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DATE/ 2022.11.29

働き盛り世代は要注意「スマホ認知症」とは

 「スマホ認知症」という言葉をご存じですか? 今や生活の必需品として手放せなくなったスマホですが、一方ではスマホの使いすぎが私たちの心身に影響を及ぼすこともあり社会問題にもなっています。日常的にスマホを長時間使用していて、物忘れが増えた、集中力が低下したという症状が出ている場合には、スマホ認知症になっている恐れがあります。

スマホ認知症とは?

 スマホ認知症は、認知症とは異なりスマホの使いすぎによって引き起こされるものです。おもな症状が、物事を実行する能力やコミュニケーション能力、企画力・想像力の低下、生活意欲の減退、心身の不調など、認知症とよく似ているため、スマホ認知症という名前がつけられているのです。

 しかし、発症のメカニズムは大きく異なっています。認知症は、脳の障害や病気、加齢などで脳の神経細胞が壊れることで発症し、多くは高齢者に見られる症状です。一方、スマホ認知症はスマホの使いすぎによる脳疲労によって引き起こされるもので、若年層から高齢層まで幅広い年代に見られるものになります。

 また、スマホ認知症は一時的なものがほとんどなので、多くの場合は症状を改善することができます。ただし、若い頃からスマホ認知症の状態が続くと、高齢になってから認知症を発症しやすくなるといわれているので、決して放置しないことが大切です。

発症する原因

 スマホを使いすぎるとなぜスマホ認知症になっていくのか、そのメカニズムを説明します。そもそも、スマホ認知症のおもな原因は「脳疲労」です。スマホが手元にあることで、私たちは簡単に情報収集を行うことができます。ニュースサイトやSNSなど、スマホから膨大な量の情報が発信されていて、私たちはその情報をものすごい速さで追っていますが、これが私たちの脳に大きな負担をかけてしまっているのです。

 私たちの脳は情報が入ってくると、インプット→整理→アウトプット、という一連の流れを行っています。適切な量であればこの過程を問題なく行えるのですが、情報が過剰になると脳での処理が追いつかなくなって脳が疲れてしまいます。そうなると、情報を正しくインプットできなくなったり、必要なときに情報をアウトプットできなくなってしまうのです。これが脳の疲労が蓄積し、スマホ認知症が起こってしまうメカニズムだと考えられています。

スマホ認知症にならないためには

 スマホ認知症にならないためには、脳疲労の状態を回避することが大切です。そのためにはスマホと適切な距離を置くために次のポイントを意識するようにしましょう。

 ひとつめは「スマホを使う時間を決める」こと。スマホを肌身離さずにトイレやお風呂にまでスマホを持ち込んでしまう人もいますが、スマホを使う時間と使わない時間の境目が曖昧になっているとそれだけ脳疲労が蓄積されやすい状況になってしまいます。1日の中でスマホと離れて脳を休める時間をつくるなど、スマホを使う時間を決めるようにしましょう。

 ふたつめは「すぐスマホに頼らない」こと。何かわからないことがあったり、ちょっと忘れたことがあるとすぐスマホで調べてしまう人が多いと思いますが、この習慣は脳が考える機会を奪ってしまい脳の機能の低下につながってしまいます。まずは自分の頭で考えるくせをつけるようにしましょう。

 最後に、「人と話す機会をつくる」こと。今やSNSやメッセージアプリで会話をすることが多くなっていますが、直接人と会って会話をすることは脳の活性化にもつながります。スマホから離れる時間を作ることもできるので、ぜひ人と話す時間を大切にしてみてください。

 いかがでしたか? スマホの使いすぎで現れる症状は、スマホを持つ誰しもにリスクがあるものでもあります。スマホと離れて脳の休息時間をつくること、それを心がけてスマホ認知症にならないよう気をつけましょう。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授