東大寺建立に込められた思い
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東大寺大仏建立の理由ー聖武天皇のいう「菩薩の精神」とは
東大寺建立に込められた思い(3)あまねく発展を願う
北河原公敬(東大寺長老)
大仏造立の際に聖武天皇が出した詔では、何が語られているのか。東大寺長老・北河原公敬氏が解説する。聖武天皇は、自らを菩薩になぞらえ、この世の全てを慈しもうとした。菩薩とは、自分以外のものにも手を差し伸べ、一緒に救われようとする存在だ。北河原氏は、現代にも同じことが重視されるべきだと語る。(全7話中第3話)
時間:18分19秒
収録日:2016年3月8日
追加日:2016年12月10日
≪全文≫

●大仏造立の詔に見える、聖武天皇の思い


 では大仏造立の詔に入ろうと思います。これは『続日本紀』の中に出てくる記事をそのまま転用しています。「大仏さまにこめられた思い:一枝の草、一把りの土」というタイトルを書きました。原文の書き下し文を書いてありますので、それをお読みいただけたらと思います。

 詔は、「朕薄徳を以って、恭しく大位を承け、志兼済に存して勤めて人物を撫す」という言葉で始まります。朕は、もちろんお分かりだと思いますが、聖武天皇ご自身のことです。「薄徳をもって」、つまり聖武天皇は、ご自身が自分のことを徳が薄いと思っておられるのです。自分自身は徳が薄い、にもかかわらず、「恭しく大位を承け」た。天皇についておられるわけですから、大位とは天皇の位を意味します。自分は徳がない、徳が薄いにもかかわらず天皇の位に就いているということです。そして「志(こころざし)兼済に存して、勤めて人物を撫す」ですが、志としては、あらゆるもの、全てのものを救おうとしてきた、人やモノの全てに、ご自身は努めて慈しみをかけてこられたと言われています。

 そして「率土の浜すでに仁恕に霑うと雖も、普天の下、未だ法恩洽からず」と言われます。「率土」とは、地面、地の続く限り、地平線の果てまで、です。「仁恕(じんじょ)に霑(うるお)うと雖も」は、先ほどの言葉と同じで、思いやりや憐れみなどの心が、ずっと地の続く限りすでに潤っている、ということです。しかしそうはいっても、「普天の下、未だ法恩(ほうおん)洽からず」、つまりそういう思いやりの心や憐れみの心が行き渡っていたとしても、天下全てに「未だ法恩洽からず」。この法恩とは、実は仏法の恩のことです。仏法の恩が行き渡っていないといっているのです。

 法恩とは、仏の教えです。仏の教えのそれが行き渡っていない。つまり聖武天皇という方は、先ほど紹介したように、華厳経を自ら聞かれるくらいの方ですから、仏教に対して非常に心を寄せておられたのです。歴代の天皇では、仏教を重要視された天皇もおられたのですが、聖武天皇という人は、神道に対してだけでなく、仏教に対しても非常に心を寄せておられました。ですから、何事も為政者として携わられるときには、この仏教、仏法を念頭に置いておられました。天皇としては、聖武天皇が、歴代では最も仏教に重きを持っておられた、仏教を取り入...

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