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大使館は何をするところなのか?
質問です。世界の各地に存在する「日本の大使館」は、いったいいくつあるでしょうか?
2021年11月現在、「日本が承認している国」である195カ国には、「日本の大使館」が設けられています(ただし、日本の大使館実館(実際の事務所)が存在する国:153カ国。第三国に存在する日本の大使館が兼轄している国:42カ国)。
では、大使館とはいったいどんな組織で、具体的に何をしているのでしょうか?
大使館の最重要任務は、国の代表として駐在国(任国)との外交ルールを定めることといえます。そのため、駐在国の政府との交渉や連絡を担当し、相手国の政治や経済をはじめとした多岐にわたる情報を収集・分析し、自国への報告を行っています。
次なる重要な任務は、自国と駐在国の間の貿易・投資・文化交流など良好に保ちつつ活性化するために、企業や個人をうながしています。そこで、自国の企業や個人が駐在国の企業や個人と国際的な交渉をする際にサポートをしたり、駐在国の国民に自国の理解を深めてもらうための広報活動を行ったりしています。
一方、大使館のトップである特命全権大使(大使)は、駐在国で唯一、自国の代表として政府の名で発言し、約束する権限をもっています。また、外交使節の最上級の階級であり、常駐外交使節団の長として、駐在国との外交交渉を行うとともに、在留邦人の保護・監督などに当たります。
パスポート紛失時の再発行手続きや「帰国のための渡航書」の発給、ケガや病気の際の医療機関情報の提供、盗難や紛失時の現地警察への届出の助言、さらには以上のようなトラブルの際に日本の家族との連絡をサポートするなど、“在留邦人の生命と財産の保護”の観点にたち援護してくれます。ただし、お金にかかわる手続きはできません。
なお、在留邦人の生命と財産の保護は重要な任務であるものの、“在留中の個人的な困り事のサポート”は、大使館のメインの仕事とはいえません。大使館という特殊かつ国際的にも重要な組織には、他国との外交にできるだけ集中してもらった方が、結局のところ自国民としての利益もより大きくなるといえます。
個人の困り事の解決やサポートはあくまでも緊急時の手段と心得て、海外に行く際には事前から備えて現地ではしっかりと自衛することが、在留邦人一人ひとりに求められています。
もちろん、在留中の個人的“ではない”困り事ともいえるような国際的な問題や紛争等に遭遇した際は、その限りではありません。
そして、大使館を含む在外公館には、「外交特権」という外交上の特別の権利が与えられています。
【在外公館(大使館を含む)の「外交特権」】
「公館の不可侵権」:大使や総領事の許可なく在外公館の敷地や建物に入ることはできない。
「国旗・国章の掲揚の権利」:在外公館に自国の国旗や国章などを掲げることができる。
「課税の免除」:在外公館には税金が課されない。
「公文書の不可侵権」:外国の役人や警察は公文書の捜索・差し押さえ・閲覧ができない。
「通信の不可侵権」:外国の役人や警察が開けてはいけない「外交封印袋」で文書類を送ることが認められている。
また、外交官に認められた外交特権には、「身体の不可侵権」(逮捕等で身体を拘束されることがない)、「裁判権の免除」(刑事・民事・行政裁判にかけられることがない)、「居住等の不可侵権」(外交官の家に許可なく立ち入ることはできない)などがあります。
ただし、外交特権とは、一般的な“特権”(いわゆる、特定の身分や地位の人がもつ他に優越した権利)とは違います。そのため、大使館で働く大使を含む外交官も、任国の法律を尊重・遵守することが大原則であることはいうまでもありません。また、自国の代表として誇り高く任務を全うする外交官は、外交特権を笠に着て法律やモラルに違反をするようなことはしません。
なお、当然ながら、外交官以外に外交特権は認められません。そのため、その国の法律を破れば逮捕や投獄をされたり、刑事・民事・行政裁判にかけられたりします。そして、外交官の任務が自国民の生命と財産の保護を担うことであったとしても、その国の法律を犯して逮捕された自国民のために、自国の法律を適用するように任国政府に求めることはできません。
ところで、冒頭で2021年11月現在、「日本が承認している国」である195カ国に「日本の大使館」が設けられていることを紹介しましたが、1990代と比較すると、4割以上の増加となっています。その背景には、大国を意識した外交政策や、日本の発信力強化する狙いなどがあるといわれています。
しかしながら、大使館を新設するには億単位の予算がかかるなど、少なくない負担が課されていることも事実です。そうである以上、国民の一人ひとりが大使館の存在意義を正しく理解し支援することによって、国益を守りつつより安定した国際関係を築くための大切な拠点として、よりよい活用がなされていくように思えます。
2021年11月現在、「日本が承認している国」である195カ国には、「日本の大使館」が設けられています(ただし、日本の大使館実館(実際の事務所)が存在する国:153カ国。第三国に存在する日本の大使館が兼轄している国:42カ国)。
では、大使館とはいったいどんな組織で、具体的に何をしているのでしょうか?
