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中国共産党は、中国企業の世界進出にどう関与しているのか

激動の世界情勢を読む(4)中国の戦略と世界進出

情報・テキスト
米中貿易戦争の背景には、近年中国が進めている戦略がある。「一帯一路」や技術覇権を強力に推進する「中国製造2025」といった戦略をどう見ればいいのか。また、中国の躍進の影にはどのような政治的・経済的プロセスがあったのか。特に中国政府が自国の企業の世界進出にどのように関与しているのか。(2020年2月15日開催・テンミニッツTV講演会「激動の世界情勢を読む――米中そして日本を中心に」より全12話中第4話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:22
収録日:2020/02/15
追加日:2020/03/20
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≪全文≫

●「一帯一路」は実態としてよりキャッチフレーズとして捉えると良い


―― 続いて、次のテーマに移りたいと思います。まさに今、中国や世界を見た場合、大きな背景となっているのが米中貿易戦争です。今後の世界の動きを見るにあたって、この米中貿易戦争がどのような意味を持つのか、中国とアメリカがどう動き、それが周りの国々にどんな影響を与えるか、それを見ていくのはまさに必須のことだと思います。

 この米中貿易戦争の背景を考えるとき、一番には中国の近年の戦略を見ていく必要があると思います。もちろん、皆さんすでにご存じの通り、中国が「一帯一路」戦略や「中国製造2025」戦略のような技術覇権を強力に推進することによって、それに対するアメリカの強力なリアクションが起こっている状況です。この中国の一帯一路や技術覇権の戦略について分析いただきたいと思います。曽根先生、いかがでしょうか。

曽根 「一帯一路」は、キャッチフレーズとしては非常に優れていると思います。その実態は、中国が抱える責任の重さや財政出動などを考えると、そう簡単ではありません。ただ、「一帯一路とはシルクロードのことだ」という説明を見ると、なかなかうまいキャッチフレーズだと思います。それに比べて、日本は「インド太平洋戦略」などと銘打っていますが、言葉としては少し弱いかなと感じています。そうした意味で、「一帯一路」は、実態というよりもキャッチフレーズとして捉えると良いと思います。


●欧米の予想に反して、中国は権威主義体制のまま経済成長を遂げた


曽根 技術覇権についていえば、アメリカはずっと優位にいました。しかし、例えば5Gを考えてみると、基本的にはファーウェイ(中国)、ノキア(フィンランド)、エリクソン(スウェーデン)、サムソン(韓国)の4社が関わっていますが、ここにはアメリカの会社は入っていません。「ルーセントはどうしたの?」「シスコシステムズはどうしたの?」と言った感じです。要するに、ここにはアメリカの会社はないということです(実は、日本の会社もないのですが)。このように、アメリカは技術の優位性について、これまで一貫して自分たちに自信を持っていたのですが、ここで疑問が出てきました。

 そうすると、2つの大きな反省が生まれます。1つは、中国は経済成長をして所得が伸び、中産階級(ミドルクラス)が増えたため、当然ながら国民は民主化を要求し、中国政治は民主的になるだろうということについてです。もう1つは、社会主義的な経済よりも市場経済の中で世界とつきあっていくという路線になるだろうということについてです。つまり、中国は、どちらかというとヨーロッパ人やアメリカ人が考えるようなマイルドな路線で寄ってくると考えられていたのです。そう思っていたのは中国人自身ではなく、アメリカ人やヨーロッパ人でした。しかし、実態は違うぞ、と。権威主義体制のまま経済成長し、技術でアメリカやヨーロッパに勝利するということで、これは予想とちょっと違うんじゃないかということになったのです。

 この反省が3~4年ほど前からアメリカで生じ、共和党だけでなく民主党の人やアメリカの大学の先生までも、「中国はアメリカの技術を盗んでいく」と言っているのです。それが本当なのかどうかは判断が難しいところですが、よくいわれるのは、実態として国家資本主義のほうが効率的で競争力があるのだという説で、それを中国の人だけでなく他の国の人も言い始めたのです。そこで、「では、その国家資本主義たるものはどんな仕組みなのか」、という疑問が出てくるわけです。


●中国の国家資本主義の実態はまだ明確に分析されていない


曽根 ここで、アメリカが槍玉に挙げているファーウェイについて考えてみましょう。

 資料をご覧ください。ファーウェイには18万人の従業員がいて、9万6000人が持ち株です。非上場で従業員の持ち株会社なのです。ということはどういうことか。社内には中国共産党の支部が200あり、1万人の党員がいると言われているのですが、経営とは独立しているのです。とはいえ、非上場の従業員が株を持っているという仕組みが、他の国が批判する国家資本主義なのか。いや、それは違うのではないか。中国の国家資本主義の実態は、まだ明確に分析されていない、というのが私の考えです。

 ただし、他の国から見ると技術的な優位性や競争力がある。価格は特にそうで、そこには強い競争力がある。そして経済成長率が高い。また、それに対抗するアメリカ、ヨーロッパ、日本を含めたマーケットや企業が勝てないという実態がある。ということで、そういったことがまだ十分に整理できていないと思います。そのため、特にファーウェイを槍玉にして痛めつける、という作戦をトランプ政権は取って...
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