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DATE/ 2023.01.26

なぜクレーマーに中高年が多いのか?

 クレーマーの原義は「要求者」「請求者」の意味ですが、近年では商品の欠陥や客への対応の仕方などについて、しつこく苦情を言ったり過度なクレームをつけたりする人を指しています。

 さらに最近では、特に悪質なクレーマーともいえる、顧客や取引先からの著しい迷惑行為である「カスタマーハラスメント」(「消費者、顧客、取引先等」を意味する「customer(カスタマー)」と「嫌がらせ」を意味する「harassment(ハラスメント)」を組み合わせた和製英語。通称「カスハラ」)も社会問題となっています。

 そんな困ったクレーマーの特徴の一つに、中高年に多いことが挙げられます。今回は、なぜクレーマーに中高年が多いのか?について、背景や理由を探ってみたいと思います。

「クレームを言った経験ある人」は50代が最多!

 まずは、「クレームを言った経験ある人」について見てみましょう。

 2017年12月に連合(正式名称:日本労働組合総連合会。日本最大の労働組合全国中央組織)より発表された、全国の15歳~69歳の一般消費者1,000名を対象とした「消費者行動に関する実態調査」による、「これまでにサービスや商品について、苦情・クレームを言ったことがある人」を年代別の調査結果は以下のようになっています。

「サービスや商品に対する苦情・クレームを言った経験(一般消費者)」(2017年連合調べ)
《年代【サンプル数】クレームを言ったことがある(%):クレームを言ったことがない(%)》
10代【n=176】クレームを言ったことがある23.3%:クレームを言ったことがない76.7%
20代【n=166】クレームを言ったことがある28.3%:クレームを言ったことがない71.7%
30代【n=164】クレームを言ったことがある36.6%:クレームを言ったことがない63.4%
40代【n=158】クレームを言ったことがある47.5%:クレームを言ったことがない52.5%
50代【n=169】クレームを言ったことがある51.5%:クレームを言ったことがない48.5%
60代【n=167】クレームを言ったことがある49.1%:クレームを言ったことがない50.9%

 この調査結果を見てみると、「クレームを言った経験がある人」を年代別に見ると、50代までは年代が上がるにつれ苦情・クレームを言ったことがある人の割合は高くなり、最も高い50代では51.5%と半数を超えました。つまり、クレームを言ったことがある年代は、50代がもっとも多いことが分かります。

 また、40代の47.5%、60代の49.1%も、50代同様にクレームを言ったことがある年代の割合が高くなっています。

 もちろん、クレームを言ったことがある人の全てがクレーマーというわけではありません。しかし、クレーマーの母数がクレームを言ったことがある人であることを鑑みると、クレームおよびクレーマーと中高年の親和性が高いことがうかがえます。

クレーマーは40代~60代が多い?

 他方、「クレームを言われた経験がある人たち」から見た、年代別の調査結果も存在します。ただし、こちらはクレームを言った人の年齢や年代は正確には分からないため、クレームを言われたことがある人の視点、つまりクレームの受け手から見た推定年齢による年代別となっています。

 まず、2020年10月にUAゼンセン(正式名称:全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟。製造業、流通・小売、サービス業など様々な産業・業種の労組が集まった労働組合)より発表された、「悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート調査結果」によると、「迷惑行為をしていた顧客の推定年齢」は以下のように、50歳代が最多の30.8%。そして、40代~60代で77.7%と、約8割を占める結果となっています。

「迷惑行為をしていた顧客の推定年齢」(2020年UAゼンセン調べ)
《推定年代:割合(件数)》
定年代:割合(件数)
10歳代:0.20%(38件)
20歳代:2.0%(305件)
30歳代:8.6%(1,305件)
40歳代:18.9%(2,877件)
50歳代:30.8%(4,702件)
60歳代:28.0%(4,269件)
70歳代以上:11.5%(1,750件)

 同じく、2021年12月に交運労協(正式名称:全日本交通運輸産業労働組合協議会。交通運輸、観光サービス関係の産業別労働組合で構成)より発表された、「悪質クレーム(迷惑行為)アンケート調査」によると、「悪質クレーム(迷惑行為)をしていた利用者等の推定年齢」は以下のように、50代が最多の29.2%。そして、40代~60代で70.3%と、約7割を占める結果となっています。

「悪質クレーム(迷惑行為)アンケート調査」(2021年交運労協調べ)
《推定年代:割合》
10代:0.7%
20代:4.1%
30代:10.0%
40代:20.6%
50代:29.2%
60代:20.5%
70代以上:6.7%
わからない:8.2%

 以上の調査結果からは、クレーマーに中高年が多いことが見えてきます。

なぜ中高年はクレーマーとなってしまうのか?

