社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
『美食の教養』に学ぶ世界一の美食家の思考法と食の新常識
「美食」と聞くと、贅沢で高級な趣味という印象を持つ人も多いでしょう。この「美食」という言葉は「ガストロノミー(Gastronomy)」という言葉に置き換えると、もう少しフラットに理解できそうです。ガストロノミーとは「食や食文化全体に対する研究」といった意味です。つまり、「贅沢さ」だけによらず、もう少しフラットに食文化を研究する立場が「ガストロノミー」です。
この「ガストロノミー」の視点から、世界の外食について追求した本が今回紹介する『美食の教養 世界一の美食家が知っていること』(浜田岳文著、ダイヤモンド社)です。本書では、「美味しい」と人が感じるときの秘密に触れてこれを詳しく解説しながら、食を通して「人生を豊かにする手段」について書かれています。
著者の浜田岳文氏は、1974年兵庫県宝塚市の生まれです。米国イェール大学(政治学専攻)に在学中、学生寮の“まずい”食事から逃れるため、ニューヨークを中心に食べ歩きを開始しました。卒業後、パリに留学したのち、10年ほど投資ファンドの仕事に携わります。その後、約2年かけて世界を旅し、およそ127ヵ国・地域を踏破したそうです。現在では一年のうち5ヶ月を海外、3ヶ月を東京、4ヶ月を地方を回ってフーディーとして食べ歩いています。また、株式会社アクセス・オール・エリアを設立し、エンタテインメントや食の領域で数社のアドバイザーを務めつつ、食関連スタートアップへの出資なども手掛けています。
これを避けるために、自分の口に合わないと思ったものに関しては、「なぜ自分は違和感を感じたのか考えてみる」ことを提案します。もちもちした食感はスペインなどで人気がある一方で、他の文化圏では苦手と感じる人は多いとのこと。さらに、バゲットのような乾燥したパンは、多くのヨーロッパ人は食べ続けることができますが、日本人は口の中が乾燥して食べにくいと感じることも。同様に、ヨーロッパの一流レストランの肉料理は、日本人には「パサパサしている」と感じることがよくあるそうです。
こういった点に関して浜田氏はこういっています。「自分の好みは好みとして、あっていい。ただ、国や文化によって好みが異なることを知らずに、自分の好みで判断するのではなく、まずは感覚の違いがあることを知る。これが大事だと思っています」と。
また、作り手が何度もその料理と向き合ってきたのに対し、食べ手は一期一会です。これでは、作り手がその料理に込めた思いや考え、形にするために費やした労力と時間といったものを理解することは難しいでしょう。だからこそ、食べ手としては常に謙虚に、料理人が込めた意図の一部しか理解できていないかもしれないことを、心に留めておくべきだといいます。
同時に作り手も、食べ手にそうした情報が伝わっていないことを意識して作ったほうがいいともいいます。この情報格差を埋める方法が「説明」です。料理の背後にある思考やストーリー、技術を説明することで、食べ手としては、その料理をより深く理解することができます。このように料理に関する説明には、そうした作り手についての理解を深めて、その価値を知るといった重要な意味があることがわかります。
、
しかし、背伸びして未知の味覚を理解しようと努力することで、味覚の幅が広がり、魅力が理解できるようになる。そして、知的好奇心の赴くままに背伸びをして、ハードルの高い世界に挑戦することを浜田氏は推奨します。そうすることで単においしい、おいしくないを超えた、自身の経験的世界が広がって人生が豊かになる感覚が味わえるということです。
本書は料理を文化としてとらえ、その価値や意味を研究するものです。そのなかで、料理に対する姿勢、心構え、考え方といったものが筆者のさまざまな経験を通して語られます。ヨーロッパ、北アメリカ、ラテンアメリカ、中国、東南アジアといったあらゆる国や地域の美食紹介だけでなく、その土地の料理にはどんな歴史や文化があるのか、またそれらを背景にシェフが料理に挑んだ意図はどこにあるのかなどの分析が凝縮されているので、知的好奇心が刺激されること必至です。
世界中を食べ歩くフーディたちは、その知的好奇心に導かれながら、日夜あらゆる食を味わい、研究し、伝え、コミュニケーションをとりながら食への理解を深めているのです。本書を開いて、食の世界の奥深さを堪能してみてはいかがでしょう。
