社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
反捕鯨国が日本人にクジラを食べさせたくない理由とは?
クジラを食べるか、食べないか。捕鯨問題は、今やあまり日本人の関心を引かない話題になりつつあります。飽食の時代、「クジラなんて、食べなくても、どっちでもいい」というのが、みんなのホンネだからでしょうか。
そんな「クジラ給食」が消えたのは、1987年に南極海での商業捕鯨が中止になったため。一時は「給食のクジラ経験があるかないかは、おじさん度のバロメーター」といわれるほどの急激な減少でしたが、2008年ごろからは徐々に復活を果たしています。
たとえば、山口県下関市では年間12回、学校給食にクジラ料理が登場します。2016年2月3日の節分の日には、「大きなものを食べて邪鬼をはらう」という山陰の風習にちなんで、下関市・長門市が共同で「学校給食・くじら交流の日」を実施。かつてのような肉の代用感覚ではなく、「日本伝統の食文化を守る」スタンスの強いのが、トレンドのようです。
佐賀県の呼子、山口県の仙崎、宮城県の女川、和歌山県の太地など、日本各地に点在する捕鯨基地を訪ねた小泉氏は、基地の近くの寺院にクジラを供養する「鯨墓」があり、戒名までつけられた例もあることを紹介しています。
ときおり浅瀬や岩場に座礁するクジラを、日本人は「寄り鯨」と呼び、海神からの賜り物として珍重しました。漂着神として信仰される「えびす」神は、クジラそのものだとする地方もあるほどです。
70年前の戦後混乱期、日本人の動物性たんぱく質は70%までクジラで支えられました。低い食料自給率に悩む日本が、今以上に輸入牛肉に頼るようになれば、万が一供給がストップした際、「クジラを食べられない」日本人は何を食べればいいのでしょうか。
今年は夏バテ予防に、「ウナギとクジラ、どっちにしようか」とひとしきり迷ってみるのもいいかもしれませんね。
給食によみがえる「クジラの竜田揚げ」
昭和30年代から40年代の風物詩に、学校給食の「クジラの竜田揚げ」を挙げる人も多いでしょう。当時高かった牛・豚・鶏肉の代わりに安価な鯨肉を、少しでもおいしく子どもたちに食べさせるために開発されたメニューでした。そんな「クジラ給食」が消えたのは、1987年に南極海での商業捕鯨が中止になったため。一時は「給食のクジラ経験があるかないかは、おじさん度のバロメーター」といわれるほどの急激な減少でしたが、2008年ごろからは徐々に復活を果たしています。
たとえば、山口県下関市では年間12回、学校給食にクジラ料理が登場します。2016年2月3日の節分の日には、「大きなものを食べて邪鬼をはらう」という山陰の風習にちなんで、下関市・長門市が共同で「学校給食・くじら交流の日」を実施。かつてのような肉の代用感覚ではなく、「日本伝統の食文化を守る」スタンスの強いのが、トレンドのようです。
クジラに戒名をつけ、供養してきた日本人
一方、「一度失われた食文化は戻らない」という危機感から、商業捕鯨が禁止された年に始まったのが、「クジラ食文化を守る会」。日本のNPOの先駆けです。その会長を務めるのは、10MTV講師で東京農業大学名誉教授の小泉武夫氏。小泉氏によると、日本人とクジラの関係は決して切れない深いものだそう。佐賀県の呼子、山口県の仙崎、宮城県の女川、和歌山県の太地など、日本各地に点在する捕鯨基地を訪ねた小泉氏は、基地の近くの寺院にクジラを供養する「鯨墓」があり、戒名までつけられた例もあることを紹介しています。
ときおり浅瀬や岩場に座礁するクジラを、日本人は「寄り鯨」と呼び、海神からの賜り物として珍重しました。漂着神として信仰される「えびす」神は、クジラそのものだとする地方もあるほどです。
反捕鯨国が日本人にクジラを食べさせたくない理由とは?
小泉氏は主張します。「いま日本に"捕鯨禁止"を強く迫っているのは、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの3国。いずれも日本に牛肉を輸出している国ばかり。これは、日本に牛肉を売りたいからです。そして、アイスランドやノルウェーは商業捕鯨をして良いのに、なぜ日本はダメなのか?こういった理不尽もあります。今やクジラは、人類の食、環境といった問題を超えて、政治や経済の道具に使われているのです。」70年前の戦後混乱期、日本人の動物性たんぱく質は70%までクジラで支えられました。低い食料自給率に悩む日本が、今以上に輸入牛肉に頼るようになれば、万が一供給がストップした際、「クジラを食べられない」日本人は何を食べればいいのでしょうか。
今年は夏バテ予防に、「ウナギとクジラ、どっちにしようか」とひとしきり迷ってみるのもいいかもしれませんね。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは
日本の財政と金融問題の現状(4)日本が目指すべき成熟国家への道
機関投資家や経営者の生の声から日本の金融市場の問題点を見ていくと、リスクマネーを供給するための市場づくりや人材育成等の課題が浮き彫りになる。良質なスタートアップ企業を育てるにはどうすればいいのか。今こそアジア的...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/07/01
相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは
地政学入門 ヨーロッパ編(9)EUの深化・拡大とトルコの問題
国際政治の理論として国同士の経済交流、相互依存が安全保障、つまり平和を維持できると伝統的に考えられてきたが、今般の国際政治ではそれは必ずしも当てはまらないようだ。そこでEUの問題である。国の垣根を越えて世界国家に...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/30
最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか
第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ
反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か
昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/25
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
私たちに欠かせない「睡眠」。そのメカニズムや役割についていまだ謎も多いが、それでも近年は解明が進み、私たちの健康に大きく関与することが明らかになっている。まずは最新情報を盛り込んだ睡眠が果たす5つの役割を紹介し、...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/05