 カスタマーハラスメント問題に詳しい関西大学社会学部教授の池内裕美氏は、クレーマーには中高年男性が多いとしています。

 そして、中高年のクレーマーが増えた背景として、退職した団塊世代の中高年男性が過去の栄光や知識を誇示して苦情を訴えてきた、クレーム界の「苦情の2007年問題」があるとしています。2022年現在、中高年からの苦情が多い傾向は変わっていないようです。さらにコロナ禍での閉塞感や孤立感の増大から、クレーマーやクレーム自体が増加の傾向にあるようです。

 そのうえで、中高年がクレーマーとなる理由として「日常的に不満をため込んだ人たちが、たまたま利用した店舗で自分の意図に反する場面に出くわし、不満やイライラを爆発させている可能性が考えられます。(中略)自分自身の主張を従業員に強いることで、失いつつある存在意義やアイデンティティを確認しているともいえます」と、池内氏は述べています。

 また池内氏はクレーマーの特徴として、(1)高学歴・高所得で社会階層が高い人が多い、(2)自尊感情が高く完全主義的な傾向が強い、(3)社会的不満が高い――うえに、性格特性の(4)寛容性が低い――といった点が挙げられるとしています。

 他にも、中高年にクレーマーが多い理由として、中高年以上はエネルギーそのものが低下するため怒りを抑制することも難しくなることや、前頭葉の機能低下により感情のブレーキが利きにくくなることなどがあったり、また、「よかれと思って」助言しているだけでクレームを言っていると思っていないといった認知のゆがみが存在したりするなどとも言われています。

 いかがでしたでしょうか。カスタマー(消費者、顧客、取引先等)である以上、誰もがクレーマーになったりクレーマーの被害に合ったりする可能性があります。売り手も買い手もあくまでも社会関係の一つに過ぎず、当然ながらお客様は神様ではありません。徹底的に社会的な動物であるヒトがより良く生活していくためには、自身の行動や特性を振り返りながら、寛容の精神と他者への感謝の気持ちを持つことが基本となるのではないでしょうか。

<参考文献・参考サイト>
・「クレーマー」『デジタル大辞泉』(小学館)
・「クレーマー」『現代用語の基礎知識』(自由国民社)
・『カスハラ』(NHK「クローズアップ現代+」取材班編著、文藝春秋)
・『50代から心を整える技術』(下園壮太著、朝日新書)
・『凶暴老人』(川合伸幸著、小学館新書)
・カスハラとは - コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%83%8F%E3%83%A9-2100180
消費者行動に関する実態調査
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20171221.pdf?v0110
・悪質クレーム対策(迷惑行為) アンケート調査結果 - UAゼンセン
https://uazensen.jp/wp-content/uploads/2020/12/%E6%82%AA%E8%B3%AA%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%A0%E5%AF%BE%E7%AD%96%EF%BC%88%E8%BF%B7%E6%83%91%E8%A1%8C%E7%82%BA%EF%BC%89%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%88%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%B5%90%E6%9E%9C%EF%BC%882020%E5%B9%B410%E6%9C%88UA%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%B3%EF%BC%89.pdf
・全日本交通運輸産業労働組合協議会(公式ホームページ)
http://www.koun-itf.jp/publics/index/43/
・なぜ中高年男性はカスハラモンスターに 「博学自慢は昔からいたが、品が悪くなった」関西大教授が調査
https://maidonanews.jp/article/14125447
・社会問題化する「悪質クレーム」心理の特徴と社会的な背景とは?
http://ictj-report.joho.or.jp/1707/sp01.html
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