東大寺建立に込められた思い
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
東大寺の昔の宗派は八宗兼学ー最高の仏教大学としての歴史
東大寺建立に込められた思い(2)この世を蓮華蔵世界に
哲学と生き方
北河原公敬(東大寺長老)
東大寺長老・北河原公敬氏によれば、東大寺はもともと、様々な宗派について学ぶ場所だった。そんな東大寺の建立を、聖武天皇が思い至った理由は、ある講義だった。その講義に感銘を受けた聖武天皇は、そこで展開された蓮華蔵世界を、当時の社会にももたらそうとしたのである。(全7話中第2話)
時間:8分51秒
収録日:2016年3月8日
追加日:2016年12月3日
≪全文≫

●かつて東大寺は、仏について学ぶ大学だった


 今日は皆さまに、その聖武天皇が大仏を造立しようということで発せられた詔を見ながらお話を進めたいと思います。その前に、われわれの寺について少し申し上げます。詔や聖武天皇のお話にも関わりがあります。もともと東大寺は、今でこそ華厳宗という宗派を名乗っておりますが、本来は学問寺でした。勉強するところだったのですね。いろいろな宗派を勉強する。昔は、六宗だとか八宗兼学と言いました。

 明治以降になると、日本のお寺は、必ず何らかの宗に所属しないといけないという法律ができています。あちらの宗とこちらの宗というように、幾つもの宗にまたがることはいけないということになっています。一宗一派です。

 そのため明治以降、東大寺は最もゆかりのある華厳宗を名乗っていますが、当時は八宗兼学と言っていました。八宗は、奈良時代に日本に入ってきた宗派です。学校の歴史で習ったかもしれませんが、奈良時代に華厳宗や、法相宗、律宗、そして現在はありませんが三論宗、成実宗、倶舎宗、この六つが日本に伝わります。そして平安時代になってから、真言宗と天台宗が日本に入ってきます。ご承知のように(伝えたのは)、弘法大師(空海)と伝教大師(最澄)です。この二つを合わせて八宗です。東大寺は、その八宗の宗派を勉強する学問寺だったのです。仏教大学と考えていただいてもいいかもしれません。

 結構有名な方がこの東大寺で学び、自分の宗派なり、お寺なりを興している場合もあります。今、名前が出ましたが、弘法大師(空海)ですね。この方は、東大寺にもおられました。そして東大寺で第14世の別当職にもなっています。私は第220世で、第14世は弘法大師がなっておられるのです。もちろん、高野山の金剛峯寺も興しておられます。あるいは、醍醐寺を興された理源大師(聖宝)も、東大寺におられました。

 また少し状況が違いますが、京都にある建仁寺というお寺、こちらは臨済宗です。この臨済宗を興された栄西(ようさい、「えいさい」とも読みます)は、東大寺の鎌倉時代復興の時、2代目の勧進職を勤められています。勧進は、寄付を集める職です。そういう方が、建仁寺の開祖なのです。このように、いろいろな方が東大寺と関わりがありました。東大寺とはそのようなお寺でした。


●聖武天皇は、理想世界の実現を目指した


 天平12年に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
編集部ラジオ2025(20)納富信留先生の「アカデメイア」講義
プラトンのアカデメイアからテンミニッツ・アカデミーへ
テンミニッツ・アカデミー編集部
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