●黄熱病に立ち向かった野口英世の生き方に学ぶ
―― 社長はずっと、「幸せ病」とおっしゃっています。
執行 幸福病。
―― これは相当な病ですね。
執行 魂を失って物質文明だけになれば、なってしまいます。
―― 「みんなが幸せになれる」みたいな。
執行 これも魂レベルで考えたら、「みんなの幸せ」は無理だとわかります。人間は比較の動物ですから、他人が不幸でなければ幸福ではないのです。魂について研究して、「魂が幸福を生み出す」ということがわかると、幸福とはみんながなれるものでは絶対にないとわかります。なぜなら、今いったように幸福の条件は、他人が自分より下であることだからです。人間は、いやらしいけれど誰かを見下すことによって、自分の幸せをつかむのです。これは良い悪いではありません。
―― 本性なんですね、人間の持っている。
執行 人間の本体であり、人間の文明の本体です。これがなければ動物です。ライオンやトラなど、1つの「種」のなかでは全部一緒。神から与えられた本能のまま生きるだけです。ところが人間は「差別化」、つまり「俺は違う」というものを作り上げました。そこから魂ができて、それによって文明が生まれたのです。
―― 「俺は違う」というところから生まれるのですね。
執行 文明と呼ばれるものは、全部文化です。文化が集積して国家権力に結びつくと、文明になります。それは全部、差別化です。「ほかと違う」という、つまりは自負心です。自負心は、裏返せば差別意識です。
―― 確かにそのとおりです。
執行 その差別意識が、文明にとっては極端に大切だということです。それを今失っているのです。
―― もともと持っていたものを全部捨ててしまったのですね。
執行 病気の克服でも、例えば結核が流行っていた、僕の子どもの頃までは、確かに恐れおののいて逃げている人もいました。ところが恐れおののいて逃げるのは、卑怯だ腰抜けだと言って、それに立ち向かい、平気で危険を冒して生きていた人もいました。その人たちが文明を担ってきたのです。
―― 黄熱病に立ち向かった野口英世をはじめ、いっぱいいたわけです。
執行 野口英世も黄熱病で死にました。だから仕方ないことなのです。細菌学は特にそうで、多くの人が死にました。その人たちが研究することで、ペストもコレラもみんな克服されたのです。
―― その野...