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働きすぎの日本人にいま最も必要なことは?
そもそも日本人は働きすぎている
会社勤めをしたことがある人なら誰しも実感したことがあるのではないでしょうか。多くの企業が既定の労働時間を無視して社員を働かせるのが暗黙の了解となっています。そういった雇用形態を行使する会社はブラック企業と呼ばれ、世間では悪名高いものとして非難の対象になっています。過酷な労働環境が問題となっている業界のひとつとして、IT業界の名を聞くことが少なくありません。例えば、この業界の過酷さを揶揄する上で『デスマーチ(死の行進)』という言葉があります。パソコンに向かって作業する各種のエンジニアたちが、ひたすら睡眠時間を削って仕事を強制させられてゆく。その結果、からだを壊して、ひどいときには過労死するケースすらゼロではありません。
もちろん、労働環境を見直す動きも高まっています。しかし、いまだに日本の企業の多くは、努力と根性があれば乗り切って行けるという、ある種の体育会系的な風潮が残っており、社員をぼろ雑巾のように扱うところは後を絶ちません。
過酷な環境下において最も必要なこと
糸井重里氏の『ボールのようなことば。』という著作の中で、寝ちゃう、と題された魅力的な言葉を紹介しましょう。ぼやきのように聞こえてくる温かみのある文章なので耳をすませるように読んでほしいと思います。「アイディアがほしいときにも、悩みがあるときにも、悲しいときにも、そういえば、ぼくは「寝ちゃう」ことで凌いできました。すごいでしょう!もちろん、ただ眠いときにも、ね」
この何気なくさらりと書かれた文章は、眠ることの大切さ、そしていて、その効用をほのめかしています。解説をほどこすことは多少野暮ですが、「寝る」ことが単純に生きてゆく上で出会わざるをない諸問題を解決するカギになるかのようです。また寝ることは、必然的に休息するための時間なのです。
2014年に亡くなった、故・赤瀬川源平さんは『優柔不断術』という著作の中で「日本人は様々な問題に遭遇したときに、すぐに解決しないで、時間というものを上手く利用して、棚上げしてきた。例えば、ひとまずこの問題は後で考えてみることにして…などと、会議でよく耳にすることがあるだろう」といった具合に、その場の解決を求めるよりも、先送りしようとすることを説いています。気付いたら、なるようになっている…漠然としたままの状況を良しとしているのです。
これはまた、人間関係においても生かせるでしょう。お互いの価値観で相容れないときは、白か黒かではっきりと答えを求めるのではなく、少し放っておくことで、意外と歩み寄れるものです。
寝る、ということから若干話がそれてしまったように聞こえるかもしれませんが、寝るという休息の中にも、この「時間を置く」という解決の力が潜んでいるのです。ふと、イタリアやスペインなどの国がシェスタ(昼寝)を取り入れるのも、そういった時間の力を借りて、後半の仕事につなげようとするためだろうかと勘繰ってしまいますね。
充分な睡眠をとること
日本の労働環境において、今もっとも必要とされるのは、充実した睡眠です。殊に四六時中、パソコンの画面と向き合って過酷な仕事を余儀なくされる人々は気をつけなければならなりません。精神を病み、からだを壊すだけでなく、死にいたる前に身を守る必要があります。デスマーチは気づかぬうちに鳴り響いているものです。その昔「24時間働けますか?」といった栄養ドリンクのCMが流れていましたが、「はい!」とかっこつけて答えることなどやめて、「寝かせてください」と答えて、休息を取ることも忘れてはいけません。
よりよい睡眠こそが、ビジネスに限らず、あらゆる分野のパフォーマンスを本質的に高めるからです。そして、何よりもそれが長続きの秘訣です。
さぁ、明日に向かって寝ましょう!
<参考文献>
・『ボールのようなことば。』(糸井重里/ほぼ日文庫)
・『優柔不断術』(赤瀬川源平/ちくま文庫)
・『ボールのようなことば。』(糸井重里/ほぼ日文庫)
・『優柔不断術』(赤瀬川源平/ちくま文庫)
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