テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.09.25

AT車の「N」ギアはいつ使うのか?

 一般的なAT車のギア(シフトレバー)には6種類あります。もっともよく使うのは運転するときの「D(ドライブ)」と駐車するときの「P(パーキング)」やバックする時の「R(リバース)」あたりです。ただし、よく見ると「D」と「R」の間には「N(ニュートラル)」があります。バックするときやバックから前進に切り替える時には、必ずいったん「N」にギアが入ります。では「N」にはどういった役割があり、どういった時に使うことが想定されているのでしょうか。

「N」があるのは安全のため

 「N」は「ニュートラル」の意味。特に機械関係においては「動力から切り離された状態」を意味します。車のギア(シフトレバー)は車内部のトランスミッションを操作して、エンジンの動力をどのように車体に伝えるかを指示するもの。ここで「N」を選ぶということは、エンジンの出力を完全に伝えない状態、つまりどこにもギアが入っていない(歯車が噛み合っていない)状態となります。このときブレーキを使わなければタイヤはただ惰性で転がっています。もちろん駐車する時にはサイドブレーキを引きますが、安全のためにもシフトレバーはかならず「P」を選んでおきます。「P」にしておけばトランスミッションの歯車は固定されます。

 ではなぜ「N」は「D」と「R」の間に存在しているのでしょうか。これは「N」が「D」から「R」に変わる際のクッションの役割をはたしているからです。「D」のときは前進し、「R」では後退することになります。これをクッションなしに行えば、ギアにかなりの負担がかかり、故障リスクが高まります。こういった危険な状況を防ぐために、いったんどこにもギアが噛み合わない状況を作るのが「N」です。

 一方、「N」を意識的に選ぶ場面もあります。これは車が故障してけん引されるときです。「N」は動力から切り離し、タイヤが自由に道路を転がる状態にするので、他の車に引っ張ってもらう際や、車を押して安全なところに移動させる際などにも「N」を選びます。また時折おこる事故に、運転手が急に意識を失って車が暴走するといったものがあります。この時は運転手がアクセルを踏みっぱなしの状態です。想定したくない事態ではありますが、同乗者がギアを倒してニュートラルにすることで被害の拡大を抑えることができます。

渋滞や下り坂で「N」は使わない方がいい

 一方で、渋滞で止まるときにも、「N」に入れてサイドブレーキを引くという人も多いようです。長い渋滞でブレーキを踏み続けるとやはり疲れるので、これでいい場面もありそうです。ただし、前が動き出した時に「N」に入れていたことを忘れてエンジンをふかしてしまうと危険です。このあと慌てて「D」に入れ、車が急発進して事故になる事例が多いようです。さらに、「N」に入れてサイドブレーキをかけた状態だと、ブレーキランプは点灯していません。特に夜間、渋滞の最後尾にいるときなどにこの状態だと追突の危険が高まります。

 また、「N」にしておくと燃費が向上するという話もありますが、そうとも言えないようです。最近のAT車ではニュートラルコントロール技術が導入されているものも多いとのこと。これはギアが「D」であったとしても、アイドリング状態になると内部で自動的にニュートラルにしてくれる機能です。この機能がある車ならば、ギアは「D」のままであとは車に任せた方が、適切な燃費と安全が保証されます。さらに、下り坂では燃費向上のために「N」にするという人もいるようですが、これは一般的なAT車では間違いといえます。

 ギアが「D」であればエンジンブレーキが効きます。この時にはエンジンそのものの出力がコントロールされているので燃料はあまり消費しません。しかしこのとき「N」にしているとエンジンはアイドリング状態となり、その分の燃焼を消費しています。さらにギアが噛み合っていない状態ではエンジンブレーキが効かず、減速をフットブレーキに頼ることになりますが、これはたいへん危険です。

