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DATE/ 2022.12.21

世界最強の「ハッカー集団」3選

 ハッキングやハッカーという言葉を耳にしたことはないでしょうか。政府や企業のコンピュータやネットワークに侵入して機密情報を盗み出すといった犯罪者といったイメージで、ニュースだけでなく映画でも取りあげられることも少なくありません。今回は、映画やドラマではなくリアルに活動しているハッカーの実像にせまりたいと思います。

ハッカーとは

 ハッカーというと、インターネットを通じて悪事を働く人という意味合いで使われることがありますが、必ずしも悪意を持って、不正行為を働く人たちというわけではありません。ハッカーは、もともとコンピュータや電気回路に関して深い技術的知識を持ち、その内部を覗いたり操作したりする人の総称です。

二種類のハッカー

 コンピュータやインターネットに関して深い技術的知識を持つハッカーですが、細かく分類すると2種類に分けることができます。それは、「ホワイトハッカー」と「ブラックハッカー」です。

 コンピュータの知識とネットワーク技術を善良な目的に使用するのがホワイトハッカー、それら知識と技術を不正な行為のために使用するのがブラックハッカーです。ブラックハッカーは別名でクラッカーと呼ぶこともあります。

 ちなみに、ハッカーの行為であるハッキングとクラッカーの行為を示すクラッキングも意味が違っています。ハッキングはコンピュータのオペレーティングシステムやプログラムの解析・改変を指す言葉で、クラッキングはコンピュータシステムやネットワークへの不正侵入、破壊、データ改ざんといった不正行為を指す言葉になります。

世界的なハッカー集団3選

 ニュースで報じられる国や企業などのコンピュータシステムへの攻撃の大半は、少数のハッカー集団によるところが知られています。これら有名なハッカー集団のいくつかと、その動機についてみてみましょう。

・Anonymous

 ウクライナに侵攻しているロシア政府に宣戦布告するなどで注目されています。攻撃のターゲットとしては、政府機関、政治家、多国籍企業、宗教団体などのウェブサイト、イスラム国(ISIS)の関係者と見られる数百ものTwitterアカウントなど。

 Anonymousは特定のリーダーがいるわけではなく、ほとんどの攻撃はそれぞれ無関係な個人によるところで、1人1人の目標がそれぞれ違っているような謎めいた集団として知られています。

・Chaos Computer Club(CCC)

 現在3000人を上回るメンバー構成で、欧州最大のハッカー集団。攻撃のほとんどが合法的なもので、ネットワークやシステムのセキュリティ欠陥を知らしめ、あらゆるコンピュータやネットワークの技術的なインフラへの自由なアクセスを守ることを目標に掲げています。

 CCCの功績としては、古くはフランスの核実験に抗議、テレビ番組の生放送で金を引き出してみせてマイクロソフトの「ActiveX」の欠陥を指摘(1996年)、第2世代携帯電話規格の顧客カードの暗号をハッキングして、顧客カードの複製が可能であることを示す(1998年)といった事例があります。

・Tarh Andishan

 米国とイスラエルのサイバー戦争に対抗すべく、イラン政府の後ろ盾によって設立されたとされるハッカー集団。グループの名前は、現地の言葉で「革新者」です。

 自動伝播システム、バックドア、SQLインジェクションといった高度なハッキング技術を使って、世界中の著名機関、政府や軍のシステム、企業などを攻撃。一部報道によると、航空会社のゲートやセキュリティシステムに完全にアクセスが可能で、乗客やゲートの認証情報を自由にコントロール可能という怖ろしいハッキング技術があるとのこと。

 ここではよくしられたハッカー集団3選を取りあげましたが、インターネット上には、「SEA」「Lizard Squad」や「APT28」など、怪しげなハッカー集団に枚挙の暇がありません。その目的も、国家間の思惑が絡む政治的であったり、個人的な楽しみであったりさまざまです。しかし、その技術はわれわれの生活を脅かすほど大きな影響を持つことを忘れないようにしましょう。
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授