テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.10.23

巡回パトカーは何をしているのか

 ときおり街中や住宅街をパトカーや、警官が乗った自転車がゆっくり通る姿を目にします。特に急いで事件現場に向かっているという様子ではないことも多いです。また遅い時間に帰宅する途中、警察に声をかけられたという人もいるでしょう。警察官は何をしているのかといえば、「警ら(パトロール)」をしています。あの白黒ツートンカラーの警察車両「パトカー(パトロールカー)」の正式名称は「無線警ら車」です。つまり、「警ら(パトロール)」は警察の重要な仕事の一つ。では「警ら(パトロール)」にはどんな意味があるのでしょうか。

地域に密着して犯罪を未然に防ぐ

 交番に勤務している警察官の仕事は多岐に渡りますが、基本的には「市民の安全を守り、犯罪を未然に防ぐこと」と言えるでしょう。もちろん、起こってしまった事故の対応をしたり、緊急通報で連絡が入った事件現場に急行して犯人を検挙したりもします。しかし、地域に密着して事件や事故を未然に防ぐことも、たいへん重要視されています。この地域の安全確保のために頻繁に行われるのが「警ら(パトロール)」です。防犯には警察が「そこにいる」、「気にかけている」ということがとても大きな意味を持ちます。私たちが安心して生活できる背景には、こういった警察の防犯に対する行動があります。

 警ら(パトロール)では、空き家の多い地域を重点的に回って空き巣が起きないようにしたり、交通事故の発生しやすい場所などで交通整理をしたりすることもあるようです。また、犯罪の予防検挙のために、警察官が不審と感じた通行人に対する職務質問も行われます。ちなみに警察官が怪しいと感じるポイントは、時間帯や場所、服装などに加えてすれ違った時の視線や態度、しぐさといったものがあるようです。また特に夜間は、少年が犯罪に巻き込まれたり、飲酒絡みの事件や事故が発生したりする危険性が高まることから、重点的にパトロールが行われるようです。

非番は厳密には休みではない

 交番は24時間いつでも対応してもらえることから大変心強いですが、警察官の勤務体制はどうなっているのでしょうか。交番勤務員は「1勤2休制」です。途中で合計8時間の休憩や仮眠を挟みながら、およそ24時間勤務し、勤務明けから24時間が「非番」となり、翌日が休日となる働き方です。また、この時の「非番」の意味は「体を休めて非常時に備えること」とのこと。厳密に言うと公的な休日ではありません。

 実質的に休みであることが多い「非番」ですが、「待機非番」と「通常非番」があります。「待機非番」は「自宅待機」であって、何か大きな事件や事故があった場合、出動しなければならないこともあります。また、「通常非番」であっても出動人数が待機非番者だけでは足りなくなった場合には呼び出されることもあるそうです。これだと24時間働いた後でも、完全にリラックスすることは出来なさそうです。状況によっては過酷な労働となることもあることから、警察官の労働環境については見直しの議論もあります。

警察官の1日スケジュール例

 では交番で働いている警察官、個人個人はどのようなスケジュールで動いているのでしょうか。以下はいくつかのウェブサイト上で紹介されていた交番に勤務する警察官の一日の動きの一例をダイジェストでまとめたものです。

8:45 本署に出勤
交番勤務の警察官も所轄の警察署(本署)に出勤し、朝礼、伝達、装備点検が行われます。
10:00 交番に移動
勤務する交番に移動します。こののち、交番での対人対応や電話相談を受けたりします。
12:00 食事休憩
昼食休憩1時間。事件や事故が発生すればその対応が優先です。
13:00 巡回連絡など
担当地域を巡回します。名前や連絡先を確認したり、事業所を訪問したりして防犯活動や災害時の安否確認に備える名簿を作ります。またそれぞれの要望を聞いたり、違法駐車や違法駐輪の取り締まりを行ったりします。
16:00 書類作成
さまざまな対応に関する報告書などの書類を作成します。
17:00 立番(たちばん)
交番の前に立ったり、交通量の多いところで「街頭監視」を行ったりといった犯罪抑止活動を行います。
22:00 夜間パトロール
不審者への職務質問や飲酒運転の取り締まりを行います。
2:30~6:30 仮眠
交番勤務員は緊急事態がなければ、交代で4時間程度の仮眠をとります。
7:30 立番
通勤・通学の見守り。
10:00 勤務交代
警察署(本署)に戻り、報告書などの書類を提出して勤務を終えます。

