社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.11.24

なぜ人は当たらない宝くじを買うのか?

宝くじは「当たらない」

 宝くじを「当たらない」と思って買っている方、意外と多いのではないでしょうか。確かに、絶対に1等を当てようと思えば、くじを買い占めるしか方法はありません。しかし、宝くじ活性化検討会(総務省自治財政局発表)の資料によると、宝くじの売上(およそ1兆円)のうち、当せん金率(売上のうちで当せん金に回る率)は47パーセントとなっています。

 つまり、あなたがもし超がつくほどの大金持ちで、宝くじを1兆円で買い占めたとしても、なんと5000億円近く損するだけなのです。そして、実はこの当せん金率は、他の公営競技と比べても低くなっています。例えば、競艇、競輪、オートレース、競馬はいずれも74.8パーセントです。

 さらに公営競技は、さまざまな情報やデータの蓄積で、当せん確率を上げることも不可能ではありません。しかし、宝くじはただのランダムな数字です。こちらの意図や過去の分析が介入する余地はほとんどありません。

人はなぜ「当たらない」宝くじを買うのか?

 では、人はなぜ当たらない宝くじを買うのでしょうか。知っての通り、宝くじは投資として考えれば、全く元の取れないものです。たとえば、昨年末のジャンボ宝くじの場合、1等が当たる確率はなんと0.000005パーセント。宝くじは資産を増やすための投資ではありませんから、これはしかたないことです。百歩譲って投資として考えても、夢への投資です。つまり、着実に儲けたいのではなく、大きく当てたいのです。当たる「確率」ではなく、1等7億円の「夢」を買っているのです。

 さらに、ここで注目したいのは、「ボラティリティ(Volatility)」という考え方です。ボラティリティとは、証券用語としてよく使われる言葉で価格変動の度合いを示しますが、可能性の高低を問題にする「確率」とは異なり、どのくらい当たる「可能性」があるか、つまり変動幅に関する視点を意味します。

 たとえば、300円買って50パーセントの確率で倍の450円になるとしても、そこまでの魅力は感じませんよね。しかし、確率は0.000005パーセントでも300円が7億円になるといわれたらどうでしょう。普通の生活をしていて、7億円という金額にうっすらとでも手がかかる可能性が、あなたにはあるでしょうか。「億万長者」になれる可能性が「ある」ということ、これが多くの人が宝くじを買う理由と言えるでしょう。

 では、その「ボラティリティ」を楽しみながら、当せん確率も上げたい場合はどのように買えばよいのでしょうか。

「ボラティリティ」と「当せん確率」

 まず注目したいのは、連番で買うという方法です。前後賞があるということは、もし1等が当たった場合、必ず前後賞のどちらかが当たる計算になります。連番ならば、10枚買うことで前後賞が狙えるため「ボラティリティ」は上がります。ただ、連番で3枚より多く買うと、それ以上、「ボラティリティ」に急激な変化は起こらないという話もあります。また、たくさん買いすぎるとそれだけ出費が増えてしまうので、気楽に楽しめなくなってしまいますよね。

 さらに「当せん確率を上げたい」という方は、共同購入してみるのはどうでしょうか。夢を共有しながら、より多く買うことができます。しかし、ここで1点、注意すべきことがあります。共同購入で仮に高額当せんした場合は、当選金は全員で受けとりに行きましょう。もし、一人が受けとって、ほかの人に分配した場合、多額の贈与税が請求される場合があります。そうなったら夢どころではありません。

 「宝くじは当たらない」とは言いますが、ボラティリティを高めて、「夢を買う」のも良いかもしれません。なお、おわかりだと思いますが、これは一つの方法であって、当せんを保証するものでもなんでもありませんので、あしからず。

<参考サイト>
・宝くじ公式サイト
http://www.takarakuji-official.jp/
・総務省ホームページ:宝くじ活性化検討会(第1回)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/takarakuji_kaseika/50183.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール

内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた主な要因として、二つのオウンゴールを挙げる島田氏。その一つとして台湾のモリス・チャン氏によるTSMC立ち上げの話を取り上げるが、日本はその動きに興味を示さず、かつて世界を席巻して...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/25
2

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本

「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
3

雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命

雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界

全ては光だと説く空海が、なぜその著書『秘蔵宝鑰』で、「死に死に死に死んで死の終りに冥(くら)し」と書いたのか。『秘蔵宝鑰』については、以前のテンミニッツ・アカデミー講義でも解説したが、そこから半年かけてこの書を...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/26
4

習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍

習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍

習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴

国際社会における中国の動きに注目が集まっている。新冷戦ともいわれる米中摩擦が激化する中、2021年7月に中国共産党は創立100周年を迎えた。毛沢東以来、初めて「思想」という言葉を党規約に盛り込んだ習近平。彼が唱える「中...
収録日:2021/07/07
追加日:2021/09/07
小原雅博
東京大学名誉教授
5

熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン

熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン

熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法

「熟睡とは健康な睡眠」だと西野氏はいうが、健康な睡眠のためには具体的にどうすればいいのか。睡眠とは壊れやすいもので、睡眠に影響を与える環境要因、内面的要因、身体的要因など、さまざまな要因を取り除いていくことが大...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/23
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授