 減速をフットブレーキのみに頼ると、ブレーキパッドが発熱して効きが悪くなる「フェード現象」が起きます。また、ブレーキの力を伝達する液体が加熱されて気泡ができることで圧力が伝わらなくなる「ベーパーロック現象」が起きます。これが起きるとブレーキで制御できなくなります。ということで、AT車で「N」を使うのは、あくまで「D」と「R」を切り替えるとき、もしくは故障がおきて牽引されるときや手押しで移動させるとき、と考えておきましょう。

<参考サイト>
シフトレバーとは。種類やbの意味。シフトロックの解除方法|ZURICH
https://www.zurich.co.jp/car/useful/guide/cc-whatis-shiftlever-type/
信号待ちで「P」や「N」に入れちゃダメ!? やりがち操作方法の間違いとは|くるまのニュース
https://kuruma-news.jp/post/232823
意外と知らない!?AT車のシフトにある「N」ってなんであるの?|トヨタユナイテッド静岡
https://toyota-unitedshizuoka.co.jp/shizuokatoyopet_blog/numazu-baipasu-midorigaoka/11983
渋滞で停止した時、Nレンジに入れる? それともDレンジのまま?【みんなの声】|MOTA
https://autoc-one.jp/special/5005115/
【意外と知らない】オートマの「N」ニュートラルは何に使う?|WEB CARTOP
https://www.webcartop.jp/2016/06/44437/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本経済の行き詰まりをもたらした2つの大きな理由とは

日本経済の行き詰まりをもたらした2つの大きな理由とは

日本企業の弱点と人材不足の克服へ(1)膠着する日本経済の深層

日本経済はこの20~30年行き詰まりの状態にある。理由としては、会社の多角化によって生まれた各事業部の規模が小さすぎることが挙げられる。また、「技術があればいい」というマーケット軽視の姿勢も理由の一つだ。日本と業態...
収録日:2020/10/28
追加日:2020/12/27
西山圭太
東京大学未来ビジョン研究センター客員教授
2

ヒトラーに影響を与えた地政学の父・ラッツェル「生存圏」

ヒトラーに影響を与えた地政学の父・ラッツェル「生存圏」

地政学入門 歴史と理論編(5)地政学理論の先駆者たち

地政学の理論は、歴史的な事象の読み解きを可能にするだけでなく、同時代的な軍事的動向にも影響を与えていた。今回はその先駆的な提唱者として、アルフレッド・マハン、フリードリッヒ・ラッツェル、ハルフォード・マッキンダ...
収録日:2024/03/27
追加日:2024/05/28
小原雅博
東京大学名誉教授
3

人間だけが大人になっても「学び」を持続できる

人間だけが大人になっても「学び」を持続できる

「学びたい」心のための環境づくり

人生を豊かに、充実したものにするために、必要不可欠なスパイスとなるのが「好奇心」であることを否定する人はいないだろう。しかし、この「好奇心」は、進化生物学見地からすると、どのように考えられるのだろうか。行動生態...
収録日:2018/02/14
追加日:2018/05/01
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長
4

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え

2016年ノーベル医学・生理学賞の受賞テーマである「オートファジー」とは何か。私たちの体は無数の細胞でできているが、それが日々、どのようなプロセスで新鮮な状態を保っているかを知る機会は少ない。今シリーズでは、細胞が...
収録日:2023/12/15
追加日:2024/03/17
水島昇
東京大学 大学院医学系研究科・医学部 教授
5

有漏の善根では駄目…「商人日用」に学ぶ商売の心得

有漏の善根では駄目…「商人日用」に学ぶ商売の心得

石田梅岩の心学に学ぶ(8)鈴木正三『万民徳用』を読む(下)

江戸初期の商人は利を求めるのに忙しく、信心と離れた存在だと自らを卑下していたようだ。鈴木正三は『万民徳用』の「商人日用」において、彼らに対し、利益を追求するには「身命を賭して、天道に抛(なげうっ)て、一筋に正直...
収録日:2022/06/28
追加日:2024/05/27
田口佳史
東洋思想研究家