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DATE/ 2023.10.18

ハロウィンが日本に定着した6つの理由

ハロウィンが今年もやってくる

 ここ数年、日本でも急速に定着してきたハロウィン。10月31日が近づいてくると、ハロウィングッズがたくさん店頭に並び、当日の夜には若者が仮装して街へと繰り出してはワイワイと大盛り上がり。また、ノリのいい企業がハロウィン・パーティを催して取引先との懇親を深めたり、「ハロウィン女子会」なるものが現れるなど、活況の度合いを増しています。

 よくも悪くも「若者文化の最前線」として注目される渋谷のセンター街での“はっちゃけっぷり”は、毎度おなじみのニュースのネタに。喧騒が終わった早朝にゴミを自主的に片付ける人たちの気遣いをめぐって、ネットで議論が巻き起こることも珍しくありません。

 いまひとつ乗り切れない人がいる一方で、今年もさらなる盛り上がりを見せることでしょう。

そもそもハロウィンって何?

 ハロウィンがここまで定着した理由を探る前に、「そもそもハロィウンとは何なのか?」について調べてみました。

 もともとハロウィンは古代ケルト人のお祭りが起源。秋の収穫を祝い、悪霊を追い払うために行われていました。それが、カトリックの教会が11月1日に定めた祝日「諸聖人の日(万聖節)」の前夜祭として、継承されていったのです。

 ちなみに「諸聖人の日(万聖節)」とは、聖人と殉教者に祈りを捧げる日のこと。また、この日には、死者の霊が訪ねてくるとも言い伝えられてきました。このように古代ケルト人の風習にカトリックの祝祭が融合したハロウィンは、そのうち宗教色を薄め、子供がメインのお祭りに。かぼちゃのお化け「ジャック・オー・ランタン」を飾り、お化けの仮装をした子供達が「お貸しをくれないといたずらするぞ!」と言って家々を回って歩くようになったのです。

 アメリカでは『ハロウィン』というホラー映画のシリーズが生まれたり、ティム・バートン監督のディズニー映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』が大ヒットするなど、日常的なエンターテインメントとして楽しまれています。

 しかし、それはアメリカでのこと。日本ではかぼちゃのお化けをなんとなく見たことがあるくらいで、まったく定着していませんでした……。

ハロウィンが日本に定着した理由は?

 では、なぜハロウィンが日本に定着したのでしょう。その理由を考えてみました。

1:東京ディズニーランド
 東京ディズニーランドは1997年からハロウィンのイベントを開催。日本でのディズニー人気を考えるに、このイベントがハロウィンの知名度を上げるに役立ったことは否めません。

2:原宿と川崎のハロィンパレード
 日本におけるハロウィン・イベントは原宿にある雑貨&おもちゃショップ「キディランド」が行ったものが最初といわれています。今年、原宿で行われるハロウィン・パレードは34回目。また「カワサキハロウィン」は今年で20周年。このふたつの街はハロウィンの発信地として外せません。

3:コスプレ文化の定着
 「ヲタカルチャー」の枠を超え、「クール・ジャパン」担うカルチャーとして世界に広まっているコスプレ文化。同人誌のイベント「コミケ(コミックマーケット)」では、素人のレベルを超えたコスプレ衣装をまとったマニアたちが、目耳を集めています。また、ビジュアル系バンドや、きゃりーぱみゅぱみゅといった原宿系アーティストに見られるゴシック系コスプレ文化も、ハロウィンの仮装と相性は抜群。コスプレという日本独自のユース・カルチャーも、ハロウィンの仮装の敷居を下げた一因だろうとにらんでいます。つまり「私たちもハロウィンコスを楽しもう!」というわけですね。

4:新たな商業マーケットの創出
 新しいブームを煽り、新しいマーケットを創出し、新しい商品をどんどん投入していく。これは企業にとってマストで取り組まなければならないこと。食品、玩具、外食、ファッション、小売業、エンターテインメントなどの業種にとってはなおさらです。ハロウィン商材のCMもたくさんテレビで流れるようになりました。そんな企業の“仕掛け”がハロインを広まった背景にあるのは確かでしょう。

5:SNSの発達
 SNSでの“つながり”もハロウィンのお祭り気分を盛り上げるにひと役買っているのではないでしょうか。とくにFacebookには「ハロウィン自慢」ともいえる投稿が、写真とともに10月31日の夜にあふれ出します。SNSによる情報拡散も「楽しいことに乗り遅れるな!」というムードに拍車をかけている一因だと考えられます。

6:「楽しければいいじゃない」というノリ
 周りと足並みを揃えていないと心配。そんな“右向け右”の性質が「ハロウィンに乗り遅れるな」という同調意識を加速させていきます。そこに旅の恥はかき捨てとばかり、「楽しければいいじゃない、ハメを外していいじゃない」というノリが加わることで、最近のちょっと“やりすぎ”の喧騒を生んでいるように思えてなりません……。

 以上の6点が、“ハロウィン騒ぎ”の背景に流れている大きなトピックではないでしょうか。

末長い“日本のハロウィン”を育てる

 先に挙げた渋谷のセンター街では、何かイベントがあるとスクランブル交差点を埋め尽くしてのハイタッチも騒動を起こしています。もちろん新しいイベントが定着して、日々の楽しみが増えるのはとてもいいこと。でも、周りに迷惑をかけてしまっては本末転倒です。

 日本人は節度を重んじることを美徳としています。また、海外の文化を独自のものにアレンジすることを得意としています。せっかく定着してきたハロウィンですので、一過性のイベントとして消費して終わりではなく、日本独自のお祭りとなるように冷静な視線を持つことも必要ではないでしょうか。

 東京ディズニーランド、原宿文化、コスプレ文化など、日本にはハロウィンが定着した文化的下地があります。“日本のハロウィン”を育てていく意識を持つことで、きっと10年先、20年先にも続くエンターテインメントになっていくはずです。
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