●政治家がお金をばら撒くのは、国民を共犯者にしたいから
―― 今回のコロナ対策では、台湾の蔡英文総統が見事でした。
執行 あの人はすごいです。
―― バサッと行くし。厚労相もほとんどPh.D.、つまり博士です。説明しなくても公衆衛生をわかっています。それから37歳の天才IT大臣。あの組み合わせを見ると、やはり緊張感が違います。大陸に、中国に呑み込まれるかもしれないという。
執行 そうです、危険のときは。
―― 危険のときは。あれはやっぱり……。
執行 大したものです。あの台湾は見事です。素晴らしい。
―― 素晴らしいですよね。でも本来的には、政治家はああいうものですよね。
執行 もちろんそうです。だからもう、ここまで来たらダメです。政治家は、これだけ無理なことを国民に押しつけるというのは、もう逃げの一手です。
―― でもこれは、やがてみんなバレますよね。
執行 仕方ないです。
―― 反乱が起きます。
執行 多分、「80%達成しなかったから、できませんでした」ということです。「自分たちが悪いんじゃない」と。「国民のせい」と、言葉では言いませんが、80%が達成できなかったら減らなかったというのは、要は「国民がやらなかったから」ということです。
―― でも人と人と会わず、商売も取り上げられ、「やるな」と言われて追い詰められて…。
執行 無理です。この世の中で人間関係の80%をやめるとは、すべてをゼロにしろということです。80%を達成するには、数学でもわかりますが、ゼロまで行かなければなりません。事情が人にあるかぎり、80%は絶対無理です。ゼロを覚悟する。だから山の奥の隠遁者です。ゼロになった場合、多分、どこかに漏れが出て80%になる形でしょう。
―― あれは「人間をやめろ」と言っているのと同じですよね。公衆衛生の領域で正しいことが、日本の社会全体にとって正しいわけではないでしょう。
執行 公衆衛生でも正しいとは思いません。そんな馬鹿な公衆衛生はありません。人々にできない衛生学なんて、あるわけないですから。人々にできる範囲が公衆衛生です。手洗い、うがいなど、病気の予防では気をつけることはたくさんあります。僕はもちろん、気をつけています。それはもちろん、家族も入ります。
―― 「80%をカットしろ」と、よく平気な顔で言えるものです。
執行 無理なことですから。これが60%だと...