テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.02.20

肥満と貧困―貧しいのに太ってしまうその理由とは?

 「肥満はコスト高!」とは、いうまでもなく肥満にいたる食費だけのことではありません。もし、あなたがかつて標準体型であり、加齢とともに肥満になったなら、健康リスクとともに、肥満を許した性格そのものが、人生における経済的なコスト高を許す傾向を持っている可能性があるのです。

「貧困肥満」問題~金持ちの象徴だった「肥満」が貧困の象徴に~

 タニタのサイトでは、経済協力開発機構(OECD)のレポートを紹介しつつ、肥満と経済の関係を分かりやすく解説しています。そこでOECDのレポートを大きくまとめると、以下のようになります。

・肥満になると医療費がかかる=健康リスク+経済リスク増
・肥満者の所得は肥満でない人より少ない
・肥満者の子どもは肥満になりやすい

 米国のみならず日本においても経済格差の広がりにおいて、「貧困肥満」という問題が取り上げられるようになりました。かつてはお金持ちの象徴であった肥満が、今や貧困の象徴となりました。

 その理由は、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」でも明らかにされた栄養バランスの偏りによる肥満化傾向です。具体的には、「低所得世帯は高所得世帯に比べて、肉や野菜の摂取が少なく、穀物の摂取が多く、栄養バランスが取れていない」というものです。

肥満者は借金しやすい傾向にある

 先述のサイトでは別の視点として、「肥満や痩せは、多くの場合、医学の問題として取り上げられるが、実は経済学の問題でもある」という、大阪大学・池田教授による体重と経済の関係についての研究を紹介しています。

 池田教授は、借金の有無と肥満者の割合という調査統計データから、肥満者は借金しやすい傾向にあることを示し、肥満に至る性格や行動分析を行っています。その結果、「せっかち」な性格や、「先送り」「ドタキャン」といった行動が、肥満につながりやすい傾向にあることを説明します。

 この傾向は、食べたいという誘惑に負けることから、脂肪という不要な負債を抱えること、健康維持のための自制(計画実行性)に欠けることから、「貧困肥満」から抜け出せない可能性をも示唆します。米国のホワイトカラー層では、肥満・喫煙習慣が「自己管理できない」ことを示す指標とされている話とも重なるようです。

食事の質を変えることにお金をかけるべき

 肥満だから貧困なのか、貧困だから肥満なのか、どちらにせよ、病気でない習慣性肥満であるなら、リスクマネジメントの見地からも、脂肪と借金という負債の連鎖を断ち切るようなダイエット習慣を心がけたいところです。

 もしあなたが肥満化傾向にあり、穀物類が中心の食事をしているのであれば、そこから食物繊維、ビタミン、ミネラルを豊富に含む野菜や果物中心の食事にするなど、食事の質を変えることにお金をかけるべきではないでしょうか。

 このような、体質改善を意図した未来への先行投資をすることが、人生において最も有効なリターンを得ることにつながるでしょう。

<参考サイト>
・タニタの健康応援ネット(タニタの健康コラム)
http://www.karadakarute.jp/tanita/column/columndetail.do?columnId=233
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に

世界では「創造性がどれくらい大事か」という問題意識が今、急激に高まっている。創造性とは全ての人にあり、偏差値などでは絶対に計れない、まさに無限軸の創造性のこと。そうした創造性を育む学びが「STEAM教育」である。最終...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/18
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
2

なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか

なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景

国際的に見て、政府の債務残高が大きい日本。その背景には、バブル崩壊後の財政赤字を取り戻せていないことがあった。その一方で、預金残高も高い日本。所得が低いのに預金が多い日本の謎を解説する。(全4話中第2話)
※...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者
3

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力

人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
4

「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実

「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実

戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌

日本の陸軍は第二次世界大戦を「100年戦争」であると見なした。勝てる見込みは少なかったにもかかわらず、天皇と国民の一体性という精神主義によって、総力戦になだれこんでいった。石原莞爾が満州事変を起こした時に描いたスト...
収録日:2020/02/26
追加日:2020/08/04
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
5

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率

日本の政治史を見る上で地理的条件は外せない。「島国」という、外圧から離れて安心をもたらす環境と、「山がち」という大きな権力が生まれにくく拡張しにくい風土である。特に日本の国土は韓国やバルカン半島よりも高い割合の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/15
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家