●スノーデン氏が明らかにしたアメリカ諜報機関の闇
一方、アメリカに関しては、ご存じの通り、エドワード・スノーデンという人がいます。彼は、アメリカ合衆国の安全保障局(NSA)、それから中央情報局(CIA)の元職員です。彼によるNSAによる国際的監視網(PRISM)の実在の告発は、当時、大きなニュースになりました。
スノーデン氏はイギリスのガーディアン紙に、NSAの極秘ツールであるBoundless Informantの画面を示しながら、クラッパー国家情報長官が議会公聴会で否定したその3月に、合衆国内で月間30億件のインターネットと電話回線の傍受が行われていたことを明らかにしました。標的になった情報は、通話者の氏名、住所、通話内容のみならず、メタデータも収集していました。通話者双方の電話番号、端末の個体番号、カード番号、時刻、基地局情報から割り出した位置情報も収集していたのです。
インターネット傍受はアプリケーションプログラミングインターフェースのような形のバックドアによるもので、コードネームをPRISMと名づけられた検閲システムによって行われていると彼は話しました。標的情報は電子メール、チャット、電話、ビデオ、写真、ファイル情報、ビデオ会議、登録情報などです。
通信傍受については、マイクロソフト、ヤフー、グーグル、ユーチューブ、スカイプ、アップルなどの協力が明らかになりました。フェイスブックには、2012年の後半6カ月で、NSAから1万8000から1万9000個のユーザーアカウントについて情報提供依頼があったと報告されています。
スノーデン氏によると、NSAは世界中で6.1万件のハッキングを行っています。そのうち数百回以上が中国大陸と香港の政治、ビジネス、学術界などを目標としていました。中国へのハッキングは2009年以降活発化しました。NSAには外国との共同作戦のための専門委員会も設置されていることを暴露しました。ガーディアン紙はスノーデン氏の極秘文書によって、NSAが38カ国の大使館も盗聴していたことをスクープしました。日本、フランス、イタリア、ギリシャ、メキシコ、インド、韓国、トルコなどの同盟国も盗聴されていました。
ワシントンDCのEU代表部への情報工作のケースでは、暗号機能付きのファックス内に盗聴器と特殊アンテナが仕組まれて、90人の職員のPC内のデータ全てを覗き見る手法で実施されていました。フランスのオランド大統領やドイツの報道官らは、これは容認できないとアメリカに苦言を呈しました。その時、オバマ大統領は、一般論として諜報機関を持つ国ならどこでもやっていると、理解を求めたといわれています。
オリバー・ストーン監督の『スノーデン』という映画の中で、スノーデンが横田基地に駐在している時に、日本が同盟国でなくなった場合に、電力システムを停止させることができるマルウェアを仕込んだという内容が語られています。真偽のほどは分かりませんが、そのような類のことをアメリカは長期間行っていたということですよね。
●アメリカがファーウェイをスパイ企業として糾弾できない理由
連邦通信委員会(FCC)はファーウェイなどの通信機器メーカーの政府調達を禁止すると発表しました。通信機器が密かに仕込まれたバックドアを用いて、敵対的外国勢力がスパイ活動を行うことができると明言しました。
それではなぜ、アメリカはファーウェイを通信スパイ企業として起訴しないのでしょうか。実はそうした名目では起訴していません。もしバックドアそのものを犯罪としてしまうと、米国にとって都合が悪いのです。通信機器には基本的に開発上、バックドアが存在します。それは製品のリリースとともに閉鎖されますが、政府が要求するものや意図的に仕込まれたものは残されます。
あるアメリカの政府関連機関の開発エンジニアは、米国政府にはファーウェイがスパイ企業として糾弾できない理由があるといいます。米国政府が開発した通信機器用のバックドア技術をファーウェイが転用しているので、バックドアの利用を禁止すると明言してしまうと、アメリカ政府のバックドア利用も批判されかねないからです。つまり、アメリカ政府も利用しているバックドア技術を中国政府も使っていると批判すると、アメリカ政府が自分で墓穴を掘るような結果になるのです。つまり、中国の情報技術は、実はアメリカのコピーだということです。
しかし、アメリカの諜報部門にとっては、ファーウェイが5Gで覇権を取ることは諜報システムのインフラの中国による支配を意味するので、とにかくファーウェイを潰しても阻止しなくてはならないと考えているようですね。
●近年の中国の国家戦略は屈辱の過去に裏打ちされている
さて、ここまでお話ししてきた中国の発展と行動は、長期的に渡って形成されてきた中国の戦略的な考え方に基づい...