大使館は「国の代表」として外交を担う機関
大使館とは、「特命全権大使が駐在国において公務執行する在外公館」です。そして、外交の拠点となるため、基本的にはその国の首都に置かれます。大使館の最重要任務は、国の代表として駐在国(任国)との外交ルールを定めることといえます。そのため、駐在国の政府との交渉や連絡を担当し、相手国の政治や経済をはじめとした多岐にわたる情報を収集・分析し、自国への報告を行っています。
次なる重要な任務は、自国と駐在国の間の貿易・投資・文化交流など良好に保ちつつ活性化するために、企業や個人をうながしています。そこで、自国の企業や個人が駐在国の企業や個人と国際的な交渉をする際にサポートをしたり、駐在国の国民に自国の理解を深めてもらうための広報活動を行ったりしています。
一方、大使館のトップである特命全権大使(大使)は、駐在国で唯一、自国の代表として政府の名で発言し、約束する権限をもっています。また、外交使節の最上級の階級であり、常駐外交使節団の長として、駐在国との外交交渉を行うとともに、在留邦人の保護・監督などに当たります。
大使館は在留邦人の生命と財産の保護も担う
他方、特命全権大使(大使)の役目でも触れたとおり、在留邦人の生命と財産の保護も、大使館の重要な任務となっています。パスポート紛失時の再発行手続きや「帰国のための渡航書」の発給、ケガや病気の際の医療機関情報の提供、盗難や紛失時の現地警察への届出の助言、さらには以上のようなトラブルの際に日本の家族との連絡をサポートするなど、“在留邦人の生命と財産の保護”の観点にたち援護してくれます。ただし、お金にかかわる手続きはできません。
なお、在留邦人の生命と財産の保護は重要な任務であるものの、“在留中の個人的な困り事のサポート”は、大使館のメインの仕事とはいえません。大使館という特殊かつ国際的にも重要な組織には、他国との外交にできるだけ集中してもらった方が、結局のところ自国民としての利益もより大きくなるといえます。
個人の困り事の解決やサポートはあくまでも緊急時の手段と心得て、海外に行く際には事前から備えて現地ではしっかりと自衛することが、在留邦人一人ひとりに求められています。
もちろん、在留中の個人的“ではない”困り事ともいえるような国際的な問題や紛争等に遭遇した際は、その限りではありません。
大使館がもつ「外交特権」とは?
