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『自転車に乗る前に読む本』で始める健康的な自転車ライフ
「最近、運動不足だな」と感じていませんか。スポーツ庁の調査によれば、運動不足を自覚している人は全体の約79.6%にも上るそうです。特に中高年層では、メタボリック・シンドロームなどの健康問題が気になるところでしょう。しかし、ジムに通うには費用も時間もかかりますし、ジョギングを始めてもなかなか続かないもの。
それでは、疲れず、気軽に、運動を始めるにはどうすればいいのでしょうか。そこで今回おすすめしたいのが、自転車です。『自転車に乗る前に読む本 生理学データで読み解く「身体と自転車の科学」』(髙石鉄雄著、ブルーバックス)は、そんな運動不足を解消したい方にぴったりの一冊です。
では、どのように自転車に乗れば、つらくならずに運動の効果を得られるのでしょうか。本書は運動生理学の専門知識と実際の生理学データにもとづいたアドバイスを提供してくれます。
第1章では、自転車の選び方や、健康づくりに役立つ効果的な乗り方について具体的な実験データを交えて紹介し、第2章ではそれを応用生理学の観点からさらに詳しく掘り下げていきます。第3章では、著者の講義をもとに、運動と身体の関係、特に中年期のメタボリック・シンドロームのメカニズムや、それによって引き起こされる病気について説明しています。巻末の第4章では、自転車を楽しむためのQ&Aや、自転車が守るべき「自転車安全利用五則」など、読者が安全かつ効果的に自転車を利用するための実践的なアドバイスが提供されます。
著者の髙石鉄雄氏は、名古屋市立大学の副学長兼高等教育院長、そして同大学院理学研究科の教授です。専門は応用生理学、バイオメカニクス、健康科学で、博士論文のタイトルは「自転車運動に対する身体適応および日常的自転車使用による健康づくりの可能性」という、まさに自転車と運動の専門家です。他の著書に『髙石式 アクティブサイクリング 自転車に乗ろう!』(つちや書店)、『自転車で健康になる』(日本経済新聞出版、共著)などがあります。
たとえば、歩きと自転車のエネルギー消費量を比較してみると、歩きと自転車のエネルギー消費量を比較してみると、自転車でゆっくり走った場合、歩くよりも運動量が少ないことがわかります。これは、自転車が楽に移動できる、とても運動効率のよい乗り物であることを意味しています。
ところが、自転車は速度を上げていけばトレーニングに使える乗り物にもなります。時速15キロメートルで早歩きよりもエネルギー消費量が高くなり、時速18キロメートルでは歩行を大きく上回ります。健康づくりのためにどれくらい運動したらよいのかの目安として、米国スポーツ医学会は「50%程度の運動強度で、1日に30分間、週に5回」という基準を示しています。自転車でこの基準を上回る運動をするにはどうすればいいのでしょうか。データで確認してみましょう。
本書では、標準的な体力を持つ40代の女性がアップダウンのある約3.8キロメートルの道のりを、とくに急ぐことなく歩いた場合と自転車で走った場合の心拍数の変化を比較しています。このデータでは、歩行時の運動強度は50%以下にとどまることが多いのに対し、自転車では基本的に運動強度が60%以上で推移しています。つまり、自転車に乗れば推奨される強度の運動を無理なく行うことができるのです。
この差は、日本の道路事情に関係しています。日本の街中では信号が多く、交差点では頻繁に停止することがあります。その結果、自転車での移動は自然と効果的なインターバル・トレーニングになっているのです。また、交差点の中央部は水がたまらないようにやや高くなっているため、停止と発進がゆるい登り坂での運動となり、それに伴い筋力を大きく使うことになります。この大きな力を要する筋力トレーニングの要素が心拍数の上昇を促すのです。
さらに、屋外でのサイクリングは疲れを感じにくいことが調査から明らかになっています。日常的に自転車を利用する人々を対象に行われたアンケート調査では、多くの参加者が「爽快」「楽しい」という肯定的な感想を述べています。一方で、フィットネスバイクのような屋内での運動の場合、同程度の運動量でも「つらい」「疲れた」といった否定的な感想が多くなる傾向にあります。この違いは、屋外のサイクリングでは変化する自然の風景や風を切るスピード感にあるのだろうと髙石氏は推測しています。
