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DATE/ 2023.03.24

理想的な人間関係を築くために必要な5つのこと

 人間関係に悩みはつきものだ。しかし、それが悩みのタネであるために、かえって人間関係そのもののことを考えることは、おろそかになってしまいやすい。

 「Aさんと意外と楽しい時間が過ごせた」だとか、「B氏にまた嫌なことをされた」など、そのアウトカムに一喜一憂するだけに終わってしまいがちだ。そこで、ここでは人間関係そのもののことを、つまり、「誰と、どんな関係を築きたいか」ということや、それを「どうやったら築き、深めることができるか」ということを考え、悩みを根本から解決する方法を探ってみたい。

問1.誰と、どんな関係を築きたいか?

 最初の問いに関しては、おそらく多くの人が「気になる異性(とも限らないが)と恋愛関係を築く」というテーマに手持ちの容量を割きすぎていることだろう。その一方で、職場での人間関係や、家族との関係(パートナーとの関係も含む!)、近所付き合いのことを考えることは、ないがしろにされてしまっている。少なくとも積極的に考えることはあまりないだろう。すべての関係を濃密にすればいいわけではないが、それぞれの関係性に対して自分が望む通りのアプローチができているか。そこを見直してみるだけでも、不要な悩みが解消するだろう。

 どの関係を、どうしたいのか。これはつまるところ、人それぞれだ。「家族より職場の同僚を優先させることがあってはならない」などと、状況を鑑みずに一概に言うことはできないのだ。個々人が全体のバランスを考えて決めればいい。なので、今回の主眼はふたつめ。「どうやったら理想の人間関係を築くことができるか」というところを深めたいと思う。

問2.どうやったら理想の人間関係を築くことができるか?

 このような人生のちょっとした問題の解き方は、学校では教えてくれないものである。そう思っていたのだが、たまたま開いたアメリカの大学の教科書に、人間関係の深め方というのがずばり紹介されていた。驚くと同時に、アメリカらしいと妙に納得してしまう。

 その本は『FUNDAMENTALS OF SELLING』(McGraw-Hill Education)というビジネス営業の教科書で、本来はビジネスが成立した後に顧客と理想的な関係を築くためのティップスである。「そのコツは、個人的な友情を育むときと同じである」と書いてある。それを逆応用しようという魂胆だ。さっそく骨子を紹介しよう。

【人間関係を深めるために必要な5つのこと】

1.時間(T-I-M-E)

どんな関係でも築くのには時間がかかる。ビジネス上の確かな信頼関係を築くには、3年以上かかることもざらである。

2.自己開示(Self-disclosure)

互いに関する2、3のことを共有する。相手がすぐに応えなくても心配無用。関係構築には時間がかかるのだ。

3.受容(Acknowledgement)

相手の話を聞く。誰かに話を聞いてもらい、認められたい、理解してもらいたいという願望は、誰にでもあるもの。

4.関心(Attending)

相手に注意を払う。あなたの目・耳・体・心のすべてが相手と相手の話に向かっていること。

5.会話(Talking)

良いやりとりの積み重ねが良い関係性を築く。良い聞き手であることが不可欠。情報を共有すること、してもらうこと。

 まずなにより、相手に興味を持つことであり、空気にまかせるのではなくそれをしっかり示すことだ。相手の話をよく聞き、よく応答し、折々には個人的な話をシェアするようにする。そして大切なことは、時間をかけること。結果を焦らないことだ。

 これでどんな相手とも関係を深められる、と短絡的に言うことはできないが、自分が深めたいと望んでいる関係に対し、適切なアプローチがとれているかどうか、迷ったときのチェック項目として使うことはできるだろう。すべてやっているはずなのに、うまくいかないという場合は……えーと、それは、何か別の要因があるので、まずはこの記事を、相手と共有するところから始めてみるのがいいかもしれない。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授