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DATE/ 2022.03.23

1000万人以上が悩んでいる「天気痛」とは

 天気が悪くなったときに起こる様々な体調不良、通称「天気痛」。愛知医科大学の研究によると、「天気痛」に悩む人は推定1000万人以上いるとも言われています。雨が降ると頭痛になりやすい、めまいがする、などもその一例なのですが、その原因や症状、特徴はどんなものがあるのでしょうか。

症状の1位は頭痛 男女で傾向の差も

 ロート製薬とウェザーニュースが全国1万6000人に向けて行った調査では、「天気痛」を持っている、あるいは持っている気がする、と回答した人は女性だとなんと78%、男性は47%とかなり男女差がありました。症状では51%と過半数の回答者が頭痛を訴え、次いで肩こり・首こり(13.4%)、関節痛(12.8%)でした。頭痛が男女ともに1位ではあったのですがこちらも男女で傾向の差があり、腰痛の自覚は男性が女性の3~4倍でした。「天気痛」というくらいですから、発生するシチュエーションも雨の日が47%、くもりの日が30%。回答者が「天気痛」の要因と考えているのは気圧が78.4%と圧倒的でした。

 特に気圧差が大きくなりやすい台風接近時には、「天気痛」持ちの人の80%以上が不調を感じたことがあるといいます。「天気痛」を持っていない人は13%にとどまっているので大きな差ですね。地域別に見ると台風の影響を受けやすい太平洋側の都道府県の方が、日本海側や北海道に比べて不調を感じる人の割合も多いという結果でした。

自律神経を整えることが大切

 「天気痛ドクター」とも呼ばれる愛知医科大学客員教授の佐藤純さんによると、症状は頭痛やめまいだけでなく、耳鳴り、倦怠感、うつ等もあるということ。要因としては気圧変化や寒暖差があり、内耳と自律神経失調がかかわっているとしています。佐藤さんは日本で初めての専門外来「天気痛・気象病外来」を愛知医科大学に立ち上げ、1万人以上の患者をこれまで診てきました。NHKの番組「サイエンスZERO」に出演した際には対処法として自律神経を整えることを挙げていました。「自律神経が整っていると天気から受ける影響は小さくなります。一般的に言われているように、朝きちんと起きて朝ご飯をしっかり食べるとか、お風呂にきちんと入って温まるとか、早く寝るのが大事です」。「天気痛・気象病外来」ではめまい薬の処方やストレッチのレクチャーもしているそうです。

 多くの人が悩んでいる症状ということもあり、「天気痛予報」というサービスまで登場しています。前述の佐藤さんとウェザーニュースが共同開発したもので、安心から警戒までの4段階で地域ごと、さらに3時間ごとに区切った予報を発表。肌では実感しづらい気圧の変化に着目して天気痛の予測ロジックを組み立てているそうです。

 かつては気圧が原因などとわからず、病気として扱われてこなかった「天気痛」。研究が進んだことで対処法が確立されたり、予報までできるようになっているのは驚きですね。今はまだ気が付いていないだけで、実は因果がはっきりしている症状というのは今後さらに見つかってくるのかもしれません。

<参考サイト>
・【天気痛調査2020】天気痛持ちは全体の6割?天気痛女子は約8割にも - ウェザーニュース
https://weathernews.jp/s/topics/202007/070165/
・気象病外来・天気痛外来(愛知医科大学・東京竹橋クリニック) - 天気痛ドクター 佐藤 純
http://www.tenkitsu-dr.com/
・その体調不良、もしかして「天気痛」…!? 多くの人が知らない“驚き”の原因 - サイエンスZERO - NHK
https://www.nhk.jp/p/zero/ts/XK5VKV7V98/blog/bl/pkOaDjjMay/bp/pQqmnd4LrQ/
・天気痛予報 | ウェザーニュース
https://weathernews.jp/s/pain/
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