これは生理学的な指標からも明らかです。血液中の乳酸値は筋肉の疲労度を示す重要な指標です。サドルを高くした場合、この乳酸値が低くなることが観察されました。これは、高いサドルによって自然とひざが伸びた状態でペダルをこぐことになり、血管を圧迫せず、乳酸がたまりにくくなるからです。さらに、心拍数についても、サドルを高くしたほうが低くなり、体への負担が少ないこともわかっています。疲れないようにする一工夫が、結果として高い運動効果をもたらすのです。
このように、自転車は他の選択肢に比べて、無理なく高い強度の運動を実現しやすいのです。ジムへの入会をためらっている人、定期的なジョギングを続けられなかった人、健康が気になり始めた中高年の人、そして何より自転車に乗るすべての人にとって、本書はおすすめできます。ぜひ書店で手にとってみてください。
それでは、疲れず、気軽に、運動を始めるにはどうすればいいのでしょうか。そこで今回おすすめしたいのが、自転車です。『自転車に乗る前に読む本 生理学データで読み解く「身体と自転車の科学」』(髙石鉄雄著、ブルーバックス)は、そんな運動不足を解消したい方にぴったりの一冊です。
自転車博士が教える「疲れない」のに効果的な自転車運動
サイクリングはけがのリスクが低く、楽しみながら続けやすい運動です。忙しい日々の中で運動のための時間を確保するのは難しいかもしれませんが、たとえば週に2~3日、自転車通勤を取り入れるだけで大きな違いを感じることができます。本書が自転車との付き合い方を考える上で重視するのが「疲れない」ということ。「疲れない」からこそ続けられますし、実は「疲れない」乗り方のほうがより効果的な運動になるのです。では、どのように自転車に乗れば、つらくならずに運動の効果を得られるのでしょうか。本書は運動生理学の専門知識と実際の生理学データにもとづいたアドバイスを提供してくれます。
第1章では、自転車の選び方や、健康づくりに役立つ効果的な乗り方について具体的な実験データを交えて紹介し、第2章ではそれを応用生理学の観点からさらに詳しく掘り下げていきます。第3章では、著者の講義をもとに、運動と身体の関係、特に中年期のメタボリック・シンドロームのメカニズムや、それによって引き起こされる病気について説明しています。巻末の第4章では、自転車を楽しむためのQ&Aや、自転車が守るべき「自転車安全利用五則」など、読者が安全かつ効果的に自転車を利用するための実践的なアドバイスが提供されます。
著者の髙石鉄雄氏は、名古屋市立大学の副学長兼高等教育院長、そして同大学院理学研究科の教授です。専門は応用生理学、バイオメカニクス、健康科学で、博士論文のタイトルは「自転車運動に対する身体適応および日常的自転車使用による健康づくりの可能性」という、まさに自転車と運動の専門家です。他の著書に『髙石式 アクティブサイクリング 自転車に乗ろう!』(つちや書店)、『自転車で健康になる』(日本経済新聞出版、共著)などがあります。
なぜ自転車なのか?実験で明らかになる自転車の可能性
健康のための運動は他にもいろいろありますが、その中でもなぜ自転車なのでしょうか。それは、他の運動に比べて、自転車が無理なく高い運動強度を実現しやすいからです。たとえば、歩きと自転車のエネルギー消費量を比較してみると、歩きと自転車のエネルギー消費量を比較してみると、自転車でゆっくり走った場合、歩くよりも運動量が少ないことがわかります。これは、自転車が楽に移動できる、とても運動効率のよい乗り物であることを意味しています。
ところが、自転車は速度を上げていけばトレーニングに使える乗り物にもなります。時速15キロメートルで早歩きよりもエネルギー消費量が高くなり、時速18キロメートルでは歩行を大きく上回ります。健康づくりのためにどれくらい運動したらよいのかの目安として、米国スポーツ医学会は「50%程度の運動強度で、1日に30分間、週に5回」という基準を示しています。自転車でこの基準を上回る運動をするにはどうすればいいのでしょうか。データで確認してみましょう。
