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愛を認識する「魂」を向上させるために人間は生まれ、死ぬ

伝染病と死生観(5)魂は永遠で、肉体は借り物に過ぎない

概要・テキスト
武士道も仏教も禅も、すべては「無常」の哲学を表したものである。般若心経も「人間は死ぬ存在で、もともと何もない」という死生観を語っている。信者が次々に磔(はりつけ)になった原始キリスト教も、「死を思え=メメント・モリ」が中心思想だった。だが、死んでも魂は永遠であり、肉体が朽ちても魂は永遠に生き続ける。魂を鍛えるために人間は生まれ、そして死んでいく。武士道も多くの宗教も、そう考えてきた。そう考えれば肉体に固執せず、体当たりして生きる生き方もできる。(全7話中第5話)
※インタビュアー 神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:12:52
収録日:2020/04/24
追加日:2020/06/12
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≪全文≫

●「無常」を勇猛心で表したのが武士道


執行 では「まこと」を、なぜフーシェが持っていたかということで、話が死生観に戻るのです。フーシェは「自分がどうやって生き、どうやって死ぬのか」を、もう子どもの頃につかんでいた、ということが私はわかったのです。

―― やはり、つかんでいたのですね。

執行 つかんでから代議士になったのです。もう腹を括っているのです。覚悟がある。だから、かえって翻弄されなかった。

―― どんなに状況が変わっても。

執行 僕も武士道だけで生きてきたから、似ているかもしれません。わかり合えるというか。

―― 時代が寄ってきている感じですね

執行 時代が『葉隠』や武士道に寄ってきたというか、日本文化に寄り添おうとしているように思います。「武士道」というと特殊ですが、要は「無常」をどうやって表すかです。武士道は、無常の哲学を勇猛心で表そうとしている、男の美学なのです。

―― 勇猛心で表そうとしている男の美学。

執行 その男の美学が、武士道です。ただし表そうとしているのは「もののあはれ」であり「無常」です。日本における仏教は、これを宗教や信仰として、神や仏などと結びつけて無常を説いているのです。日本の禅も、すべて無常です。鈴木大拙の『日本的霊性』や『禅と日本文化』なども、書いてある内容はインド哲学ではなく、全部、無常観です。道元の『正法眼蔵』と鈴木大拙が書いている内容は、何も変わりません。

―― 同じなのですね。

執行 同じです。全部無常。「人間に生まれた無常をわかれ」ということです。人間は常ではない。無常とはイコール不条理で、不合理。これを抱きしめよと言っているのです。

―― 抱きしめなければいけないんですね。

執行 抱きしめると次に、自分の運命を愛せるようになります。そのためには、宿命を認める。そうすれば自分の運命を愛することができます。すると今度は、自分の人生に体当たりができるようになる。これが僕の理論です。その体当たりの方法が、武士道や禅、仏教の日蓮宗など、全部やり方が違うのです。

―― それは、やり方が違うのですね。無常の表し方が違うんですね。

執行 武士道なら『葉隠』、仏教では般若心経というものがあります。般若心経も僕は大好きで、あれは『葉隠』と一緒です。あれも死生観を語っていて、「人間とは死ぬ存在で、宇宙の混沌に呑み込ま...
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