●新型コロナウイルスに関する初動対応の遅さが問題
―― 今回の講演会のテーマは、「激動の世界情勢を読む――米中そして日本を中心に」です。現在大変な問題が起きていますので、まずはそれについて、曽根泰教先生、小原雅博先生、お二人にお話をお聞きできればと思います。
それは、今般の新型コロナウイルス問題です。ただ、今の状況だとこの問題がどうなっていくのかという今後の見通しは難しい局面です。この講演会でお聞きできればと思っているのは、特に中国共産党政府の対応の問題点がどこにあるのかということです。あるいは、WHOや日本政府の対応の是非、さらには今後の展望について両先生にお聞きしたいと思います。
ではまず、今回の新型コロナウイルスへの対応につきまして、中国政府としてどのような問題点があったのか、曽根先生はどう見ていますでしょうか。
曽根 初動が遅かったという説は、かなり一般的です。しかし、そうだとして、何ができたのかを考える必要があります。遅かったという理由の1つは、2019年12月くらいから、海鮮市場の周りで変な肺炎がはやっているということに気がついていた人がいたということです。その後、公衆衛生上の理由を持って、2020年1月の初旬に市場を閉鎖する、あるいは移動を制限するという、一種の強硬手段を取れば良かったのですが、実際の武漢の交通封鎖は1月23日になりました。つまり、対処が20日間ほど遅れてしまったのです。20日間ほど早く行っていれば、もう少し感染を防げたかなとは思いますが、しかしそれでも広がってしまう可能性はありました。
●ウイルスは簡単に国境を越える、顔認証では防げない
曽根 しかし、私の上の資料にもあるように、顔認証とAIではウイルスの蔓延は防げないのです。中国では顔認証のシステムが発達してきていますが、ウイルスに関していえば、そう簡単な話ではありません。
また、ウイルスは簡単に国境を超えます。昔から鳥やイノシシなどを通じて、ウイルスは国境を超えて運ばれていました。むしろ国境はその後にできた仕組みです。日本も行っていますが、水際作戦は、2003年のSARS(severe acute respiratory syndrome、重症急性呼吸器症候群)や2009年のインフルエンザウイルスの時でも、うまくいっていません。ですから、中国...