 基本的に上下関係にたいへん厳しい世界なので、新人は掃除などさまざまな雑用が課されるようです。また、事件や事故の発生状況によっては、食事や仮眠、休憩時間は大きく変動するとのこと。かなりハードに動いていることがわかります。また、警察官はそこにいることをアピールするだけで犯罪抑止効果があるので、警らと同様、交番前に立つ立番や街頭監視も大事な仕事です。

<参考サイト>
街中で見かける「パトカー」実際何しているの? 意外と知らない!? “警察官のパトロール” の全容とは|くるまのニュース
https://kuruma-news.jp/post/555978
警察官による日常のパトロール|パブリネット
https://www.homemate-research-police.com/useful/13004_facil_107/
Q5 夜遅く近所を一人で散歩していたら、警察官に質問されたのはなぜですか?│大阪府警察
https://www.police.pref.osaka.lg.jp/sodan/faq/5/5/3343.html
警察官の1日のスケジュール|スタディサプリ
https://shingakunet.com/bunnya/w0001/x0003/ichinichi/
交番勤務員の一日|京都府警察
https://www.pref.kyoto.jp/fukei/site/tiiki_k/itiniti/02keira1.html
警察官の勤務時間・休日・仕事は激務?|キャリアガーデン
https://careergarden.jp/keisatsukan/kinmujikan/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,200本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

映画『君たちはどう生きるか』とつながる山上憶良の答え

映画『君たちはどう生きるか』とつながる山上憶良の答え

山上憶良「沈痾自哀文」と東洋的死生観(3)「沈痾自哀文」現代語訳を読む

宮崎駿監督の映画『君たちはどう生きるか』の一つの大きなテーマは、自分が恵まれていることにどう気づくかではないかと上野氏はいう。これは戦後日本のあり方、目指すべきものへの痛烈な問いかけではないだろうか。このことに...
収録日:2024/04/02
追加日:2024/07/26
上野誠
國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)
2

集中のスイッチを入れる方法は意識からと身体からの2通り

集中のスイッチを入れる方法は意識からと身体からの2通り

本番に向けた「心と身体の整え方」(1)ディテールにこだわる

アスリートたちは本番で力を発揮するために、「準備」と「本番」の2つのフェーズに分けて物事を考えている。「準備」段階ですべきは、本番の状況を細部にわたってシミュレーションしておくこと。そして、本番で「意識が散漫にな...
収録日:2020/09/16
追加日:2021/01/19
為末大
Deportare Partners代表
3

こりごり?アイ・ラブ・トランプ?…トランプ陣営の実状は

こりごり?アイ・ラブ・トランプ?…トランプ陣営の実状は

「同盟の真髄」と日米関係の行方(7)トランプ氏の評価とその実像

「こりごりだ」「アイ・ラブ・トランプ」…いったいどちらが本当のトランプ評なのか。前大統領のトランプ氏は、過激な発言で物議を醸すことも多かったが、その人柄はどのようなものだったのだろうか。2024年11月アメリカ大統領選...
収録日:2024/04/23
追加日:2024/07/24
杉山晋輔
元日本国駐アメリカ合衆国特命全権大使
4

ポツダム宣言受諾が遅れた理由と昭和天皇の「御聖断」

ポツダム宣言受諾が遅れた理由と昭和天皇の「御聖断」

敗戦から日本再生へ~大戦と復興の現代史(10)ポツダム宣言受諾への道のり

公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏による島田塾特別講演シリーズ。紆余曲折の末、ついに発表されたポツダム宣言とその正式受諾に至るまでの道のりを知る。陸海軍の猛反発にあいながら本土決戦前の降伏を実現したポツ...
収録日:2016/07/08
追加日:2017/08/02
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か

国際政治を地理の観点からひも解く「地政学」という学問。近年、耳にすることも多くなった分野だが、どのような手法や意義を持った学問であるかを学ぶ機会は少ない。その基礎から学ぶことのできる今回のシリーズ。まず第1話では...
収録日:2024/03/27
追加日:2024/04/30
小原雅博
東京大学名誉教授