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世の中に蔓延る「陰謀論」とは?
コロナ禍とワクチンをめぐる噂、2021年1月の米国議事堂襲撃事件の背景となった「Qアノン」など、世の中を席捲するリスクとして「陰謀論」が注目されるようになりました。SNSによる情報拡散の影響から信奉者は拡大し事態は深刻です。
「陰謀論」「陰謀説」とは、ある出来事や状況について、明解な説明がなされていたとしても、偏見や不十分な証拠によって特定の集団や人物による謀略であると信じ主張することを指します。古くは宗教裁判や魔女狩り、近年大戦下のジェノサイドに至るまで、陰謀論は多くの歴史的な悲劇とリンクしています。
米国の例として、ケネディ大統領暗殺事件陰謀論、アポロ計画陰謀論、アメリカ同時多発テロ事件陰謀説などが挙げられます。
具体的にケネディ大統領暗殺事件陰謀論をみていくと、オズワルドによる単独の犯行が捜査に基づく公式説明になりますが、これに納得できない人々がいくつかの説を唱えるようになりました。「マフィア壊滅作戦に反発したサム・ジアンカーナを中心としたマフィア主犯説」「ピッグス湾事件の失敗を恨む亡命キューバ人主犯説」「軍産複合体の意を受けた政府主犯」が代表的な陰謀論になります。結果、米国では70%の人々がケネディ暗殺は単独犯ではなく複数犯による犯行を信じているという世論調査(2003年)にもその影響がみてとれます。これは、証拠物件の公開が政府によって不自然にも制限されたり、狙撃したオズワルドがダラス市警察本部でジャック・ルビーに射殺され、さらにそのジャック・ルビーが服役中に病死したという不可解な事象が重なっていることが影響しています。
その代表的な例としては、紀元前よりユダヤ人が世界の政治・経済を支配しているというユダヤ陰謀論があります。このバリエーションとして、「カナン・フェニキア陰謀論」「新世界秩序陰謀論」「三百人委員会」、フリーメイソンの「三十三評議会」「十三人評議会」「イルミナティ13血流」が展開されています。
この類型として、ロスチャイルド、ロックフェラー、モルガンなどのユダヤ系財閥が世界秩序を決定しているという陰謀論もよく知られています。
新型コロナのパンデミックにまつわる陰謀論がよい例となります。闇の勢力によってウイルスがばらまかれたという説、マスクはむしろ感染を拡大させるといった理論、ワクチンには極小のナノチップで人々を管理しコントロールするために作られたといった噂は、公衆衛生の改善を妨げる重大な障害につながる大問題といってよいでしょう。
科学的、合理的、論理的な説明がされているのにも関わらず、なぜあきらかな偏見や不十分な証拠によって捏造された説に翻弄されるのでしょうか?
陰謀論はかつて特定少数に限定されていましたが、メディアと環界の進化によって、20世紀後半から21世紀初頭に一般的な文化的現象としてとりざたされるようになりました。マスメディアによって世界中で広まり、一般的に信じられてしまったことが遠因となります。
さらに、近年、スマホの普及とインターネットの一般化、SNSの日常化によって、陰謀論は情報として社会を侵食するようになりました。心理学で「エコーチェンバー」現象と呼ばれる、閉鎖的なコミュニケーション空間で、意見や信念が過激で極端になること、多様な考え方を受け入れられなくなる状態といってよいでしょう。
陰謀論の流行を防ぐためには、なんでもフラットに議論できる開かれた社会を維持することが前提になりますが、新型コロナのパンデミックはこの前提を破壊しました。
多くの人はあたえられた情報を検討・検証することなく受け入れます。家に籠もって、SNSなどの特定情報にふれているような状態は、ある種、洗脳環境と類似しています。
陰謀論は、循環論法によって強化されてきました。論証や検証をとびこえて、信じるしかないフレームを思考に埋め込むような心理操作がみてとれます。
陰謀論は宗教に隣接するトップダウン型の信仰対象ともいえ、ボトムアップ型で社会を改善していく分析的思考に基づく流れに逆行する関係になります。こうした状況においては、個々人の情報リテラシーを高めるような社会プログラムが切実に望まれます。
「陰謀論」「陰謀説」とは、ある出来事や状況について、明解な説明がなされていたとしても、偏見や不十分な証拠によって特定の集団や人物による謀略であると信じ主張することを指します。古くは宗教裁判や魔女狩り、近年大戦下のジェノサイドに至るまで、陰謀論は多くの歴史的な悲劇とリンクしています。
