テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.10.09

世界最強の「傭兵組織」3選

 傭兵とは国の軍隊とは異なり、報酬をもらって戦闘行為を行う兵隊のことです。この傭兵部隊を運営するのは民間軍事会社(Private Military Company=PMC)。日本で一般的な生活をしているとあまりリアリティがないかもしれませんが、世界中にいくつもの民間軍事会社があります。所属しているのは元軍人や元警察官など、その道の経験を重ねたスペシャリストです。また民間軍事会社は戦闘に参加するだけではなく、拠点防衛や要人警護、警備、軍事訓練・教育、兵站(軍事作戦の支援)といった多方面の軍事サービスを行ないます。もちろん顧客も国家に限らず、企業や個人が顧客となることもあるようです。

ダインコープ・インターナショナル(アメリカ)

 いくつか世界的に有名な民間軍事会社を見てみましょう。現代の形での民間軍事会社の元祖と言われているのが、1946年に退役飛行士が設立したアメリカの「ダインコープ・インターナショナル」です。米軍の航空作戦支援を請け負う「カリフォルニア・イースタン・エアウェイズ」として誕生し、朝鮮戦争やベトナム戦争に参加したのち1987年に現会社名となります。

 その後も主にアメリカ軍と共に、イラク、アフガニスタン、ペルー、コロンビア、ソマリア、コソボ、クウェート、ボリビア、ハイチなどで活動しています。これまでにも96%はアメリカ政府から請け負った仕事を担っています。ただし、ボスニアでは未成年への性的虐待などの人権侵害があったという批判もあるようです。

アカデミ(アメリカ)

 続いて同じくアメリカの「アカデミ」。歴史的に古くはありませんが、かなり知名度も高く有力な民間軍事会社です。1997年にアメリカ海軍特殊部隊SEALsを退役したエリック・プリンスという人物により設立され、もともとは「ブラックウォーター」という名前でした。のちに改名して「Xe Services」となり、買収を経て現在の名前「アカデミ」となっています。

 この会社はアメリカ国内に広大な訓練施設を所持し、さまざまな訓練を行なっている他、CIAからテロリストの暗殺を請け負ったり、ドローンを駆使して戦ったりするなど多方面で活動しています。2022年のウクライナでも活動しているようです。ただし、まだ社名が「ブラックウォーター」だった頃、イラクにおいて民間人を殺傷するという不祥事を起こしています。このことでイラク政府やアメリカ政府の信頼を失い、経営陣の退陣と社名の刷新が行われたようです。

ガルダ・ワールド(カナダ)

 カナダの「ガルダ・ワールド」は、他の民間軍事会社を買収しながら規模を拡大してきた会社です。2022年の段階で従業員数は12万人を超えているようです。傘下の民間軍事会社が世界中のさまざまな地域で活動しています。特に2015年にはイギリスの有力な民間軍事会社「イージス・ディフェンス・サービス」を買収しています。この「イージス・ディフェンス・サービス」は2005年に民間人を銃撃する不祥事を起こしたことが買収されるきっかけとなったようです。
 またこの「イージス・ディフェンス・サービス」は2016年にはイラクでの米軍施設の警備を委託されていますが、当時経営合理化の一環としてアフリカから多くの傭兵を採用しました。このときシエラレオネから採用した兵士の中に元少年兵がいたことは、大きな問題となりました。

傭兵の平均給与は?

 他にも世界各国にさまざまな民間軍事会社が存在しています。ではこういった組織で働く傭兵の収入はどうなっているのでしょうか。命をかけているわけなので、当然高額になると思われますが、実際はそうでもないかもしれません。この点についてダ・ヴィンチの記事では、実際に傭兵としてアフガニスタンへ渡った高部正樹さんが著した『日本人傭兵の危険でおかしい戦場暮らし』が紹介されています。これによると、アフガニスタンでもらっていた給料は毎月8000円とのこと。驚きの安さですが、内戦中の国では使い道もなかったとのことです。

 傭兵は戦う場所やスキル次第で報酬が変わります。さらに途上国の傭兵などは状況によっては無給状態となることも珍しくないようです。一方、フランス軍の外人部隊は比較的待遇が良いという話もあります。また民間軍事会社における傭兵の平均年収は、500万円から1000万円とする情報もあります。こうみてみるとハイリスクの割には、日本国内の企業における給与とそこまで大きくは変わらないのかもしれません。意外と安いといっていいのではないでしょうか。

<参考サイト>
戦闘技術に長けた選りすぐりの傭兵を派遣する、世界的に有名な軍事企業10社+1社|カラパイア
https://karapaia.com/archives/52282959.html
「傭兵の給料はどれくらい?」「戦場では何を食べている?」──傭兵経験者が語るリアルな傭兵ライフとは!?│ダ・ヴィンチWEB
https://ddnavi.com/review/720794/a/
黒井文太郎 ウクライナでも暗躍する民間軍事会社の実態|中央公論.jp
https://chuokoron.jp/politics/121105.html
UK firm 'employed former child soldiers' as mercenaries in Iraq|The Guardian
https://www.theguardian.com/global-development/2016/apr/17/uk-firm-employed-former-child-soldiers-as-mercenaries-in-iraq
傭兵の給与・年収は?死と隣り合わせのミッションをした対価である報酬額を徹底解説|JOBZUKAN
https://job-zukan.jp/mercenary/1613/
傭兵の給料・年収|キャリアガーデン
https://careergarden.jp/youhei/salary/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと

戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
2

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gとローカル5G(1)5G推進の背景

第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
中尾彰宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
3

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える

政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
4

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着

2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~

近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21
阿久津聡
一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授