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「ローカル5G」によって進んでいく情報通信の民主化

5Gとローカル5G(7)ローカル5G導入に向けて

中尾彰宏
東京大学大学院情報学環 教授
情報・テキスト
2019年度から、5Gは地域での利用(ローカル5G)に関する実証研究が進んでいる。ローカル5Gは、東京を拠点とする全国事業者以外を対象として、地域で主体的に通信を利用する自治体や個人のニーズに応えるために推進されている。こうした試みにより、情報通信の民主化が進んでいく。(全9話中第7話)
時間:09:29
収録日:2019/12/04
追加日:2020/01/13
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≪全文≫

●地域での5Gの利用を目指した準備が進んでいる


 ここからは、最後の話題として、ローカル5Gについてご説明したいと思います。

 ここまで、実証実験によって、5Gの商用化のための準備が進んできているというお話をしました。その中で、特に2019年度は、地域での利用に関する実証実験が進んでいます。

 この地域での利用は、非常に重要であるとともに、いろいろな課題があります。例えば、皆さんが例えばNTTドコモやau、ソフトバンク、楽天モバイルのような全国通信事業者、つまり企業の立場であったとします。そうすると皆さんは当然、大都市で基地局を整備し、サービスをして、ビジネスを行います。これは非常に魅力的なプランなのですが、地方については、最初はなかなか手が回らないと思います。また、地域に進出しても、すぐにビジネスになるとは限りません。つまり、地域の人に対して「5Gはうちの地域の方にはなかなかやってこないな」という実感を抱かせてしまいます。


●ローカル5Gの魅力は、主体的な通信の活用にある


 そうしますと、5Gの全国展開がなかなか進まないという危惧が生まれます。そこを解決するアイデアとして、ローカル5Gという政策が進んでいます。これは、全国事業者以外を対象とした政策です。例えば、われわれのような大学の教員やケーブルテレビ、MBMO(仮想移動体通信事業者)といった格安スマホをビジネスとしてやっている企業など、通信を自分で使いたい人が、そのインフラを自分で整備して、5Gという最新技術を使うことができるようにしようという政策なのです。つまり、ローカル5Gは、地域や産業の個別のニーズに応じて、地域の企業や自治体等、さまざまな主体が、自らの建物あるいは敷地内で、スポット的に柔軟に構築できる5Gシステムを指しているのです。

 これは、先ほど申し上げた携帯事業者によるエリア展開が遅れる地域にとっては、5Gシステムを先行して構築が可能です。その点で、地域へ5Gの普及を促進するという効果があります。

 ローカル5Gのもう1つの利点は、使用用途に応じて必要となる性能を柔軟に設定することができるという点です。例えば、シリーズ内でお話ししたドローンのアプリケーションは、端末を積んだドローンから通信を行うもので、「アップリンク」といわれる上り方向の通信を必要とします。それに対して、通常はコンテンツが端末にやってくる「ダウンリンク」といわれる方向の通信が大部分を占めます。この逆方向の通信であるアップリンクを利用する場合、周波数の帯域を増大させる必要があります。そのため、アップリンクを可能にするためには、通信事業者さんが設定する必要があるのです。しかし、ローカル5Gにおいては、アップリンクの方の帯域をグンと増やすなど、必要に応じて個人が柔軟な設定をすることができるようになります。


●ローカル5Gは通信障害や災害などの影響を受けにくい


 その他にもローカル5Gは、他の場所での通信障害や災害などに影響を受けにくいという利点もあります。大体の通信は、東京のような大都市のネットワークを経由しています。そうすると、通信障害や災害が大都市に起こった場合、地方では通信が途絶えてしまうという問題があります。それに対してローカル5Gのような地方・地域に閉じた通信環境である場合、こうした災害や通信障害の影響を受けにくいのです。

 こうした点に関するローカル5Gのセミナーを行うと、短時間で満員になってしまいます。それぐらい世の中の関心は今、非常に高いのです。

 ということで、こういったローカル5Gの普及を考える上で、これらの点は抑えておく必要があります。


●ローカル5Gが使用する周波数と導入スケジュール


 さらに、ローカル5Gについて、少し詳しいお話をします。

 ローカル5Gが使用する周波数と導入スケジュールについてです。2019年度においては、28GHz帯、つまり大容量通信が行える周波数帯を使用するための条件(周波数共用条件)の検討を急ピッチで進め、早期の制度化が図られています。具体的にいうと、28.2GHzから28.3GHzについては、皆さんが自由に申請をして使うことができる周波数として解放される予定です。これは、2020年度以降のことです。

 遠くまで飛ぶ周波数帯である4.5GHzについては、ローカル5Gの次の周波数帯として使用が予定されています。ただしこれについては、検討がまだ終わっていません。たくさんの人がいろいろな地域でローカル5Gを利用すると、たくさんの電波が干渉してしまい、お互いに使えなくなってしまう可能性があるからです。こうした事態をどう解決するかという、干渉調整の検討が、まだなされている途中です。

 そこで2019年度からは、28GHz帯で100MH...
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