真偽不明の事件からの陰謀論
では、世の中の代表的な陰謀論にはどんなものがあるのでしょう。米国の例として、ケネディ大統領暗殺事件陰謀論、アポロ計画陰謀論、アメリカ同時多発テロ事件陰謀説などが挙げられます。
具体的にケネディ大統領暗殺事件陰謀論をみていくと、オズワルドによる単独の犯行が捜査に基づく公式説明になりますが、これに納得できない人々がいくつかの説を唱えるようになりました。「マフィア壊滅作戦に反発したサム・ジアンカーナを中心としたマフィア主犯説」「ピッグス湾事件の失敗を恨む亡命キューバ人主犯説」「軍産複合体の意を受けた政府主犯」が代表的な陰謀論になります。結果、米国では70%の人々がケネディ暗殺は単独犯ではなく複数犯による犯行を信じているという世論調査(2003年)にもその影響がみてとれます。これは、証拠物件の公開が政府によって不自然にも制限されたり、狙撃したオズワルドがダラス市警察本部でジャック・ルビーに射殺され、さらにそのジャック・ルビーが服役中に病死したという不可解な事象が重なっていることが影響しています。
陰謀論の主体
陰謀論においては、その主体が特定の団体や組織、古くは民族に言及します。その代表的な例としては、紀元前よりユダヤ人が世界の政治・経済を支配しているというユダヤ陰謀論があります。このバリエーションとして、「カナン・フェニキア陰謀論」「新世界秩序陰謀論」「三百人委員会」、フリーメイソンの「三十三評議会」「十三人評議会」「イルミナティ13血流」が展開されています。
この類型として、ロスチャイルド、ロックフェラー、モルガンなどのユダヤ系財閥が世界秩序を決定しているという陰謀論もよく知られています。
陰謀論が蔓延る理由
不可解な事象について定説となっている合理的な判定が必ずしも真実とは限りませんし、新たな証拠によって説明が更新されていくことは健全な人類の営為と言えます。そこから、証拠や論理の検討・検証を経ることなく、飛躍した説や論を信じ呪縛されることは明らかな問題です。新型コロナのパンデミックにまつわる陰謀論がよい例となります。闇の勢力によってウイルスがばらまかれたという説、マスクはむしろ感染を拡大させるといった理論、ワクチンには極小のナノチップで人々を管理しコントロールするために作られたといった噂は、公衆衛生の改善を妨げる重大な障害につながる大問題といってよいでしょう。
科学的、合理的、論理的な説明がされているのにも関わらず、なぜあきらかな偏見や不十分な証拠によって捏造された説に翻弄されるのでしょうか?
陰謀論はかつて特定少数に限定されていましたが、メディアと環界の進化によって、20世紀後半から21世紀初頭に一般的な文化的現象としてとりざたされるようになりました。マスメディアによって世界中で広まり、一般的に信じられてしまったことが遠因となります。
さらに、近年、スマホの普及とインターネットの一般化、SNSの日常化によって、陰謀論は情報として社会を侵食するようになりました。心理学で「エコーチェンバー」現象と呼ばれる、閉鎖的なコミュニケーション空間で、意見や信念が過激で極端になること、多様な考え方を受け入れられなくなる状態といってよいでしょう。
陰謀論の流行を防ぐためには、なんでもフラットに議論できる開かれた社会を維持することが前提になりますが、新型コロナのパンデミックはこの前提を破壊しました。
多くの人はあたえられた情報を検討・検証することなく受け入れます。家に籠もって、SNSなどの特定情報にふれているような状態は、ある種、洗脳環境と類似しています。
陰謀論は、循環論法によって強化されてきました。論証や検証をとびこえて、信じるしかないフレームを思考に埋め込むような心理操作がみてとれます。
陰謀論は宗教に隣接するトップダウン型の信仰対象ともいえ、ボトムアップ型で社会を改善していく分析的思考に基づく流れに逆行する関係になります。こうした状況においては、個々人の情報リテラシーを高めるような社会プログラムが切実に望まれます。
<参考サイト>
・中央公論.jp:「認知バイアス」がある限り、あなたも陰謀論を信じてしまうのかもしれない https://chuokoron.jp/culture/117778.html
・中央公論.jp:「認知バイアス」がある限り、あなたも陰謀論を信じてしまうのかもしれない https://chuokoron.jp/culture/117778.html
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