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DATE/ 2023.09.16

「新電力会社」では安くならない?料金の仕組み

 生活費が高騰する中、毎月の電気代も悩みの種。そんな中、新電力会社へ切り替えた世帯、切り替えを検討している世帯も少なくないことでしょう。乗り換えるとこんなところがオトク、現状の契約との差額がこんなに、などメリットが強調されがちな新電力会社なのですが、そもそも大手電力会社とは何が違うのか、その仕組みはご存じですか?実は必ず新電力会社の方が安いとも限らないんです。

お坊さんが起業した異色の新電力会社も

 まずは大手電力会社について。北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、関西電力、九州電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の10社を指し、口述する電力の小売り自由化までは居住地域ごとに独占的に電力の供給を行っていました。東京電力管轄のエリアに住んでいる場合、「九州電力の方が安いから切り替えたいな」と思っても変えられなかったわけです。

 その構造が変わったのは2016年の「電力の小売全面自由化(電力自由化)」。これ以降、大手電力会社以外でも電気の小売りをできるようになりました。電気は大きく分けて発電、送配電、小売の3つに分けることができ、新電力会社は小売り(や場合によっては発電)を行い、大手電力会社の送配電網を利用しています。2016年以降に電力小売りを始めた会社を一般的には「新電力会社」と呼び、資源エネルギー庁のサイトには2023年8月時点で700社以上が記載されています。大手電力会社の関連会社やガス会社などエネルギー系の会社や、通信系の関連会社、中にはお坊さんが起業したという異色の新電力会社もあります。

市場連動型プランかどうかで大きな違い

 新電力会社は大手電力会社に比べて電気代が安くなることがある、利用スタイルに応じた様々なプランが選べる(大手電力会社でもプランは複数ありますが、トータルの選択肢は当然新電力会社の方が多くなります)、携帯電話料金やガス料金などともセット割を用意している会社もあるなどのメリットがあります。再生可能エネルギーで発電した電気のみを供給している新電力会社もあるため、環境を意識して電力会社を選ぶ、ということもできるような時代になってきています。一方で使い方や契約プラン次第では大手電力会社より高くなることもありますし、契約期間の縛りがあるケースもあります。

 中でも大きな違いが出やすいのは市場連動型プランになっているかどうか。市場連動型プランは単価が決まっておらず、「日本卸電力取引所(JEPX)」の取引価格(=市場価格)に連動して、電気料金単価が決まる仕組みです。JEPXの料金は需要に応じて決まるため、電気使用量が多くない深夜に電気使用量が多いご家庭はメリットを受けやすいでしょう。一方で市場価格が高騰するとそれに合わせて電気代も上がるため、電気使用量から電気代が読みづらいというデメリットがあります。2021年1月に寒波の影響で電力需要が増加した際は、一時、最高価格 250 円/kWh を超えることもありました(一般的に目安として使われる値は27円/kWh)。

 選択肢が増えること自体は消費者にとって良いことですし、メリットとデメリットをしっかり理解して、ご自身に合う電力会社を選び、生活の質を上げていきましょう。

<参考サイト>
・【新電力】メリット・デメリット|登場背景・特徴もわかりやすく解説 | 電力 | 福井新聞ONLINE
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1440074
・大手電力会社の一覧 | 電力事業所
https://denryoku-jigyousho.jp/denryokugaisha
・登録小売電気事業者一覧|電気事業制度の概要|資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/retailers_list/
・【電気料金値上げ】 新電力を検討したほうがいい? | ファイナンシャルフィールド
https://financial-field.com/household/entry-225184
・市場連動型プランとは?どこの新電力・電力会社が扱っている? | 電力比較サイト エネチェンジ | 電力・ガス比較サイト エネチェンジ
https://enechange.jp/articles/market-linkage-plan-summary
・今年の冬は大丈夫?LNG高騰による電力需給の現状 | ホールエナジー|非化石証書購入代行、コーポレートPPAコンサル
https://www.whole-energy.co.jp/column/2768/
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