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なぜみんな「ゴシップ」が好きなのか?
芸能人が結婚した。残酷な事件が起きた。日本人スポーツ選手が大きな大会で優勝した。日々、世の中はこういった話題で持ちきりだ。
ヒトの場合は、そこに言葉が加わる。誰にでも気軽に触るわけにはいかないから、言葉で親密さを示すのだ。話しかけるということは、それだけであなたに関心がある、気持ちが向いている証拠となる。言葉はいわば「遠隔毛づくろい」で、いろんな意味で毛づくろいと同じ役割を果たす。
その意味で一番都合が良いのは、日常の他愛ない会話、うわさ話である。つまり、道で出会った知り合いとちょっと天気の話をする、あるいは共通の知り合いのことを話すというのは、サルが互いになでているのと近い行為なのである。
対して、女のおしゃべりは社会という回転木馬の中心軸、社会そのものを支える基盤だ。複雑な人間関係を構築し、維持していくために会話が欠かせない。その場にいない人の情報を交換することで、集団内の関係を調整しているのだ。
社会にとって重要なのは、男の宣伝より、女同士のおしゃべりである。女同士のおしゃべりが社会的な関係を調整することで、社会がうまく回っているという側面があるのだ。その証拠に、ヒト以外の類人猿社会では、オスとオスの関係よりもメス同士の関係のほうが、社会に対する影響力が断然大きいことが分かっている。
つまり、ある社会を形作っているのは、女性同士のうわさ話、ゴシップなのだ。ゴシップがなくならない理由は明らかで、ゴシップこそ、社会の中心だからである。週刊誌やスポーツ新聞、ワイドショー、そして井戸端会議が、実は社会の鍵を握っているというわけだ。
メディアは廃れても、ゴシップは流れる
メディアの流行廃り(はやりすたり)はあっても、ゴシップはいつの時代も町中に流れている。人はなぜ、こうしたうわさ話をするのだろうか。もっと有益な情報、知ったほうがよさそうな情報はいくらでもあるのに、なぜうわさ話のやりとりは一向に減らないのだろうか。なぜ私たちはこんなにゴシップが好きなのか。ヒトは言葉で毛づくろいする
人類学などでは、うわさ話は「毛づくろい」の代わりだという考え方がある。サルが毛づくろいするのは、相手との親密さを示す一種のコミュニケーションである。親子、恋人、親友同士なら、おたがいの身体にやさしく触れたり、髪をなでたくなるだろう。それらの行為は、サルの毛づくろいとほぼ一緒だ。ヒトの場合は、そこに言葉が加わる。誰にでも気軽に触るわけにはいかないから、言葉で親密さを示すのだ。話しかけるということは、それだけであなたに関心がある、気持ちが向いている証拠となる。言葉はいわば「遠隔毛づくろい」で、いろんな意味で毛づくろいと同じ役割を果たす。
その意味で一番都合が良いのは、日常の他愛ない会話、うわさ話である。つまり、道で出会った知り合いとちょっと天気の話をする、あるいは共通の知り合いのことを話すというのは、サルが互いになでているのと近い行為なのである。
男の会話は自己宣伝、女の会話は社会の中心
ただし、男と女では、うわさ話の機能が異なる。男の会話は自己宣伝が中心で、自分のことばかり話す。ライバルを蹴落とし、自分という人間を売り出す政治ゲームの側面が強い。対して、女のおしゃべりは社会という回転木馬の中心軸、社会そのものを支える基盤だ。複雑な人間関係を構築し、維持していくために会話が欠かせない。その場にいない人の情報を交換することで、集団内の関係を調整しているのだ。
社会にとって重要なのは、男の宣伝より、女同士のおしゃべりである。女同士のおしゃべりが社会的な関係を調整することで、社会がうまく回っているという側面があるのだ。その証拠に、ヒト以外の類人猿社会では、オスとオスの関係よりもメス同士の関係のほうが、社会に対する影響力が断然大きいことが分かっている。
つまり、ある社会を形作っているのは、女性同士のうわさ話、ゴシップなのだ。ゴシップがなくならない理由は明らかで、ゴシップこそ、社会の中心だからである。週刊誌やスポーツ新聞、ワイドショー、そして井戸端会議が、実は社会の鍵を握っているというわけだ。
<参考文献>
・『友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学』(ロビン・ダンバー著 インターシフト)
・『友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学』(ロビン・ダンバー著 インターシフト)
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