この「ガストロノミー」の視点から、世界の外食について追求した本が今回紹介する『美食の教養 世界一の美食家が知っていること』(浜田岳文著、ダイヤモンド社)です。本書では、「美味しい」と人が感じるときの秘密に触れてこれを詳しく解説しながら、食を通して「人生を豊かにする手段」について書かれています。
著者の浜田岳文氏は、1974年兵庫県宝塚市の生まれです。米国イェール大学(政治学専攻)に在学中、学生寮の“まずい”食事から逃れるため、ニューヨークを中心に食べ歩きを開始しました。卒業後、パリに留学したのち、10年ほど投資ファンドの仕事に携わります。その後、約2年かけて世界を旅し、およそ127ヵ国・地域を踏破したそうです。現在では一年のうち5ヶ月を海外、3ヶ月を東京、4ヶ月を地方を回ってフーディーとして食べ歩いています。また、株式会社アクセス・オール・エリアを設立し、エンタテインメントや食の領域で数社のアドバイザーを務めつつ、食関連スタートアップへの出資なども手掛けています。
まずは感覚の違いがあることを知ることが大事
人が「美味しい」というときには、食べる人の好みが入る領域がかなり大きいので、浜田氏はなるべく自分の好みに気をつけているそうです。浜田氏は、最後の晩餐に何を食べたいかと聞かれたら「炊き立ての白ご飯」と答えるくらいに日本のご飯が好きとのこと。それは日本人として生まれ育ったことで自然と感じるものですが、ただこのバイアスに寄ってしまえば、自身の発信する情報には好みの合う人にしか役に立たないことになってしまいます。これを避けるために、自分の口に合わないと思ったものに関しては、「なぜ自分は違和感を感じたのか考えてみる」ことを提案します。もちもちした食感はスペインなどで人気がある一方で、他の文化圏では苦手と感じる人は多いとのこと。さらに、バゲットのような乾燥したパンは、多くのヨーロッパ人は食べ続けることができますが、日本人は口の中が乾燥して食べにくいと感じることも。同様に、ヨーロッパの一流レストランの肉料理は、日本人には「パサパサしている」と感じることがよくあるそうです。
こういった点に関して浜田氏はこういっています。「自分の好みは好みとして、あっていい。ただ、国や文化によって好みが異なることを知らずに、自分の好みで判断するのではなく、まずは感覚の違いがあることを知る。これが大事だと思っています」と。
食べ手と作り手の情報格差を埋めることで料理への理解が深まる
また、本書後半では、「作り手」と「食べ手」の間にある圧倒的な情報の非対称性という点について触れられます。作り手である料理人のほとんどが新しい料理を開発するために、かなりの時間と労力をかけています。場合によっては文献を調べたり、生産者との対話を通してヒントを得たりします。これに対して食べ手は、どれだけ時間をかけた料理であっても一瞬で食べてしまいます。また、作り手が何度もその料理と向き合ってきたのに対し、食べ手は一期一会です。これでは、作り手がその料理に込めた思いや考え、形にするために費やした労力と時間といったものを理解することは難しいでしょう。だからこそ、食べ手としては常に謙虚に、料理人が込めた意図の一部しか理解できていないかもしれないことを、心に留めておくべきだといいます。
同時に作り手も、食べ手にそうした情報が伝わっていないことを意識して作ったほうがいいともいいます。この情報格差を埋める方法が「説明」です。料理の背後にある思考やストーリー、技術を説明することで、食べ手としては、その料理をより深く理解することができます。このように料理に関する説明には、そうした作り手についての理解を深めて、その価値を知るといった重要な意味があることがわかります。
、
背伸びのすすめ――知的好奇心の赴くままに経験的世界を広げよう
さらに、本書最終部では「背伸びのすすめ」が語られています。特にヨーロッパの料理を食べると、日本人には塩味や苦味、酸味が強いと感じることがあります。外国の料理は食感として慣れていないのかもしれません。また、未知の食材も出てきます。さらに日本人には量が多い場合もあります。だから、日本で食べるのが一番、という日本人は多いようです。しかし、背伸びして未知の味覚を理解しようと努力することで、味覚の幅が広がり、魅力が理解できるようになる。そして、知的好奇心の赴くままに背伸びをして、ハードルの高い世界に挑戦することを浜田氏は推奨します。そうすることで単においしい、おいしくないを超えた、自身の経験的世界が広がって人生が豊かになる感覚が味わえるということです。
