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DATE/ 2015.07.31

「三代目」がハマる恐怖の「ワナ」とは?

 あなたがもし何かの「三代目」だったらこの記事は読んでおいた方がいい。

 「売り家と唐様(からよう)で書く三代目」という江戸時代の川柳をご存知だろうか?

 初代が苦労をして財産を残したとしても、三代目にもなると没落してしまい、家を売りに出すような事態になってしまう。その売り家の看板の文字は、中国風のしゃれた文字で書かれている。なぜかといえば商売を忘れて、遊びにふけりいらぬ教養を身につけていたから…こんな皮肉が込められている川柳だ。

 初代が成功をおさめ財産を残したとする。この場合、二代目で急速に没落するということはあまりなく、それを継承して発展させるか、あるいは現状維持となるケースが多いそうだ。しかしながら三代目になると、遊びに熱中して没落してしまうケースが多いという。これは、商売に限ったことではなく、物事を継承することの難しさを説いているのだろう。

 確かに歴史を振り返えってみると、三代目の失敗事例は数多く存在する。逆に、三代目がさらに継承されたものを飛躍させ、発展させたケースもある。うまくいった例であれば、3代将軍の徳川家光などが挙げられるだろう。失敗事例はここでは書かないが、数えきれないほどある。長期の繁栄のための鍵を握るのが三代目なのだ。

 三代目が成功するには、過去から授かったものを受け継ぐことになる幸運に加えて、本人の努力が必要なのは当然だが、おちいりがちな「ある罠」をクリアする必要がある。

 こういうことだ。

 三代目というと二代目以上に、屈折感のような感情を持つ傾向がある。偉大なる祖父や父、創業者あるいはその継承者とは違ったことをしたいという思いが強くなる。また、自分の個性の影響力でその集団を再形成したくなる。こうなると一代目や二代目から引き継がれている古株や幹部を煙たく思うことになり、遠ざけようとするものらしい。それが周囲からの反感を呼ぶことになる。こうして悪循環の罠にはまる。

 このような事態におちいりながらも、クリアできる能力や資質を持っている人はよいのだが、かなりのところは失敗してしまうケースが多いようだ。それがゆえに、夢破れて遊びに走ってしまい冒頭の川柳のようなことになってしまうのだろう。

 ここまで読んでいただくと、歴史上の人物、世界の国々、企業、地域の活動、学校のサークルなど、思い当たる事例が思い浮かぶのではないだろうか?

 もしあなたが「3代目」であれば、この「罠」にハマらないようにうまく回避していただきたい。

※この記事は10MTVオピニオンのの講義『将軍家光のリーダーシップ』(山内昌之)を再構成したものです。
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授