社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.09.23

世界で「最も生活費が安い国」ランキング

 生活していく上で欠かせない食費や光熱費、交通費などの生活費。昨今の物価の高騰で生活費もあげざるを得ない状況は、日本のみならず世界的に続いています。では、世界を見たときに、もっとも生活費を抑えられる国はどこなのでしょうか?

 今回は世界の1万か所あまりの都市価格情報を集めている「Numbeo」が発表した『Cost of Living Index』の2023年版を参考に、生活にかかる消費財価格の相対的な指標を比較して、世界で最も生活費が安い国を紹介していきます。なお、Numbeoが発表する指数はすべてニューヨークが基準となっているため、ニューヨークを100として数値を表しています。

 また、具体的にわかるように、日本で700円相当のマクドナルドのハンバーガーセットの値段、日本で247円相当の卵12個の値段、日本で96,036円の市内中心部のワンルームの値段がそれぞれの国ではどう変わるのかも合わせて紹介します。

パキスタン(生活費指数:18.0)

 インダス文明が栄えた地としてモヘンジョダロやハラッパーなどの都市遺跡が有名なパキスタン。インドや中国、アフガニスタン、イランと国境と隣り合わせになったイスラム国家で、国土は日本の約2倍あります。

 貧富の差が激しいため、一概には言えませんが、平均の月収は18,930円と今回調査対象の国ではもっとも低い結果に。マクドナルドのハンバーガーセットは410円、卵12個は125円、市内中心部のワンルームは12,541円と日本よりかなり物価が安いことが分かります。2割以上の国民が貧困層だという厳しい現実が物価の安さに反映されていることがうかがえます。

エジプト(生活費指数:21.6)

 古代文明の時代から長い歴史を誇るエジプトはアフリカ大陸北東部に位置し、ナイル川や三代ピラミッドなど観光資源の豊富な国でもあります。国土はほぼ砂漠で、ナイル川沿いのわずか5%のみが利用されています。

 平均月収も18,996円とパキスタンに次いで低く、マクドナルドのハンバーガーセットは439円、卵12個は156円、市内中心部のワンルームは17,010円と、物価はかなり安いことが分かります。パキスタンよりも治安は安定しているため、物価の安い国として海外旅行先としても人気の国となっています。

インド(生活費指数:22.4)

 世界第2位の人口を誇り、経済発展が著しいインド。南アジアに位置しており、国土は日本の約8.8倍にも及びます。多種多様な宗教や、民族や文化が共存しているため、多様性の国という印象を持つ人も多いでしょう。

 平均月収は74,283円と、物価が安い国にしては高く感じられますが、マクドナルドのハンバーガーセットは533円、卵12個は123円、市内中心部のワンルームは24,271円とかなり安め。インドの物価が安いのはやはり貧富の差が大きく、貧困層が一定数いるためと考えられます。

コロンビア(生活費指数:23.1)

 世界有数のコーヒー生産国であり、サッカーの国という印象も強いコロンビア。西側と北側が海に面していて、南アメリカ大陸の北端に位置し、日本の約3倍の広さの国土を擁しています。

 平均月収は37,583円で、マクドナルドのハンバーガーセットは656円、卵12個は200円、市内中心部のワンルームは31,323円。上記3国に比べれば値段は上がっているものの日本と比べるとまだまだかなり安いことがうかがえます。

リビア(生活費指数:24.2)

 リビアはアフリカ北部エジプトの西側に位置し、地中海に面する国です。しかし国土の多くは砂漠に覆われていて、地中海沿岸辺りで人々が生活を営んでいます。アフリカ最大の油田を擁し、リビア経済には欠かせないものになっています。

 平均月収は38,767円で、マクドナルドのハンバーガーセットは476円、卵12個は186円、市内中心部のワンルームは23,334円と、コロンビアよりも月収は高いものの、物価は安いという結果になっています。

 今回紹介した5か国を見てみると、貧困の差が大きいことが物価を押し下げる要因になっている現実が浮き彫りになりました。その理由には情勢の不安もあれば、国が抱えるさまざまな課題もあるでしょう。物価が安いことを喜ぶだけでなく、その背景にある問題にも目を向けることで、その国への理解が深まるのではないかと感じました。

<参考サイト>
・Cost of Living
https://www.numbeo.com/cost-of-living/
・外務省: わかる!国際情勢 Vol.35 パキスタンという国~世界の平和と安定の要
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol35/index.html
・【2022年最新】パキスタンの平均年収は約6万円!物価や生活水準・女性の安全性も解説 - Career-World(キャリアワールド)
https://web-box.co.jp/carrer-world/pakistan-annual-income/
・外務省: わかる!国際情勢 Vol.30 地域大国としてのエジプト
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol30/index.html
・インドってどんな国?インドの最新基本情報 | RGF
https://www.rgf-hragent.asia/blog/india/134/
・コロンビア基礎データ|外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/colombia/data.html
・「リビアってどんな国?」2分で学ぶ国際社会 | 読むだけで世界地図が頭に入る本 | ダイヤモンド・オンライン
https://diamond.jp/articles/-/304338
・リビアの旅行情報 | アフリカ旅行の道祖神
https://www.dososhin.com/know/country/LBY/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方

人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
2

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
3

脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは

脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質

「ワット・ビット連携」の概念がある。これは神経と血管の関係にも似ており、両者が密接に関係するところから、それをもとに人間の本質について考察していくことになる。また、中村天風の思想から着想を得て、人間の心には霊性...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/13
4

図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」

図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」

歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用

公共図書館では質の高い「レファレンス」サービスを提供しているが、活用する人は限られている。だが、実は全国の図書館ネットワークを縦横無尽に活用できる、驚くほどに便利な仕組みなのだ。今回は図書館のレファレンスで何が...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/15
5

不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?

不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実

改革開放当時の中国には技術も資本もなく、工場を建てる土地があるだけだった。経済成長とともに市民が不動産を複数所有する時代となり、地価は高騰し続けた。だが、習近平政権による総量規制は不動産価格を低下させ、消費低迷...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/10/16
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使