さて、大使館を「在外公館」を前述しました。「在外公館」とは、「外国にあって外交任務を行う政府の出先機関」を指し、日本の場合は大使館・総領事館・政府代表部があり、それぞれに異なる機能を備えています。そして、大使館を含む在外公館には、「外交特権」という外交上の特別の権利が与えられています。
【在外公館(大使館を含む)の「外交特権」】
「公館の不可侵権」:大使や総領事の許可なく在外公館の敷地や建物に入ることはできない。
「国旗・国章の掲揚の権利」:在外公館に自国の国旗や国章などを掲げることができる。
「課税の免除」:在外公館には税金が課されない。
「公文書の不可侵権」:外国の役人や警察は公文書の捜索・差し押さえ・閲覧ができない。
「通信の不可侵権」:外国の役人や警察が開けてはいけない「外交封印袋」で文書類を送ることが認められている。
また、外交官に認められた外交特権には、「身体の不可侵権」(逮捕等で身体を拘束されることがない)、「裁判権の免除」(刑事・民事・行政裁判にかけられることがない)、「居住等の不可侵権」(外交官の家に許可なく立ち入ることはできない)などがあります。
ただし、外交特権とは、一般的な“特権”(いわゆる、特定の身分や地位の人がもつ他に優越した権利)とは違います。そのため、大使館で働く大使を含む外交官も、任国の法律を尊重・遵守することが大原則であることはいうまでもありません。また、自国の代表として誇り高く任務を全うする外交官は、外交特権を笠に着て法律やモラルに違反をするようなことはしません。
なお、当然ながら、外交官以外に外交特権は認められません。そのため、その国の法律を破れば逮捕や投獄をされたり、刑事・民事・行政裁判にかけられたりします。そして、外交官の任務が自国民の生命と財産の保護を担うことであったとしても、その国の法律を犯して逮捕された自国民のために、自国の法律を適用するように任国政府に求めることはできません。
国民のための大使館をさらに活用する方法
いかがでしょうか。以上のように、大使館は「国の代表」や「国の顔」として、各国に開かれた機関であることがみえてきたのではないでしょうか。ところで、冒頭で2021年11月現在、「日本が承認している国」である195カ国に「日本の大使館」が設けられていることを紹介しましたが、1990代と比較すると、4割以上の増加となっています。その背景には、大国を意識した外交政策や、日本の発信力強化する狙いなどがあるといわれています。
しかしながら、大使館を新設するには億単位の予算がかかるなど、少なくない負担が課されていることも事実です。そうである以上、国民の一人ひとりが大使館の存在意義を正しく理解し支援することによって、国益を守りつつより安定した国際関係を築くための大切な拠点として、よりよい活用がなされていくように思えます。
<参考文献・参考サイト>
・『よくわかる大使館』(河東哲夫監修、PHP研究所)
・「大使館」『デジタル大辞泉』(小学館)
・「大使館」『イミダス2018』(イミダス編、集英社)
・「在外公館」『デジタル大辞泉』(小学館)
・「日本の大使館153カ国に 30年で4割増」『日本経済新聞』(2021年5月26日)
・世界と日本のデータを見る(世界の国の数、国連加盟国数、日本の大使館数など)- Ministry of Foreign Affairs of Japan
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/world.html
・在外公館|外務省 - Ministry of Foreign Affairs of Japan
https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/zaigai/index.html
・J’sNAVI NEO│SOS!なときに、頼りになる!日本大使館について知りたい!
https://www.jsnavineo.com/column/detail59/
・『よくわかる大使館』(河東哲夫監修、PHP研究所)
・「大使館」『デジタル大辞泉』(小学館)
・「大使館」『イミダス2018』(イミダス編、集英社)
・「在外公館」『デジタル大辞泉』(小学館)
・「日本の大使館153カ国に 30年で4割増」『日本経済新聞』(2021年5月26日)
・世界と日本のデータを見る(世界の国の数、国連加盟国数、日本の大使館数など)- Ministry of Foreign Affairs of Japan
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/world.html
・在外公館|外務省 - Ministry of Foreign Affairs of Japan
https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/zaigai/index.html
・J’sNAVI NEO│SOS!なときに、頼りになる!日本大使館について知りたい!
https://www.jsnavineo.com/column/detail59/
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