本書では、標準的な体力を持つ40代の女性がアップダウンのある約3.8キロメートルの道のりを、とくに急ぐことなく歩いた場合と自転車で走った場合の心拍数の変化を比較しています。このデータでは、歩行時の運動強度は50%以下にとどまることが多いのに対し、自転車では基本的に運動強度が60%以上で推移しています。つまり、自転車に乗れば推奨される強度の運動を無理なく行うことができるのです。
この差は、日本の道路事情に関係しています。日本の街中では信号が多く、交差点では頻繁に停止することがあります。その結果、自転車での移動は自然と効果的なインターバル・トレーニングになっているのです。また、交差点の中央部は水がたまらないようにやや高くなっているため、停止と発進がゆるい登り坂での運動となり、それに伴い筋力を大きく使うことになります。この大きな力を要する筋力トレーニングの要素が心拍数の上昇を促すのです。
さらに、屋外でのサイクリングは疲れを感じにくいことが調査から明らかになっています。日常的に自転車を利用する人々を対象に行われたアンケート調査では、多くの参加者が「爽快」「楽しい」という肯定的な感想を述べています。一方で、フィットネスバイクのような屋内での運動の場合、同程度の運動量でも「つらい」「疲れた」といった否定的な感想が多くなる傾向にあります。この違いは、屋外のサイクリングでは変化する自然の風景や風を切るスピード感にあるのだろうと髙石氏は推測しています。
疲れずに自転車に乗りたければサドルを高くしよう!
疲れずに自転車に乗る上で、サドルの高さも重要な要素です。サドルを高く設定することで、疲労度が著しく低減することが研究によってわかっています。この研究では、さまざまな高さのサドルで自転車運動を行い、運動強度の異なる条件下で疲労度を測定しています。その結果、すべての運動強度において、サドルを高くしたほうが運動時の疲労感が低いことが判明しました。これは生理学的な指標からも明らかです。血液中の乳酸値は筋肉の疲労度を示す重要な指標です。サドルを高くした場合、この乳酸値が低くなることが観察されました。これは、高いサドルによって自然とひざが伸びた状態でペダルをこぐことになり、血管を圧迫せず、乳酸がたまりにくくなるからです。さらに、心拍数についても、サドルを高くしたほうが低くなり、体への負担が少ないこともわかっています。疲れないようにする一工夫が、結果として高い運動効果をもたらすのです。
このように、自転車は他の選択肢に比べて、無理なく高い強度の運動を実現しやすいのです。ジムへの入会をためらっている人、定期的なジョギングを続けられなかった人、健康が気になり始めた中高年の人、そして何より自転車に乗るすべての人にとって、本書はおすすめできます。ぜひ書店で手にとってみてください。
<参考文献>
『自転車に乗る前に読む本 生理学データで読み解く「身体と自転車の科学」』(髙石鉄雄著、ブルーバックス)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000382703
<参考サイト>
名古屋市立大学 総合生命理学部・システム自然科学研究科 応用生理学 髙石研究室
https://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/~takaishi/
『自転車に乗る前に読む本 生理学データで読み解く「身体と自転車の科学」』(髙石鉄雄著、ブルーバックス)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000382703
<参考サイト>
名古屋市立大学 総合生命理学部・システム自然科学研究科 応用生理学 髙石研究室
https://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/~takaishi/
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