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水はナノの世界から理解していかなければいけない命題

教養としてのナノテクノロジー(2)科学における教養とは何か<中編>

情報・テキスト
無限の可能性を秘めたナノテクノロジーは、学問体系をも再構成するほどの力を持っている。なぜなら、そこでは特定の分野を超えて物事を考えていくことが求められるからだ。その好例になるのが、「水」である。われわれにとって最も身近でありながら、科学的に最も謎の多いその物質は、マルチスケールに考えることの重要性を教えてくれる。(全10話中第2話)
インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:59
収録日:2021/03/29
追加日:2021/07/29
キーワード:
≪全文≫

●ナノテクノロジーは無限の可能性を秘めている


―― これは非常に子どもっぽい質問になりますが、金の性質がナノの世界だと変わるというお話がありましたが、ナノテクノロジーという分野は全体が100だとすると、今どのへんまで分かっている学問なのでしょうか。

山本 これはかなり良い質問だと思います。100を知らない人類に、今何パーセントかは分かりません。しかし逆の言い方をすると、それぐらい無限の可能性があるということだと思います。

 調べれば調べるほど、未知の現象に遭遇します。未知の現象に遭遇するということは、もしもそれを何らかの形で利用することができれば、新しい技術が確立するということでもあります。そういう意味で、本当に無限の可能性を秘めていると思います。私も100を知りたいです。

―― どこが到達点かもまだ本当に分からないということですよね。

 ここまで、ナノテクノロジーの今日的な意味的についてお話しいただいていますが、由井先生はどうお考えですか。

由井 先ほどの100の内どこぐらいまで来たかに関していえば、個人的には、実はまだ1パーセントにも満ちていないのではないかと思っています。

―― なるほど。

由井 まだ入り口に立ったばかりだと思っています。われわれ化学の立場からは、「AとBを混ぜ合わせるとこんな性質が出てくる」ということを、ある意味経験科学的に積み上げてきました。それから100年たち、ようやく、どことどこの原子がつながって、そういう性質が出てきたっていうのが分かり始めたのですが、なかなかまだ好きなようにはつなげられません。仮につなげようとしても、ものすごい熱を投入しなければいけないとか、ものすごいエネルギーないしはすごく危険な反応をしなければなりません。

 ところが自然界はいとも簡単に、例えば水の中で常温、常圧でそういうものをつくっています。そういうのを見ると、自然の叡智というか、もう何となく気が遠くなるというか、人間はそこにいつたどり着けるのだろうかという感じがします。


●水は最も身近で最も不思議な物質


山本 特に水って私たちの体の60~70パーセントを占める最も身近な物質なのに、科学者・技術者からいわせると、最も分からなくて最もやっかいな物質です。

―― やっかいなのですか。

山本 制御が難しいのです。それについても、ナノの世界から水を理解していくことが重要なことの1つだと思います。

由井 そうですね。水というのは本当に身近ですし、われわれが生きていく上で欠かせない物質です。

 これまた非常に面白くて、高校の教科書的には今日のお話にあったように、「電気的な力で結びついている」という説明が大体なされます。しかし実は、水の熱的な性質、機械的な性質などについて、それだけではまだ説明できていません。

 例えば量子力学的にいうと、そこでは電子をお互いに交換したり、原子を交換したりしています。そのようなミクロの世界では、われわれの常識からは考えられないようなことをやっていて、そうしたまだ分かっていない力が総体として目で見える世界を形づくっています。さらには、熱を蓄えたり、流れたり、そういうものをつくっています。ナノスケールの世界から、目で見える世界、そして地球規模の環境まで、本当にマルチスケールにつながることを考えるという意味においては、水は非常にキーの分子になるのではないかと感じています。

―― 水は日ごろから飲んだり、お風呂に入ったりと、本当に身近なものですが、それがそんなに分かっていないということ自体が不思議な話ですね。

由井 本当ですね。

山本 コップに氷を入れると浮くのは当たり前だと思いますよね。でもほとんどの物質は固まって個体になると沈みます。それは密度が濃くなるからです。アルキメデスの原理に従って沈むはずなのに、水だけは固まると密度が薄くなって浮くのです。

―― 水だけなのですか。

山本 水だけとは言いません。他にもいくつか物質ありますが、その数少ない物質の一つが水です。でもその性質のおかげで、海が凍っても池が凍っても氷は上に張り、地球が凍っても生命は海の中で生き残ることができて、われわれがいるわけです。

―― そうですね。これまでの大きな気温の移り変わりを経ても生き延びています。

松本 もう少し付け加えると、水の密度は4度で1番大きいのです。だから、実は気温が0度以下だと、4度の水が下に沈んでいるので表面から凍っていきます。

山本 そうですよね。

松本 仮にそうではなかったとすると、何かのタイミングで全部一気に凍っちゃうということになりかねないですね。非常に不思議な物質です。

―― 地球外にも水があるのかどうかというのが議論になったりしますが、そういう偶然の積み重ねで生命もできて、地球の生態系の...
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