テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

ずる賢いフーシェの心にキリスト教の「まこと」があった

伝染病と死生観(4)政治家は自国の伝統的哲学に立脚せよ

情報・テキスト
ジョセフ・フーシェ
政治家は、新型コロナ対策と称して、全国民に1人10万円お金をばら撒いた。だがこれは、悪い仲間を募るときに皆にお金を渡すのと同じ。要は、国民全員を共犯者にしたいのである。「お前たちももらっただろう」といって、最終的に政治家に責任が来ないようにしたいのだ。こうした政治になるのは、日本の政治家に哲学がないからである。政治家は、自分の国の伝統に則った哲学を身につけ、自分の国の古い言葉を発しなければいけない。フランス革命期にずる賢く生き残った政治家ジョセフ・フーシェも、その心の中にはキリスト教の「まこと」があったのである。(全7話中第4話)
※インタビュアー 神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:14:18
収録日:2020/04/24
追加日:2020/06/05
カテゴリー:
キーワード:
≪全文≫

●政治家がお金をばら撒くのは、国民を共犯者にしたいから


―― 今回のコロナ対策では、台湾の蔡英文総統が見事でした。

執行 あの人はすごいです。

―― バサッと行くし。厚労相もほとんどPh.D.、つまり博士です。説明しなくても公衆衛生をわかっています。それから37歳の天才IT大臣。あの組み合わせを見ると、やはり緊張感が違います。大陸に、中国に呑み込まれるかもしれないという。

執行 そうです、危険のときは。

―― 危険のときは。あれはやっぱり……。

執行 大したものです。あの台湾は見事です。素晴らしい。

―― 素晴らしいですよね。でも本来的には、政治家はああいうものですよね。

執行 もちろんそうです。だからもう、ここまで来たらダメです。政治家は、これだけ無理なことを国民に押しつけるというのは、もう逃げの一手です。

―― でもこれは、やがてみんなバレますよね。

執行 仕方ないです。

―― 反乱が起きます。

執行 多分、「80%達成しなかったから、できませんでした」ということです。「自分たちが悪いんじゃない」と。「国民のせい」と、言葉では言いませんが、80%が達成できなかったら減らなかったというのは、要は「国民がやらなかったから」ということです。

―― でも人と人と会わず、商売も取り上げられ、「やるな」と言われて追い詰められて…。

執行 無理です。この世の中で人間関係の80%をやめるとは、すべてをゼロにしろということです。80%を達成するには、数学でもわかりますが、ゼロまで行かなければなりません。事情が人にあるかぎり、80%は絶対無理です。ゼロを覚悟する。だから山の奥の隠遁者です。ゼロになった場合、多分、どこかに漏れが出て80%になる形でしょう。

―― あれは「人間をやめろ」と言っているのと同じですよね。公衆衛生の領域で正しいことが、日本の社会全体にとって正しいわけではないでしょう。

執行 公衆衛生でも正しいとは思いません。そんな馬鹿な公衆衛生はありません。人々にできない衛生学なんて、あるわけないですから。人々にできる範囲が公衆衛生です。手洗い、うがいなど、病気の予防では気をつけることはたくさんあります。僕はもちろん、気をつけています。それはもちろん、家族も入ります。

―― 「80%をカットしろ」と、よく平気な顔で言えるものです。

執行 無理なことですから。これが60%だと、日本人は真面目なので達成してしまうでしょう。達成したら、「なぜなくならないか」という話になるから、また責任問題になります。だから責任を取る気がないのです。どんどん規制が厳しくなるのは、自分に責任が来ることが実感でわかっているからです。だから、どんどんできないことを言う。このことに最初に気がついてから、ずっとわかっています。

―― しかも初動で間違えなかった国を、全然研究しません。

執行 そうですね。これはもう無理です。それでも政治家が1人も責任を取らないのは、国民のせいにするために今動いているのだと、素人が考えてもわかります。今の動きは全部、国民に責任をばら撒いている。お金のばら撒きもそうです。悪い仲間を募るとき、みんなにお金を渡すじゃないですか。あれと同じで、全員共犯者にしたいのです。

―― 同じ10万円ずつもらっただろう。全員、共犯者だと。

執行 今の政策は全部そうです。マスクもそうで、マスクなど配って何になるのか、という。ただ政治学的に考えると、マスクだ、10万円だと、いろいろ配っていくと、最終的に自己に責任は来ません。一般的な言葉でいう「俺はやることはやってきた」という理屈が通るのです。

―― しかも共犯者だ。みんなもらっただろうと。

執行 「みんなもらっただろう」ということです。

―― なるほど、共犯者をいっぱいつくりたい、と。

執行 これは、本人がそう思っていなくても、心理学ではそういう心の動きになることが証明できます。全員に責任をばら撒くための「正式な」やり方なのです。

―― お金があるかぎりは、これで抑えながら。しかし、そのうちお金がなくなるから、今度は反乱が起こってきますよね。

執行 そうですね、お金がなくなってしまえば。ただコロナが収まるまでは、何年もかかります。もうどうすることもできない。多分、解き放つことになると思います。


●フランス革命期に「失脚しなかった」フーシェが教えること


―― これは『太平記』の始まりみたいな時ですね。

執行 そうですね。

―― 僕は亡くなった国際政治学者の高坂正堯先生と、政経塾のゼミで一緒だったんです。

執行 本は何冊も読んでいます。

―― (高坂)先生に「政治をやるために何の本を読んだらいいですか」と聞いたとき、「日本では残念ながら政治学でいい本はない。歴史を読んだほうがいい」と。ただ日本は穏やかな...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。