世界中を食べ歩くフーディーという生き方から学ぶ
浜田氏はなぜ、世界中を食べ歩くフーディーという生き方をしているのでしょうか。それは、「知的好奇心」からだといいます。音楽など文化に接していたり、旅をしていたり、食べているときこそが、今を生きている感覚が得られるとのこと。どんなレストランが世の中にあるのか。どんな美味しいものがあるのか。シェフは何を考えて作っているのか。知りたくて仕方がないということです。本書は料理を文化としてとらえ、その価値や意味を研究するものです。そのなかで、料理に対する姿勢、心構え、考え方といったものが筆者のさまざまな経験を通して語られます。ヨーロッパ、北アメリカ、ラテンアメリカ、中国、東南アジアといったあらゆる国や地域の美食紹介だけでなく、その土地の料理にはどんな歴史や文化があるのか、またそれらを背景にシェフが料理に挑んだ意図はどこにあるのかなどの分析が凝縮されているので、知的好奇心が刺激されること必至です。
世界中を食べ歩くフーディたちは、その知的好奇心に導かれながら、日夜あらゆる食を味わい、研究し、伝え、コミュニケーションをとりながら食への理解を深めているのです。本書を開いて、食の世界の奥深さを堪能してみてはいかがでしょう。
<参考文献>
『美食の教養 世界一の美食家が知っていること』(浜田岳文著、ダイヤモンド社)
https://www.diamond.co.jp/book/9784478119792.html
<参考サイト>
浜田岳文氏のホームページ
https://takefumihamada.com/
浜田岳文氏のInstagram
https://www.instagram.com/takefumi.hamada/
『美食の教養 世界一の美食家が知っていること』(浜田岳文著、ダイヤモンド社)
https://www.diamond.co.jp/book/9784478119792.html
<参考サイト>
浜田岳文氏のホームページ
https://takefumihamada.com/
浜田岳文氏のInstagram
https://www.instagram.com/takefumi.hamada/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界では「創造性がどれくらい大事か」という問題意識が今、急激に高まっている。創造性とは全ての人にあり、偏差値などでは絶対に計れない、まさに無限軸の創造性のこと。そうした創造性を育む学びが「STEAM教育」である。最終...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/18
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
国際的に見て、政府の債務残高が大きい日本。その背景には、バブル崩壊後の財政赤字を取り戻せていないことがあった。その一方で、預金残高も高い日本。所得が低いのに預金が多い日本の謎を解説する。(全4話中第2話)
※...
※...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
日本の政治史を見る上で地理的条件は外せない。「島国」という、外圧から離れて安心をもたらす環境と、「山がち」という大きな権力が生まれにくく拡張しにくい風土である。特に日本の国土は韓国やバルカン半島よりも高い割合の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/15
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは国益を最大化しなければいけないのだが……。35年にもわたる外交官経験を持つ小原氏が8年がかりで書き上げた著書『外交とは何か 不戦不敗の要諦』(中公新書)。小原氏曰く、外交とは「つかみどころのないほど裾野が広い...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/05