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DATE/ 2023.08.06

日本は最も高い?世界の高速道路料金ランキング

 海外の人が日本を訪れて驚くポイントに、高速道路料金の高さという点があるようです。海外に目を向けて少し調べてみると、高速道路が乗り放題(つまり無料)のところがあったり、料金設定があっても日本と比べればかなり格安の地域もあります。では実際にどのくらい違うのでしょうか。情報を整理してみましょう。

日本の高速道路料金は24.6円/km

 NEXCO東日本によると、高速道路の通行料金は普通車の場合1kmあたり24.6円に設定されているとのこと(一部の区間を除く)。実際はこれにターミナルチャージと呼ばれる150円がプラスされて、消費税率がかかります。また100kmを超える長距離の場合は割引が入ったりするようです。海外の状況と比較してみましょう。国土交通省の2019年の資料(レート換算は1ユーロ=120円)を見ると、一般の乗用車におけるヨーロッパにおける料金水準は、掲載されている国別で高い順にすると以下の通りです。

フランス15.5円/km
スペイン13.4円/km
イタリア 8.7円/km
ポルトガル 10.2円/km
ギリシャ 7円/km
イギリス 一般車は原則無料(大型車のみ35.2円/km)
ドイツ 一般車は原則無料(大型車のみ11.2円/kmから31.3円/km)

 またアジア地域に関しては、いくつかのウェブサイトの内容を見てみるとおおよそ韓国、中国とも10円弱程度、シンガポールは無料といったところのようです。為替による変動もありますが、総じて日本よりかなり安いです。また、アメリカやカナダも基本的に無料のようです。こういった状況を見てみると、日本の高速道路料金は「ずば抜けて高い」と言っていいでしょう。

 ただし、最近では海外でも道路の維持管理費がかかり、値上げしている地域もあるようです。また海外では、日本と比べて道路料金は安い代わりに税金が高い場合が一般的だと言えます。この場合、国民から広く徴収した税金を道路の維持管理費に回している訳なので、結果的にはそれなりの費用を国民全員が負担しているとも言えそうです。

最長2115年までは有料となる見通し

 ではなぜ日本の高速道路料金はこんなに高いのでしょうか。一つのポイントは日本が地震大国だから、というものです。長く安全に使用するには耐震化工事が必要です。また日本は山地が多いことから、トンネルや橋をたくさん作る必要があります。このためにはもちろんそれなりの技術とお金が必要です。また日本は高度経済成長時、全国各地に一気に道路を建設しました。このことで日本は地方をあまり取り残さずに発展できた、という話もあります。

 ただし、このときには莫大な借金をして作られました。このことが当時の日本の経済を潤したようです。しかしこの道路の借金を私たちはずっと返し続けているとも言えます。政府は少し前まで2065年には高速道路を無料化する予定でしたが、先頃、これは最長2115年まで50年延長されています。およそ90年後の22世紀ともなれば、人類は道路から解放されて、車の多くは空を飛んでいるかもしれません。その頃までには道路の借金からも解放されていることを、願うほかありません。

<参考>
諸外国における高速道路料金の動向|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001303784.pdf
通行料金の計算方法を教えてください。|ドラぷら(NEXCO東日本)
https://www.cs3.e-nexco.co.jp/faq/s/article/997
いったいなぜ? 高速道路 有料期間は2115年まで延長へ|NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230428/k10014052241000.html
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