激動の世界情勢を読む~米中対立の行方
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
中国の権威主義体制が利点を発揮するには前提条件がある
激動の世界情勢を読む~米中対立の行方(2)新型コロナウイルス問題:中編
現在の権威主義という中国モデルは、組織力や団結力といった面でいえば、新型コロナウイルス問題に対する中国の対応に関して利点ともいえる。しかし、これには前提条件がある。それは、正確な情報の開示をいかにタイムリーに共有するかということだ。(2020年2月15日開催・テンミニッツTV講演会「激動の世界情勢を読む――米中そして日本を中心に」より:第2話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分21秒
収録日:2020年2月15日
追加日:2020年2月27日
≪全文≫

●爆発的にウイルスが拡大したとき、習近平政権の統治能力を問われる


―― 具体的にはどのような予測になるのでしょうか。

曽根 ガバナンスの批判は、前回小原先生がおっしゃった「治理」上の問題です。例えば、このウイルス拡大がもっと爆発的なものに、つまりコントロールできなくなったときに、習近平政権はまさしくその統治能力を問われることになります。ですから、政権としては全力を挙げてこれを抑え込もうとすることになります。

 しかし、腕力・権力でウイルスを抑え込めるわけではありません。そこに科学的な知識や技術の問題があり、今と昔では大きく違います。例えば、Quarantine(検疫)ということであれば、かつては港が1つだったときには、そこに40日間留めおけば大丈夫だということでした。しかし今や、こうした港はそこら中にあります。日本でも水際作戦が難しいのは、どこからウイルスが入ってくるのかが分からないからです。しかも、2003年のSARSの頃に比べると、中国経済が発展しており、中国人が世界中に旅行します。もう1つ、中国の経済力、システム自体が世界のサプライチェーンに組み込まれているのです。


●SARSと新型コロナウイルスの違い


曽根 ですから、単純な話ではないのです。繰り返しますが、昔のように港は1つで40日間留置しておけば隔離・遮断できるという話ではありません。前回、公衆衛生と権力主義は非常に近い関係にあるということを言いましたが、ペストやコレラを防げた昔とは状況が全く違うのです。

 今回、見落としてしまっていた1つの大きな原因は、2003年のSARSの時は症状が重くなってから人にうつるというウイルスだったということです。それに対して今回は、症状が軽い状況でウイルスが人にうつっています。軽いときにどのように見分けるのかは、まだ分かっていません。目で見ただけでは分からないので、顔認証もできません。この問題が、今回の1つの難しさになっています。

 ウイルスの毒性はそれほど強くないという人もいるし、「いやいや、結構強いのだ」という人もいます。強さだけでいえば、それほどでもないのでしょう。しかし、広まる速度が相当速いというのが今回の特徴だと思います。


●正確な情報開示をいかにタイムリーに共有するかがポイントである


小原 今の権威主義という中国モデルは、2020年2月8日の『人民日報』でも、その利点が指摘さ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