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データを活用するには、目的を先に決めること

今後の技術革新と企業経営(2)データを活用するために

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
概要・テキスト
近年、ビッグデータが注目を浴びている。しかし、集めただけでは何も役に立たない。データの活用に不可欠なのは、経営する側がそれを使って何を行うのかという目的設定であると、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏は語る。(2018年4月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「今後の技術革新と企業経営」より、全8話中第2話)
≪全文≫

●データビジネスには、それを支える国家戦略が重要


 ここから、データやAIの話をしていきます。ですが、先にこれに関連した重要な話をします。それは、少し経営の話から離れますが、データに関する国家戦略の重要性についてです。

 データビジネスが重要だという話は、皆さんもご存じだと思います。そして、データビジネスにおいては、それを支える政策や法律が重要になってきます。しかしながら日本では、その政策や法律が決定的に遅れています。例えば現在、データを収集しているのはGoogleやFacebookであり、データの帰属先はアメリカになっています。

 データに関して中国は何をしているかといえば、GoogleやFacebook、Uberなどを排除して、自国の中でこれらに近いような会社を作り、そこにデータをためさせています。

 ヨーロッパも、GoogleやFacebookなどにデータを全部持っていかれることに、非常な危機感を持っています。そこでヨーロッパは、競争政策などの枠組みの中で、データを個人に帰属させようとしています。データをユーザー個人のものとすることでヨーロッパに帰属させる、そういう戦略的な対応を取っています。

 このように、中国やヨーロッパはデータ収集に対する対応をしているのに、日本だけが具体的なレベルでは無策です。自由だといえば自由なのですが、いろいろな人に活動をさせて、活動していった人がデータを持っていけるような形になっています。

 しかし、情報やデータの蓄積に関しては、なかなか企業だけでできることではありません。法律や制度の整備を一緒に行っていく必要があります。そういう意味でデータに関する国家戦略が決定的に重要になるのですが、日本は今のところそうした動きが遅くなっています。

 前回、日本企業は動きが遅いということ、また、産業間の縦割り構造を超えるようなビジネスが必要だということをお話ししました。その話は、政府や規制や行政に関しても、全く同じように当てはまります。

 日本では、行政の動きや、法律の作成や改正への動きが遅いのです。また、監督官庁が縦割りであるため、業界をまたぐような動きに関しては、そうして何かが決まるようなことは難しい。これが今の実情です。このような実情を変えていくためには、行政の方もかなりの改革が必要だと思います。


●ビッグデータはそのままでは役に立たない


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