教養としてのナノテクノロジー
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
マルチスケール解析を使うとどんなことが分かるのか
教養としてのナノテクノロジー(7)マルチスケール解析と応用<後編>
マルチスケール解析を使ってどのようなことが分かるのか。水分子の散乱から気泡のマルチスケール構造まで、豊富な応用例をもとにマルチスケール解析の使い方を解説していく。こうした事例から分かるのは、異なるスケール間の現象をつなげていくことによって初めてナノスケールの発見が生かされるということだ。(全10話中第7話)
時間:9分44秒
収録日:2021年3月29日
追加日:2021年9月2日
≪全文≫

●応用例1:水分子の表面散乱


 例えば、(マルチスケール解析において)どんなことをやっているかというと、バルクでいえば先ほどお話ししたことですが、表面に分子が当たるとどのように散乱していくかということです。人工衛星を上げて、人工衛星の表面をうまくコーティングをしておけば、向こう側から飛んできた分子がうまく弾かれていきます。そうすると、そこのエネルギー交換がすごく小さくなるので軌道に長く留まることができるようになるという議論があります。

 それがどうなっているかを表したのが下のグラフです。いろいろと解析すると、水分子がグラファイトに当たったときとシリコンに当たったときでは、実は反射の仕方が違うということが分かります。それを使って、先ほどのボルツマン方程式を解くというプロセスが1つ入ります。


●応用例2:水と界面の接触面積


 それからもう1つとしては、分子動力学を使って水と界面の間の構造がどうなっているかが分かります。これはつまりその接触面積を考えるということですが、水と界面の間のポテンシャルが強いと、丸い形からべたっとした形に変わっていくというのが計算できるようになります。

 これをうまくモデルにしておくと、表面上の水分子の挙動を連続体として計算するときに非常に役に立ちます。


●応用例3:燃料電池のマルチスケールシミュレーション


 こうしたプロセスをいっぱいやっておくと、例えば最近いろいろなところで議論されている燃料電池のマルチスケールシミュレーションということができるようになるというわけです。

 このように、量子力学を使ってポテンシャル関数を計算して、そこで第一原理的にどういう化学反応が起きるのかを計算します。さらにもう少し大きいところでは、燃料電池の中の構造をどのように分子が動いていくか、水がどのように拡散していくかを計算できるようになります。

 そうすると、燃料電池の中で電気がどう起きてくるかということをフルでシミュレーションできるようになります。最初から連続体でこんなシミュレーターをつくろうとしても、それはできません。量子力学からスタートして、合理的に連続体にもっていくことでできるようになるの...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎
2050年「プラチナ社会」実現への挑戦(1)「プラチナ社会」実現のルーツと現況
2025年頭所感~5つのプラチナ産業イニシアティブ創りへ
小宮山宏

人気の講義ランキングTOP10
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
「アカデメイア」から考える学びの意義(2)プラトンの学園アカデメイア
プラトン「アカデメイア」の本質は自由な議論と哲学的探究
納富信留
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために
百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために
門田隆将
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子