベトナム/25,079/26,455
8:カンボジア/21,164/23,492
9:ミャンマー/15,873/19,153
10:パキスタン/15,767/16,720

 こちらは主に製造業の作業員の月額給与なのでOECD統計と単純比較はできませんが、最低時給が1,682円の国と平均月給が16,728円の国では後者が「世界の工場」となってしまうのも仕方のない運命と考えるしかありません。「親ガチャ」どころではない「国ガチャ」について、日本も考える時期ではないでしょうか。

<参考サイト>
Real minimum wages│OECD.Stat
https://stats.oecd.org/Index.aspx?DataSetCode=RMW#
新型コロナウイルス感染拡大後、アジアの賃金・給与水準はどう変わったか│JETRO
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/a9bd380c2d64c495.html

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率

日本の政治史を見る上で地理的条件は外せない。「島国」という、外圧から離れて安心をもたらす環境と、「山がち」という大きな権力が生まれにくく拡張しにくい風土である。特に日本の国土は韓国やバルカン半島よりも高い割合の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/15
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
2

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ

海底はどうやってできるのか。なぜ火山ができるのか。プレートが動くのは地球だけなのか。またそれはどうしてか。ではプレートは海底の動きの全てを説明できるのか。地球史規模の海底の動きについて、海底調査の実態から最新の...
収録日:2020/10/22
追加日:2021/05/02
沖野郷子
東京大学大気海洋研究所教授 理学博士
3

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査

現在の宇宙開発は「国際月探査」を合言葉に掲げている。だが月は人類の移住先にも適さず、探査にさほどメリットがない。にもかかわらずなぜ「月探査」が目標として掲げられているのか。それは冷戦後、宇宙開発の目標を失った各...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/16
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士
4

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本

組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
5

狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き

狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き

ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す

ヒトは、そもそもの生き方であった狩猟採集生活でも子育てを分担してきた。それは農業社会においても大きくは変わらなかったが、しかし産業革命以降、都市化が進み、貨幣経済と核家族化と個人主義が浸透した。ヒトが従来行って...
収録日:2025/03/17
追加日:2025/09/14
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長 元総合研究大学院大学長