法隆寺は聖徳太子と共にあり
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「日没する処の天子」と書かれても煬帝が激怒しない理由
法隆寺は聖徳太子と共にあり(8)古代史の眺め方
大野玄妙(法隆寺第129世住職、聖徳宗第6代管長)
「日没する処の天子」と書かれても、中国の皇帝は怒らなかった。その謎を解くには、この文言の前に書かれた部分を読解し、そして当時の国際情勢と突き合わせなければならない。法隆寺管長・大野玄妙氏が、学校では教えてくれない歴史の見方とその面白さを語った。(全8話中最終話)
時間:13分34秒
収録日:2016年3月9日
追加日:2016年11月19日
≪全文≫

●「日没する処の天子」は後世に生まれたエピソード


 中国の話をしましたので、それに関わる話をしましょう。お手元の資料のAの25番と26番を見てください。これは遣隋使を派遣した時の資料です。この資料は25番に、「秋七月戊申朔庚戌(ふみづきの つちのえさるのついたち かのえいぬのひ)。大禮小野臣妹子遣於大唐(だいらい をののおみいもこをもろこしにつかはす)」。この当時はもう隋から唐ではないのですが、こういう風に表現されています。恐らくそういう風に書いてしまったのでしょうね。『日本書紀』は奈良時代に書かれているわけですから、当然そういう風に書いたのでしょう。そして「以鞍作福利爲通事(くらつくりのふくりをもっておさとす)」。鞍作りの福利は通訳として付いていったわけです。そういう記事が載っています。

 その次です。いま取り上げた中国の文章の中で、皆さんが一番よく知っておられるのは、「日出處天子致書日沒處天子無恙云云(ひ いずるところのてんし しょを ひをぼっするところのてんしにいたす つつがなきやいなや)」という部分ですね。しかし実はこの部分は、日本のある時期に、これだけを抜き出して国粋的な形で利用された文章なのですね。その前にこれだけの文章が付いているということです。このことを理解していただきたいと思います。

 そこでその前の部分を読んでみます。「大業3年」、これは隋の大業3年です。「其王多利思比孤遣使朝貢(そのおう たりしひこ つかいをつかわしてちょうこうす)」。「使者曰(いわく)」、「聞海西の菩薩天子重興佛法(かいせいのぼさつてんし かさねてぶっきょうをおこすときく)」と読んでもいいですし、「聞く」というのを先に読んでいっても構いません。どちらもございます。「故遣朝拜兼沙門數十人來學佛法(ゆえにつかわしてちょうはいせしめて かねてしゃもんすうじゅうにんきたりて ぶっぽうをまなぶ)」と。「其國書曰(そのこくしょにいわく) 日出處天子致書日沒處天子無恙云云」という文章になっています。

 この中で非常に重要視されるのは、まず一つ、隋の皇帝が怒るはずがない文章がこの中に含まれていることです。それは何かといいますと、「海西の菩薩天子」です。皇帝のことを菩薩天子だと言っているのです。


●中国皇帝が本当に激怒したかは疑わしい


 そして「重ねて佛法を興す」。これは、その当...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
学びとは何か、教養とは何か
教養の基本は「世界史」と「古典」
本村凌二
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
逆境に対峙する哲学(3)修行・物語・語りの転換
武士道に学ぶ自己訓育――幻想としての順境に抗するために
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(2)コンピュータの歴史
量子コンピュータの転機となった1990年代の発見とは何か
武田俊太郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