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DATE/ 2022.03.07

スタンフォード大学教授が教える「最高の睡眠」

 日本人の睡眠時間は「6時間以上~7時間未満」という人が最も多く、全体の32.8パーセント。これは、厚生労働省による健康実態調査(令和2年度)によるものですが、平均すると6時間半を切っているともいわれ、イギリスやフランスと比較すると、1時間ほども短いそうです。また、「なかなか寝付けない」「朝の目覚めがすっきりしない」と睡眠の不満や不安を口にする人の割合も多いのだとか。

 そこで今回は、『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)『スタンフォード大学教授が教える熟睡の習慣』(PHP研究所)の著者でもあるスタンフォード大学医学部精神科教授の西野精治氏に、最高の睡眠である「健康な睡眠」についてお話をうかがいました。

良い睡眠、健康な睡眠とはどんなものか

 「健康な睡眠」とはどのようなものでしょうか。簡単に定義すると、ノンレム睡眠とレム睡眠を交互に繰り返し、明け方にレム睡眠を迎えて脳が自然と起きる準備をする、このようなリズムで行われるのが健康な良質の睡眠ということです。ベッドに入ってから90分ほど、夢も見ないほど深く眠って(ノンレム睡眠)から、次に短くて浅いレム睡眠が来る、これを4~5回繰り返して朝を迎えるのです。

 睡眠時間をたっぷりとりさえすればいいかというと、そうでもなく、要は睡眠の質が大事。たとえ8時間以上睡眠時間がとれたとしても、夜中に何度も目が覚めたり、朝起きて「よく寝て疲れがとれた」という実感がなかったりすれば、それは良い睡眠とはいえません。

 また、週末の寝だめで常日頃の睡眠不足を解消しようとするのもよくないそうです。慢性的な睡眠不足は「睡眠負債」として積もり積もっていくので、寝だめをして一気に借金返済のようにすっきりするものではありません。やはり、一年を通して良いリズムで睡眠をとることがベストなのです。

「ポジティブ・ルーティン」のすすめ

 そこで、生活習慣としての「健康な睡眠」を手にするために、西野氏は自分によく合った「ポジティブ・ルーティン」をいくつか用意することを勧めてくれました。

 例えば一般的には、入浴は就寝の2時間くらい前を目安に、ゆったりとお湯に浸かるのがよいとされていますが、時間がなければ、長湯をせずシャワーで体を温めるという方法もあります。食事も同様に、入眠の2~3時間前にとるのがよいとされていますが、仕事などで夕食の時間が遅くなった日の食事は、脂っこいものを避け、あっさりしたメニューで調整をします。また、一日の終わりに寝酒を楽しみたいという方もいるでしょう。ならば、自分の適量を見極めて少量のお酒でリラックスすればよい、と西野氏は言います。

 ということで、一般的によいとされる入眠のための習慣の基本は押さえつつ、自分にあったルーティンをみつけていくことがベストなのです。いずれにしても、「こうしないといけない」「こうしてはいけない」といったルーティンにしばられて、余計にストレスを感じてしまうことは避けたいですね。

「最高の睡眠」は朝から始まっている

 ただ、自分にあったルーティンをみつけても、一日の生活のリズム自体が乱れていては元も子もありません。第一に、決まった時間に起きること。前の日の入眠がたまたま遅くなっても、できるだけ起床時間はずらさないようにしましょう。それから、必ず朝食をとり、昼間は仕事をするなり家の用事をするなりして活動性を高めます。その際、散歩など外出をして太陽光を浴びることも大事です。日光を浴びてセロトニンが分泌されれば、これが夜になって睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を促します。そして、就寝時間は起床時間と同様できるだけずらさず、眠りの態勢に入るようにします。

 昼間、適度に体を動かしていれば、寝つきがよくなり、入眠直後の「黄金の90分」つまりノンレムの深い睡眠が得られ、その後に続くレムとノンレムのよいリズムが確保できるのです。

 いかがですか。気持ちのよい朝を迎えるためにも、「最高の睡眠」生活を朝から心掛けたいですね。

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