テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.11.01

なぜペットボトル入りの牛乳はないのか?

 私たちの生活に身近な存在であるペットボトル。お茶やジュース、ミネラルウォーターや清涼飲料水を入れる印象が強いですが、近年では日本酒やワイン、ビールなどのお酒をペットボトルに入れて販売しているケースもあり、その用途は広がりを見せています。しかし、飲み物のなかでもペットボトル入りの牛乳は見かけませんよね。瓶や紙パックに詰められることが一般的な牛乳、なぜペットボトル入りがないのでしょうか?

2007年までは規制されていた

 実は2007年まで、牛乳をペットボトルに入れて販売すること自体、法律で禁止されていました。というのも、ペットボトルは一度口をつけたあとでも常温で持ち歩くことができてしまうため、栄養価が高く冷蔵保存しないと雑菌が増殖してしまう牛乳を入れるのは適していないと判断されていたのです。しかし、2007年に乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の改正で規制が緩和され、容量やパッケージへの表示など一定の条件をクリアすればペットボトルに牛乳を入れることが可能になりました。

 実際にペットボトル入りの牛乳の販売はされているのですが、10年以上経った現在もペットボトル入り牛乳を目にすることはほぼありません。せっかく2007年に緩和されたにもかかわらず、いまだに瓶や紙パックが主流であることは変わっていないのです。

なぜペットボトル入り牛乳が普及しないのか?

 大きな理由としてコスト面の問題があります。通常のペットボトルに牛乳を入れられれば良いのですが、飲みきりサイズ(350ml以下)か口をつけて飲むことのないとされる量(720ml以上)という容量の制限や、空気を遮断しなければならないという品質の問題から牛乳用のペットボトルを新たに作る必要があります。そのために莫大な費用がかかってしまうと、牛乳の値段に上乗せするために価格が高騰してしまうのです。消費者の牛乳離れにもつながりかねないため、このことが障壁になっていると考えられます。

 また、牛乳は保存方法に気を配る必要があることはすでに上述していますが、メーカー側がどれだけ注意を喚起しても、常温の中で持ち歩いてしまう人が出てしまう可能性をなくすことはできません。その結果で健康被害が出てしまうリスクを恐れてペットボトル入り牛乳の販売に踏み出せないという事情もあるでしょう。

 その他にも「牛乳なら紙パック、または瓶、ペットボトルは違和感がある」という消費者の意識があることも要因のひとつといえるかもしれません。もし今後、ペットボトル入り牛乳を飲む機会があればパッケージに書かれた注意事項をよく読んで、安全に飲むようにしてください。

<参考サイト>
・ペットボトル入りの牛乳は無いのでしょうか? | 乳と乳製品のQ&A | 一般社団法人日本乳業協会
https://nyukyou.jp/dairyqa/2107_081_264/
・なぜ牛乳はペットボトルで売られない?雑菌繁殖しやすく危険、専用ボトル開発で事業圧迫
https://biz-journal.jp/2015/04/post_9712.html
・なぜ牛乳はペットボトルで売られないのか? - ニッポン放送 NEWS ONLINE
https://news.1242.com/article/162172
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「見せかけの相関」か否か…コロナ禍の補助金と病院の関係

「見せかけの相関」か否か…コロナ禍の補助金と病院の関係

会計検査から見えてくる日本政治の実態(2)病床確保と補助金の現実

コロナ禍において一つの大きな課題となっていたのが、感染者のための病床確保だ。そのための補助金がコロナ患者の受け入れ病院に支給されていたが、はたしてその額や運用は適正だったのか。事後的な分析で明らかになるその実態...
収録日:2025/04/14
追加日:2025/07/18
田中弥生
東京大学客員教授
2

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教

ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
橋爪大三郎
社会学者
3

胆のう結石、胆のうポリープ…胆のうの仕組みと治療の実際

胆のう結石、胆のうポリープ…胆のうの仕組みと治療の実際

胆のうの病気~続・がんと治療の基礎知識(1)胆のうの役割と胆石治療

消化にとって重要な臓器「胆のう」。この胆のうにはどのような仕組みがあり、どのような病気になる可能性があるのだろうか。その機能、役割についてあまり知る機会のない胆のう。「サイレントストーン」とも呼ばれる、見つけづ...
収録日:2024/07/19
追加日:2025/07/14
糸井隆夫
東京医科大学病院 消化器内科 主任教授
4

3300万票も獲得した民主党政権がなぜ失敗?…その理由

3300万票も獲得した民主党政権がなぜ失敗?…その理由

政治学講座~選挙をどう見るべきか(5)政権交代と民主党

民主党は、2009年の衆議院選挙で過半数の議席を獲得し、政権交代に成功した。しかし、その後の政権運営に失敗してしまった。その理由についてはいまだ十分な反省が行われていないという。ではなぜ民主党は失敗してしまったのか...
収録日:2019/08/23
追加日:2020/02/12
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
5

印象派を世に広めたモネ《印象、日の出》、当時の評価額は

印象派を世に広めたモネ《印象、日の出》、当時の評価額は

作風と評論からみた印象派の画期性と発展(2)モネ《印象、日の出》の価値

第1回印象派展で話題となっていたセザンヌ。そのセザンヌと双璧をなすインパクトを与えた作品があった。それがモネの《印象、日の出》である。印象派の発展において重要な役割を果たした本作品をめぐる歴史的議論や当時の市況を...
収録日:2023/12/28
追加日:2025/07/17
安井裕雄
三菱一号館美術館 上席学芸員