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「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
概要・テキスト
宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大規模構造に至る、「宇宙の階層構造」を俯瞰する。そして、「宇宙の階層構造」がどうやってできたか、それを探究することが宇宙物理学の一つのテーマであると岡朋治氏は語る。(全12話中第1話)
時間:13:07
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
カテゴリー:
≪全文≫

●宇宙とは万物を包含する、自然法則が成り立つ全ての時間と空間


 皆さん、こんにちは。慶應義塾大学の岡と申します。今日は「宇宙の創生」について、お話をしたいと思います。よろしくお願いします。

 まず、宇宙とは何かということについてご解説します。日本語の「宇宙」という言葉は、そもそも中国の『荘子』に初めて現れる言葉です。『荘子』の庚桑楚第二十三巻に、平たく言いますと、無限に広がりながらどこにあるかも分からないものを「宇」といい、時の長短があれど、始まりも終わりもないものを「宙」といいます。つまり、宇とは空間を意味し、宙とは時間を意味するということになります。これは中国の戦国時代の書物によるものです。

 その後、前漢時代につくられた『淮南子(えなんじ)』という百科事典のような書物がありますが、そこにも記述があります。巻十一の斉俗訓というところですが、ここには「往古来今これ宙といい、四方上下これ宇という」とあり、同じことが書いてあるわけです。つまり、時間が宙であり、空間が宇であるということです。これが宇宙という言葉の語源です。

 もうちょっと平たく言いますと、日本語の辞書ですけれども、広辞苑に「宇宙」という言葉を見つけることができます。

 私の持っている広辞苑(第三版)によりますと、宇宙とはまず、世間また天地間。万物を包含する空間、とあります。すべてを包含するものということです。2番目には時間・空間内に存在する事物の全体。3番目には、自然法則が成り立つ全ての時間と空間。4番目には、すべての天体を含む空間。そして、もう少し具体的に、膨張しつつある二千億ほどの銀河の集合と書いてあります。

 ただこれはかなり古い広辞苑によるものなので、二千億という数字は、最近ではかなり増えております。まだ確認しておりませんが、新しい第七版では変わっているはずです。

 このように、宇宙の「宇」と「宙」それぞれの意味について、最近は日本語として失われているわけですが、平たくいうと宇宙とは万物を包含する、自然法則が成り立つ全ての時間と空間という意味になるのです。


●地球の特徴は大気・海・磁気があること


 ただ、宇宙全部を包含するといっても、私たちの知覚...
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